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永遠のテーマ
2007/12/12 23:46
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hachi - この投稿者のレビュー一覧を見る
10歳の少年だったシンクレールが、デミアンという
少年に出会い、それがきっかけで今後の人生が自分自身
を見つめるとともに、少しづつ変わってゆく。
最初は気弱な少年が、いつしか飲食店で不良少年たちと
酒をあおるようになり、そのうち恋に目覚めその生活
を改め、その後は自分に助言をしてくれる新たな友人に
出会い、18になったころに再びデミアンに再会する。
シンクレールがデミアンと密接に接触するシーンは
出会った10歳くらいのころと、ほぼラストの方に
あたる18歳をすぎたころだけである。
しかし、シンクレールにはデミアンという人間が
言葉も姿もなくとも、いつもそこについている。
それは不良少年と一緒にいた頃もそうだし、新たな
友人に会ったときにも変わらない。
デミアンはそれだけ、シンクレールに影響を与えた人間だったのだ。
デミアンははじめに「カインとアベル」の話を持ち出し、
殺されたアベルよりも、カインの方が偉いのではないか、
という一つの説を教えてくれる。
しかしこれは単純なアベルへの批判ではなく、デミアン流
「自己とは何なのか」ということを示すための、一つの例のように思える。
その証拠にデミアンに会ってからのシンクレールは、
周囲の人間とあまりかかわりをもたず、一人自分自身に
ついて思い悩んでいるように見える。
特に絵を描くシーンからは、それが強くうかがえる。
「カインのしるしのあるもの」というのは、
「罪深き人」ということではなく、「自己に没頭しすぎて
周囲に順応しにくい人」ということのように思える。
確かに、シンクレールのように自分自身のことを考えすぎると、
周囲のことはそれで手一杯になってしまうように思える。
しかし、それは悪いことではなく、むしろ大切なことだと気づかせて
くれたのがデミアンだったのだ。
人間は実際自分自身でも、自分のことは良くて半分くらいしか
わからないだろう。「自己を見つめる」というのは一生かけて
考え続ける、永遠のテーマなのかもしれない。
自己自身への道
2001/08/04 00:55
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あきこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、発表当初は匿名で——エーミール・シンクレール作『デミアン、ある少年時代の物語』として出版されていました。それは、この作品が当時の宗教観や倫理観に対して批判的な内容を持つ、衝撃的な作品であったためです。
すべての人間の生活は、自己自身への道であり、一つの道の試みであり、一つのささやかな道の暗示である——はしがきにあるこの言葉は作品を通した大きなテーマとして、幾たびも作品の中に現れ、少年である主人公を、青年になり迷える主人公を、自分自身へと導いていきます。
悲哀に満ちた夢想的な前期の作品群と、東洋的な内面への回帰の道筋を描く後期の作品群の間に位置するこの「デミアン」は、作者自身の魂の軌跡を映すように、美しくもありながら同時に飢餓感とでも言うべき内面への希求を描き出します。
「すべての人間の生活は、自己自身への道」——この言葉に理由もなく心が動く方に、ぜひ、この作品を読んでいただきたいと思います。
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言葉と感情
2022/04/11 09:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:魔法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これほどまでに一人の人間の細かやかな感性を言葉で言い表わせる作家は実はどれくらいいるのだろう…それくらいヘッセは心の観察に優れた作家だと思う。
自分の心に向き合いつつ、言葉でそれを表現することの難しさやもどかしさを感じる自分にとって、デミアンは自分の心の中を表現してくれたようでもあり、多くの読者にとっても同じような思いを重ねてきたであろうことがこの本が普遍的価値となってきた理由なのだろうと思う。
人との出会いも人生
2020/12/27 10:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公シンクレールの物語だけど、表題通りデミアンの存在が大きなものとなっています。物語のはじめにあるクローマーとの話におけるシンクレールの心理描写は特に印象的です。物語の途中から宗教的な雰囲気が漂いますが、精神的な葛藤とみれば、人はある意味宗教的になるのかも知れません。読んでいくうちに読者の物語をも紡ぎだしてくれるような小説でした。