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天皇と アメリカについて 浅い本
2024/08/23 22:08
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投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
「『よく自分(昭和天皇のこと)は、海軍大学校の図上演習では、いつでも対米戦争は敗ける』」(p.181)、すなわち、シミュレーションをすればアメリカと戦争になったら勝てないのに、また、「アメリカからの輸入に頼らざるを得なかった島国日本」(p.213)なのに、どうして日独伊三国同盟を締結してしまったのかを、「軍人外交官大島浩」(p.24)、陸軍大臣・板垣征四郎、外務大臣・松岡洋右に対する批判(否定的評価)に焦点を当てつつ分析した本である。
2.評価
(1)第2次世界大戦は、結果的に大日本帝国が負けたわけであるから、本書のような否定的評価は結構である。
(2)しかし、天皇・天皇制に対する否定的評価がほとんどないことと、(後世の話になるが)アメリカは民主主義の守護者という正義の味方だとは限らないのに(ブルム,ウィリアム.アメリカ侵略全史.益岡賢ら訳,作品社、2018.ならびに、クライン,ナオミ.ショックドクトリン.幾島幸子ら訳,岩波書店,2024,(岩波現代文庫344,345)を読めばわかる)、本書ではアメリカ=善、ドイツ=悪(これは間違いではない)、に凝り固まっている(典型は、「民主主義アメリカの宿敵であるナチズムのドイツ」(p.243)に表れている)、すなわち、戦争の勝敗を超えた価値判断がなされている問題がある。
(3)以上、(1)で5点、(2)で1点減らして、4点とする。
学術的な客観性と史書としての面白さが見事に両立している好著
2022/09/26 00:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
実に面白い一冊。しっかりした研究上の裏付けを元に、読ませる構成と記載の叙述がなされており、一気読みでした。
三国同盟といっても、日独とも第三者から攻め込まれたという事情にはなかったわけで、相互の自動参戦義務が発動されなかったことなどを考えると、結局は日本がfree handを奪われただけでdownside riskしか感じられない同盟であったと思料。また、日米開戦も「日米諒解案」の件がうまく進んでいたらと切歯扼腕すること大。(まったく、松岡洋右というのはとんでもない奴だわ。)また、北部・南部仏印への進駐における「ボタンの掛け違え」(ここはもっと勉強したいと思いました)のインパクトというのも、大きな気づきとなりました。一点、日ソ中立条約へのドイツ側の評価に関する記載がなかったと思いますが、ここは書いておいてほしかったところです。
なお、本書読了の余勢をかって、増田剛氏の『ヒトラーに傾倒した男 A級戦犯・大島浩の告白』(論創社)も読み始めたところですが、同書52頁の記述が本書71頁の記載と、同じく同書53頁のそれが本書104頁のそれとズレている(異なっている)点には、違和感を感じています。
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