投稿元:
レビューを見る
「精霊の守り人」で人気の上橋さんの作品。
文化人類学を研究した人で、物語の世界観に定評があるにはある人。だけど、これくらいのことは、ちょっと勉強している作家には書けると思うんだよね。そしてこの人はあんまり文章やら、構成やらが上手くない。
世界観は面白いんだけど、なんか話が分かりにくいし。
それに、いまいち登場人物に共感できないんだよなー。
この人は<この世とあの世の間>って概念が好きみたい(狐笛でも出てきた)なんだけど、それもイマイチわかんない。間って何?現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)では駄目なの?
人が生きるために(イネを作るために)、掟を破ってカミの沼を侵すっていう、人か神かの選択で迷うというテーマは面白いとは思うけど。
それに、オニの概念が出てくるのは、もうちょっと後の時代からではないの?
なんだかなー。たつみや章さんや銀金にはかなわない。
投稿元:
レビューを見る
日本人が農耕民族にうつる前の縄文時代を舞台にしたはなし。
神と人が交わっていた時代。神に魅入られた娘と租をおさめるために神を切り離そうとするムラ。
山を守ることで人を守っている神。
そのムラに招かれた神と人の子の苦しみ。
それぞれの思いがやるせない結末を迎えます。
投稿元:
レビューを見る
狩猟・採集を中心とした、自然の一部としてカミと人がネゴシエーションする時代から、農耕・栽培の導入ーーカミを排除して人間自らが自然を支配ないしコントロールする時代へと移行する時期におけるカミ殺しの物語。筆者のアボリジニー調査の経験の影響か、登場人物の「語り」が物語をつむいでゆく手法として、またテーマとして重要な役割を果たしている。その後の作品を読んでいるせいか、若干生硬な印象を受けるが、雰囲気はよく出ていて好感をもてる。この人の作品はこのくらいのボリュームにまとめられた方が落ち着きがいいと個人的には思う。
投稿元:
レビューを見る
著者の初期の作品ということで、正直それほど期待せずに読んだら…驚きました。
神の世から人の世へと替わろうとする村。神と、そしてその挟間で揺れる人の物語。神と人の原始の姿、暗く深い、水と土が混じりあった沼の匂いがします。
神の力と怖さ、人の弱さと心、変わりゆく時の流れ。作品としては荒削りだけど、渦巻き、圧倒されるような力強さを感じました。
投稿元:
レビューを見る
・昔読んだ
・確か、神様の血を引く子と村の女の子の話?
・怖い、けどすごく惹かれる
・暗示的
・色々考えさせる
・なんか切ない
・最後が、すごくいい
投稿元:
レビューを見る
人は自然の一環であり、自然の中で生かされているのは事実だけど、同時に自然を食い物にしなければ生きていけない生き物でもあるということ。 人は本能だけではなく「情」を持つ生き物であり、その「情」の中に「欲」もあり、その「欲」は必要最低限のものを求めるところからスタートしてもどこかで「より多く」を求めるようになってしまう悲しい性を持つということ。 「ムラ」の人びとが「カミ」を封じ込めようとしたのはただ「自分たちが生き延びるため」に過ぎなかったはずなのに、その悪意なき選択がそれまで守り続けてきたもの、しかもそこに秘められたもっと大きな世界の崩壊への第一歩であることには気が付きようもなかったということ。 いやはや何とも深いテーマです。
人の世がどんなにかわろうと、「掟」は変えられぬ。 むしろ、今のような時のために「掟」はある。
「掟」があるということを知っていてさえ、「かなめの沼」を踏みにじったように、人は、してよいことと、いけないことが、わからぬからだ。
「掟」をいちどやぶることは、崖からちょろちょろとふきだした、湧き水のようなものだ。 しだいにまわりを削り、人にとっては、考える気にもならぬほど長い時の後に、その水におのが身を削られて、崖は崩れ去る。
現代ではどんな「掟」があったのかさえ人々の記憶にさえ留められていない「ヒト」と「カミ」の盟約。 そもそもそんなものが本当にあったのかどうかさえわからないけれど、少なくとも現代に生きる私たちは科学万能(最近でこそ懐疑的な風潮もあるけれど)の世の中で暮らし、「自然の生態系の中の一生物」というよりは「経済的動物」に変貌してしまったことにより、死生観も変わってしまったことこそがこの「掟」の意味するところなのかもしれません。
私たちは「死」を恐れ、忌み嫌い、「若さ」に価値を求めるようになってしまったけれど、そしてその「若さ」が象徴するのは動的 & エネルギッシュなものとも言えるわけで、であればこそ数に頼み(要は種としての繁栄)、進歩を求め続けてきたわけだけど、ここまで進歩してしまったのは生きとし生けるものの中で人間だけであるということに今一度思いを馳せる必要があるのかもしれません。
(全文はブログにて)
投稿元:
レビューを見る
神話そのもの!
神話って、どこの国のものも読後はちょっぴり寂しい感じがしてしまうのですが、そういう雰囲気がたっぷり味わえました。何か切ないよ~。
とはいえ、私は人間と自然は相容れないと思ってますので、自然は破壊し尽くして当然という考え方です。「当然」と言ったって罪悪感は持ってますけど…どうやったって共生は無理だと思います。ちょっぴり山深いとことか海の綺麗なとことか行って「空気がきれーい!自然っていいな!」などとは恥ずかしくてとても口にできませんよ。
そんな小賢しいことはよう言わん、と思ってはいますが…やっぱりこういう話を読むと気持ちは揺らぎますね。
揺らぐ分だけまだ救いがあるのかな、などと自分で思ってみたりもします(笑)。でも人間って本当に非自然的なものですのでねえ…やっぱり無理かなあ…?
とりあえず、昨今これさえ口にすればご大層な大義名分を背負った気になれるらしい「地球に優しく」というスローガンは大嫌い、と再認識しました(笑)。
投稿元:
レビューを見る
『獣の奏者』『精霊の守り人』シリーズの作者が1991年に手がけた物語です。
あとがきによると、九州祖母山に伝わる『あかぎれ多弥太伝説』に惹かれ、オーストラリア先住民アボリジニと暮らしたことに影響を受けたそうです。
しきたりなどの描写がリアルで、まるで実話のように感じました。
大きな勢力が少数派の価値観を飲み込んでいくような事は現代日本でも日常的に続いおり、これは日本という狭い土地、湿り気を帯びた日本人が持つ性質なのだろうかと思い至り、少し怖くなりました。
それでも逞しく生きていく人々の姿に心を動かされます。
投稿元:
レビューを見る
「精霊の守り人」の上橋菜穂子の古代日本を舞台にした(?)ファンタジー。
この世のものでないものと人間の女の間に生まれた男二人が、女をめぐって争う話と、要約してしまうと情緒もへったくれもないんだが、ま、そういうこと。
うん、上橋菜穂子の物語は、案外簡単要約できる。
いわば、素麺の旨さみたいなものか。
このシンプルさが快感である場合もあるが、不思議と読み足りないという気持ちにはならない。ってことは、そのへんにテクニックがあるのか??
ステレオな部分だって結構あるのに、読みながらステレオだなと思うのに、それが嫌じゃない。むしろ快感であるのも、テクニックなんだろうなぁ。
上橋菜穂子はまだまだ謎の作家なのだ。
投稿元:
レビューを見る
むかしむかし、カミを畏れ敬いながらともに生きてきた人々が、「カミ殺し」にいたるまでのおはなし。
文章構成が洗練されているとは言えないけれど、深いテーマを、しっかりと描いていて、とても面白いし、素晴しい内容と思う。
カミを殺すに至るムラ人たちの姿に、自分を重ねたとき、きっとそれ以外の選択肢はなく、カミを殺したことが責められるべきことなのかどうかもわからない。
カミを殺したことによって、確かに「失われたもの」があるけれど、では、それは何なのか?、それによってヒトは不幸になったのか?という問いに答えられる人はいないのだろうと思う。
上橋さんの作品は、ご自身の寄ってたつところが学術分野としての専門であるだけに、作品世界の土台がとてもしっかりしているところが好きです。
投稿元:
レビューを見る
「守り人」シリーズの作者の初期作品。
古代日本を舞台としたファンタジー。大きなるクニに飲み込まれるムラ、オニとして滅ぼされるカミ、大きく歴史がうねり人の生き方が変わっていく頃の物語。
自然に根付いた原始宗教観を大蛇に託して見せるやり方が巧いです。正史を裏から見たような構成も面白かったです。
でも物語としては切ないですね。オニとされ封じられたカミと、カミと人との境で悩む巫女の心のすれ違い、そして一瞬の逢瀬を描いた物語ですから。
投稿元:
レビューを見る
読み終わった後、不思議な思いを感じました。
俺はどっちかって言うと、歴史とか昔の事には無関心で、深く考えた事は無かったんだけど、
この作品を読んで、少しは考えるようになりました。
今の自分があるのは、今の世界があるのは、昔があったからなんだよね。
当たり前のことだけど、でも、普段は忘れている事。なんか不思議だよね。
この作品は「もののけ姫」に近いです。もののけ姫が好きな人は楽しめると思います。
2010.09.04 読了
投稿元:
レビューを見る
「守り人」シリーズや「獣の奏者」とは少し毛色の違う作品でした。
読後にスッキリしたい場合にはあまりオススメしない。
反対に自分の中であれこれ考えたいな、って時には良い材料かも。
【収録内容】
序章 <訪れた者>と<カミ>のすもう
第一章 過ぎ去りし時の語り
第二章 夏の満月の夜まで
終章 「むかし、むかし……」
あとがき
文庫版あとがき
<解説>失われしものへの哀歌 ――石堂藍
投稿元:
レビューを見る
力強い話。
カミは死ぬのね。ニーチェの言葉を思い出す。
ヒトとしてカミとして、それぞれの思い。気持ち。
それでも歌い、歌い返す者たち。ホタル。闇。渦。大蛇。
満月の夜にホタルを見せてくれるなんて、なんて素敵な人なのかしら。
投稿元:
レビューを見る
偶然「もののけ姫」を観た翌日に読みました。両方に共通する神殺しのテーマが重く、色々と考えさせられる作品でした。