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後世に残すべき一冊。
2015/12/23 13:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:照月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の主人公小熊謙二は、著者小熊英二の父親である。現在慶応大学の教授である小熊英二は、父の体験した人生が、個人として貴重なものであるだけでなく、日本の歴史を検証する上でも貴重なものであることに気づき、父の体験をこの本にまとめたのである。
1925(大正14年)年に生まれた小熊謙二。家庭の事情で北海道にいる父の元を離れ、東京の祖父母の元で生活する。さほど裕福ではない中でも必死に働き、懸命に生きるが、召集令状を受けてしまう。
中国に出征した後、ソ連に抑留される。1948年(昭和23年)やっとこ帰国するも、職を転々とする生活を余儀なくされた。生活が落ち着いたら今度は結核になり、1951年(昭和26年)から5年間結核療養所で過ごすことになる。療養所を出た時、謙二は30歳になっていた。
シベリア抑留時よりもつらい思いをしたという。「抑留されているときは帰国すれば、という望みがあった。しかし今は何の希望もない」
治っても仕事があるのか、という不安もあった。正に、人生のどん底の時期だったと述べる。
しかし「どん底」と言うだけあって、その後は人生は徐々に好転した。て若い盛りを犠牲にしたが、32歳で就職した時、日本は高度成長期だった。このことが幸いした。結核の後遺症がありなかなか結婚できなかったが、37歳で妹の知り合いと結婚(当時としては晩婚である)、人生は安定し始めた。
だが、「勝利しない一生」である。
就職したのが中小企業だったこともあり、生活はそれほど豊かではなく、追い込まれる形で独立したが会社を立ち上げた後も生活はあまり変わらず。郊外に家を買い、親子三人暮らすくらいの経済力はあったが、社長にしてはあくまでも中流である。(ただし中小企業は潰れてしまうことが多いので、会社を存続させたことは経営者としての能力があるということである)。
60歳になってからささやかな社会活動を行うようになった。そして偶然から、戦後補償裁判を起こすこととなる。
こちらは敗訴する。シベリア抑留者と交流しているうちに、当時日本人として出征した中国人に対して、今の子功績を理由に恩給などなんら戦後補償を受けていないことを知り愕然とする。積極的に、ではなく頼まれて、という感じだが、謙二はシベリアに抑留された元日本軍兵士だったが中国人と共同で提訴したのだ。
小熊謙二氏は今年90歳。
謙二氏は、平凡な人物である。壮絶な戦死を遂げた訳でもなく、補償裁判に勝利して時の人となった訳でもなく、ごく普通に生きている。しかしそんな平凡な男性を、かくも流転の人生にさせて日本の真実がそこに見える。
「恩給は階級によって差があった」
「状況が変化しているのに、それに対応して制度を変えられない日本の官僚機構の弊害が、不公平感を生んでいると思う」
「1945年7月に作られたソ連への和平交渉の要綱では満州在留の軍人・軍属の一部を『賠償』としてソ連に提供するとされていた」
戦争を体験したからこそ、語れる真実がある。特に日本人はソ連に対して印象悪いが、敗戦前に満州にいた日本人を「戦争の賠償」としてソ連に提供する密約があったとは驚きだ。ソ連のシベリア抑留は、ソ連だけが悪いのではない。
後世に残すべき生きた記録である。
体験談
2023/01/24 05:14
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦前戦後を生きた一人の方の人生をただる名著。父親の体験を聞き出し綴っているので親子の話でもある。戦争体験はそれぞれの見方があることがわかる。
著者の父親が新潟に在住歴あり
2021/04/02 21:23
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投稿者:雪 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者が自分の父親を、身内の贔屓目なしに客観的に書いていることで、内容を信頼して読める。この父親が、本籍地は新潟で、荻川や割野など身近な地名がよく出てくる。
戦前から戦後にかけての一人の日本人の生きてきた歴史である
2019/09/23 22:50
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは、小熊英二の父親の評伝であり、戦前から戦後にかけての一人の日本人の生きてきた歴史である。父親の事を書いているが、筆致は私情を挟まない冷静なスタイルである。戦前から戦後にかけての長いスパンでの歴史を背景にしているので、貴重な歴史的意味を持つと思う。
素晴らしい本です。
2017/01/15 15:44
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投稿者:ベニエ - この投稿者のレビュー一覧を見る
みんなの評価がよかったので、読んでみました。読んでよかったです。タイトルが今一つなのですが、内容は素晴らしい。あとがきにも感動しました。おすすめです。
当時の暮らしがわかる
2016/02/13 12:46
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投稿者:seko - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦前戦中戦後の一般の人の暮らしがよくわかる。人は希望があれば生きていける、の言葉に重みがあった。
普通の人間の生活の重み
2015/10/20 14:49
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投稿者:燕石 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、小熊英二氏の父君にあたる謙二氏の人生の全期間-昭和初年から平成の現在に至るまでの聴き取りである。
多くの「オーラルストーリー」に、その当事者が著名な政治家に限らず、一般市民であっても、おうおうにして記憶違いや思い込み、あるいは自己弁護のための意識的な事実改ざんが潜り込んでいることを勘案すると、この「普通の人間」の記憶の確かさと率直さは驚嘆に値する。
また、様々な映画やテレビ番組で繰り返し流され、ステレオタイプ化されている太平洋戦争中の様々な光景(たとえば、「出征兵士の見送り風景も実際には、数が増えるごとに行われなくなった」「戦争末期には、物資が欠乏し、前線に移送される兵士に銃すら与えられなかった」など)も、つい70数年前のことながら、既に事実と異なった姿で後世に伝えられていることにも驚く。
謙二氏は、シベリア抑留後、帰国してから結核に冒され、療養生活を経験し、後半生は生活に追われる日々が続く。そういった中でも、「戦犯」であった岸信介の首相就任への違和感を小さな声で語り、自らのシベリア抑留生活と重ね合わせて、浩瀚な「収容所群島」を読み上げる。
そして、生活が安定すると、自らの人生の軌跡を追うかのように、「不戦兵士の会」へ参加し、「朝鮮人皇軍兵士」との共同戦後補償訴訟に関わって行く。リタイア後は、地域での自然保護活動などにも関係し、あくまで一市民としての、バランスの良い社会との関わりを生涯にわたって続ける姿勢を貫く。
巻を措くと、地に足のついた「普通の人間の生活の重み」がひしひしと伝わってくる。
なぜ面白いのか考えてみる
2016/02/10 09:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カツ丼 - この投稿者のレビュー一覧を見る
学者の父だから面白いのか、日本兵だったから面白いのか。話し手の記憶が構築されているから面白いのか、聴き手が巧みだから面白いのか。恐らくはその両方がかみ合った一冊。記録を残さない(訴訟のくだりでは残すことにこだわるが)一人の人間の生き様を現したものとして、その目を通じた時代の在り方を示すものとして、それを引き受ける後続世代として。一つの大河をなしつつあらゆる読み方が可能になる一冊。
淡々と
2016/07/25 12:47
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投稿者:くまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の父親へのインタビューを重ねて書かれた本ですが、距離感が上手く保たれています。
過酷な環境で生き延びるために、自らの感情や良心に振り回されることなく淡々と日々の生活を重ねていく様子が印象的。
それは、感情や良心をなくしたことではありません。
後の生き方を知れば、そのことがよくわかります。
多くの日本人がこのようにしてあの戦争をやり過ごし、そして戦後の日本を復興させたのでしょうね。
期待はずれ
2015/07/11 20:16
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:江戸人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ページ数が限られているのでしょうが、作者のいままでの作品からするとちょっと期待に反したものでした。