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帰還 ゲド戦記4 みんなのレビュー

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みんなのレビュー28件

みんなの評価3.9

評価内訳

28 件中 1 件~ 15 件を表示

作品が社会の反映であることはファンタジーでも変わることはありません。そしてこの作品が生まれた背景にはフェミニズムの運動があった。でも、私が感心するのはそれが今までの話と溶け合って自然で大きな流れになっていることです。

2009/08/18 19:44

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

1972年に三巻で完結したと言われていた『ゲド戦記』ですが、1990年に突然続巻としてこの本が出ました。そのとき、初めて私はこのシリーズを読み始めたのですが、これがさらに2001年出版の『アースシーの風』『ドラゴンフライ』に繋がって行くとは著者以外の誰も予想していなかったのではないでしょうか。

私もその一人で、これで終ったと思い、そうであればやはり完成度としてトールキン『指輪物語』には敵わないなあ、と結論付けました。今回の少年文庫版での読み直しは、最終巻まで通して読むことでその第一印象が正しかったかどうかを検証するためのものです。早速カバー後の案内文ですが

ゴント島で一人暮らすテナー
は、魔法の力を使い果た
したゲドと再会する。大や
けどを負った少女も加わっ
た共同生活がはじまり、そ
れぞれの過去がこだましあ
う。やがて三人は、領主の
館をめぐる陰謀に巻き込ま
れるが……。

●中学生以上

となっていて、カバー画・地図はマーガレット・チョドス=アーヴィンが担当しています。

この巻ではテルー(テハヌー)という少女が重要です。ゴハの暮らす村の近くの川原で野宿していた宿無したちが姿を消した時、半分焚き火の中に放り込まれ、目も頬も火に焼かれ、ケロイドになってしまった子どもです。火傷については繰りかえし記述されますが、レイプもされたとも書かれています。彼女の年齢はあまりはっきり書かれることはありませんが、幼児に対する性的虐待が米国で日常化していたことの反映でしょう。

最近では、日本でも幼児ポルノが規制される動きがあって、理解されやすい状況になっていますが、1990年に出たときはル=グウィンの表現の仕方もあって案外あっさりと読み過ごしてしまったかもしれません。ただ、彼女の存在と、求心力を失ったロークの賢人会議の様子は、既刊でも明るいとはいえなかった話全体に影を落とします。

『こわれた腕環』では少女だったアルハは、ル・アルビの大魔法使いオジオンの養女になり、その後、中谷で農園をやっていたヒウチイシのもとに嫁ぎ、ゴハとなってヒバナとリンゴの二児をもうけました。その夫も今は亡く、子ども二人も既に家をでているので、彼女は農園の主となって一人暮らしをしています。テルーを引き取って育てることになりのがゴハことテナーです。

そして、テナーは、己の死を予感した養父であるオジオンによってゴント呼ばれます。ハイタカの帰りを待っていたオジオンは、しかし自分の弟子が戻ってくる前に亡くなり、テナーによって埋葬され死後、アイハルと呼ばれようになります。そんなところに病を得たハイタカが帰ってきます。

オジオンの弟子で、ナナカマドの杖を持って、西に向かって行き、セリダーから竜のカレシンの背に乗って戻って来たロークの大賢人ハイタカことゲドは、病を得ていましたが、テナーとコケばばの看護で、元気になります。しかし、彼は自分の魔法使いとしての力は失せたいいます。

自分は魔法使いでもなんでもないというゲドの言葉を受けて、ロークでは新しい大賢人を選ぶ会議が開かれ、そのメンバーである呼び出しの長トリオンの変わりも決めることになりますが、ゲドという中心を失った会議は、何一つ合意に達しません。候補の名前すらあがらない会議で、突然様式の長が誰もわからないカルガド語で言いったのが『ゴントの女』の一言です。

一方、ゲドを死の世界から生の世界に連れ帰ったエンラッドのアレンことレバンネンは、秋の終りに戴冠式を控えていて、その式の折には友である大賢人から冠を授けていただきたい、とゲドを招待するために、自らゴントを尋ね、テナーに出会います。テハヌーを執拗に付け狙う男たち。

その間にも、世界から魔法の力は失われ、混沌が蔓延し、女性は女であるという、それだけで男たちから軽蔑され虐げられる。海には海賊たちが横行し、王の船団と争いを繰り広げていきます。この世界でゲドは、テナーは、テハヌーは、そしてレバンネンはどのような役割を担っているのでしょう。ゲドの帰還は、この世界に再び秩序をもたらすことになるのでしょうか。

最後に、目次を写しておきます。

1 できごと
2 ハヤブサの巣へ
3 オジオン
4 カレシン
5 好転
6 悪化
7 ネズミ
8 タカ
9 ことばを探す
10 イルカ号
11 わが家
12 冬
13 賢人
14 テハヌー
  訳者あとがき
  少年文庫版によせて

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ゲド戦記にこめた作者のひとつの「解」を思う

2020/07/11 22:34

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る

思春期に読んだ本を、大人になって再読。ゲド戦記も一作目から読み始めいよいよ4作目。ただし本作は、初読です。第3巻の出版から16年のときを経て初版は1993年。私はもうすでにすっかり大人の年齢で、ファンタジーを楽しむ余裕も無かったころにいつの間にか出版されていました。
この巻は他と比べて圧倒的に俗っぽくもあるという意味でユニークな印象。大人になってこの巻まできちんと読めてよかったとも思う。
これまでのテーマが生と死、悪と善、光と影...のような、他のファンタジーと共通したものが選ばれていますが、本作のテーマには、「性」が取り上げられている、そして「差別」も。それをファンタジー仕立てにする難しさと価値を考えます。
英雄だったゲドは魔法の力を奪われた弱弱しいオトコで、2巻で闇の国の大巫女だったテナーは、普通のおばさんとして登場します。しかし、これほど大地に足を着けた話、「性」をとりまくゆがみと「差別」への希望ある答えをはっきり提示してくれる物語はそうないだろうとも思いました。

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2010/05/09 19:22

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2011/07/19 10:55

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2011/07/21 08:49

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2011/07/25 12:32

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2011/08/03 17:43

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2013/08/27 10:35

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2013/07/30 08:47

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2013/08/22 00:24

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2014/11/19 16:25

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2017/05/04 09:23

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2018/02/13 22:31

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