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いつのまにか立ち消えになった皇位継承問題、わけがわからないうちに保守的な男尊女卑的考えの人間たちに抑え込まれた感じですが、女帝のことを知ろうともしないで雰囲気でものいうこっちも悪い。で、これを読むとよくわかります、女帝の、そして天皇の本質が・・・
2010/03/18 19:34
12人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
新書の装幀って、一度決めちゃうと変更が利かないので大変ですよね。しかも今は新書戦国時代。群雄割拠といえばカッコいいですが、見方を変えれば大同小異。結局、装幀なんか目じゃなくて、誰が何について書いているかで決まっちゃうんです。で、原研哉の装幀は、可も無く不可もなし・・・
で、橋本治。なかなか読む機会がありません。だって気になる作品といえば『窯変源氏物語』『双調 平家物語』といった長いものばかりで、おまけに『双調平家物語ノート』なんて文字だらけなんです。面白いけど、それだけにとりかかっていられない身としては、おいそれと手がつけられません。長女と次女にも回しましたが、二人とも100頁までたどり着くのがやっと。
勿論、現役ケアマネの私には到底無理で、積読。でも、新書であれば手頃です。しかも、取り上げるのが女帝。無論、越山会などの広義の女帝ではなく、まさに天皇家のお話です。ついこの間までこの問題を真剣に議論していた日本人は、復古的な政治家や事なかれ主義的なマスコミによる報道の沈静化で、あっというまに皇室典範の見直しを忘れてしまったようですが、私は忘れません。
第一、女帝問題に蓋をした人々の考えの根底にあるのが、徹底した男尊女卑であり、最高裁判決以上の先例主義(所詮は、明治までしか遡る気はないようですが)であり、皇室崇拝に名を借りた自分たちの権力維持と、皇室を出すことで一切の議論を封じ込めようという戦前と全く同じ考えでしかないわけですから、私が認めるわけがありません。
ちなみに、その連中が少子化を問題視し、正田家保存を訴え、夫婦別姓に反対し、外国人の参政権を拒否し、朝青龍を角界から追放し、朝鮮高校の授業料無償化に反対しているわけです。なんとなく、見えてきますよね、日本人の利権と保守の構図。いやはや、ここらを語り始めると、一気に熱くなるんです、私・・・
閑話休題。で、そんな反皇室というか反保守反動の私ですが、女帝について具体的に何を知っているかといえば、何も知らない。知らなくても困らないし、だから皇室なんてなくてもいい、なんて思うんですが、でも知らないことについては反省があります。その点、フェミニストである橋本であれば、改革何でも反対おばさん連よりは冷静で正しい知識を与えてくれるんじゃないか、って思うわけです。
だってカバー折り返しに
*
飛鳥奈良時代は六人の女帝が頻出した時代でした。だからと
いって、それをただ年表的になぞるだけでは「その意味」は
見えてきません。「その天皇はどの天皇の血筋か」とか「徐々に複
雑に消された皇統」とか、「嫁姑の問題」とかを読み解くと、極め
て現代的な人間世界が見えてきます。
当たり前に女性の権力者を生むことのできた「天皇家だけの
特別」とは何なのか。この本は、女帝をめぐる歴史ミステリーなの
です。
*
ってあって、皇室を少しも特別視していない。これなら安心して読むことが出来そうです。
で、読みました。女帝は決して繋ぎの存在ではない、というのが新鮮でした。古代において、男が天皇でなければならないという決まりはなかった、というのは、これまた驚きでした。たしかに、男の天皇が続いてそれがあたりまえのようになっていれば、だれも天皇の性別は問いません。だって、問う必要がないのですから。
それがたまたま途切れる。そのとき初めて、女が天皇になってもいいかが問われるわけですが、良いも悪いも決まり自体がないのですから、そのまま決まる。実に自然です。先例主義、なんていうのはそれを利用して得しようと考える人間の取る道で、基本的にはその時その時で、それにかかわる人々全体にとってなにがいいかを選べばいいので、過去がどうとかは関係ないわけです。
実際、じゃあ、いっそこの際、天皇を失くしちまえ、なんていう決断というかそんな大げさなものではない方向転換があってもすこしもおかしくはありません。たかだか千年続いた家系だからって、なにもねえ、所詮千年でしょ。家系があろうがなかろうが、私たちが今ここで生きている以上、私たちには皇室と同じ長さの歴史があるんです。
学界が定める歴史の定義である文字にした記録が無いけれど、現実に私たちという存在がある。文字にはウソがかかれていても、私たちの存在は本物です。生きている証拠のほうが強い。そういう意味で天皇家と私の家は対等である、なんて私は考える。うーむ、また脱線してしまった。本題に戻らねば・・・
それにしても、この本、六人の天皇を扱っただけなのですが、前半と後半ではずいぶんと様子が変わります。それが最も顕著に表れるのが系図です。11頁の後白河天皇の即位に関する系図と21頁の推古天皇の周辺の系図、そして27頁の皇極天皇の周辺の系図で幾何級数的に複雑さの度合いを増します。47頁の皇極=斉明天皇の一族の図あたりまでは、それなりに理解しやすい。要するに持統天皇から聖武天皇あたりまでは、範囲を限れば系図も分かりやすい。
でも、それが110頁、応神天皇朝と葛城氏と皇統の途絶、あるいは150頁、聖武天皇と孝謙天皇の系図では、時代はたいして変わらないのに、藤原家のことを書き始めたせいもあって一気に系図が複雑化して、一頁でおさまっていたものが、二頁に渡り始めます。182頁の孝謙天皇の後継者候補達、あるいは210頁孝謙天皇以降の時代を騒がせた人間達、、もそうです。
系図に合わせて橋本の文章に登場する人物も増えてくるので、はっきり言えば何がなにやら分からなくなります。系図を読みなれていない人間には正直、どの線とどの線がどう結びついて、あるいは飛び越しているのかを追いかけるだけで精一杯なわけです。こういうゴタゴタを前にして、結局、皇室って凄いんだよな、って思考停止に陥ってはダメです。分かりにくければ無視して読みましょう。
それでも十分理解できます。とりあえずイメージが出来たら再読。その上で系図を見る。これを繰り返しても、新書ですから大して時間がかかりません。それで正しい女帝理解が可能になるんですから、こんなにありがたいことはありません。で、見えてくるのは等身大の、偉大でもなんでもない普通の女性としての女帝です。いいいじゃないですか、現代に女帝が登場しても。
無論、そんなものも天皇もいない日本のほうがもっといい、って私は思いますけど・・・
最後に目次紹介。
はじめに
第一章 「女帝」とはなんなのか?
第二章 「皇」の一字
第三章 聖武天皇の娘とその母
おわりに
再読
2024/11/13 11:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
再読です。
うーん、やはり氏の著作にしてはどこか中途半端さを感じる。
女帝の後は誰に皇位が行くかわからない、その不安定さが問題だが、そこにもう少し突っ込んで欲しかった。
元正天皇の考察がほぼないのは何故なのか。
藤原仲麻呂を武智麻呂の長男としてるが実際は次男。
同じページで仲麻呂の兄・豊成の記述もあるのに。
それでもU氏のようにやたら「~女帝はこの臣下と男女関係にあった」とブチ上げるよりマシか(U氏の著作はそれはそれで面白いが、男と女の関係は恋愛しかないと思ってるところが疲れる)。
橋本治氏が存命だったらもっと様々な考察をしてくれただろう。
もう氏はいない、それが何より残念。
もっと語ってもいいのに
2019/02/04 21:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代が変わろうと、例え天皇の位にあろうと女の置かれている立場はそんなに変わっていないと痛感。
天武天皇から草壁皇子へと下賜され文武天皇へ、そこから聖武天皇へと受け継がれた黒掛太刀の継承に関わった藤原不比等の存在がさらっと流されているのはちょっと違和感がある。
あと、一次資料をそのまま受け入れ過ぎていて著者らしくなかった。もっと疑ってもいいと思った。