『日本のふしぎな夫婦同姓』
2022/04/17 20:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫婦同氏を強制する世界で最後、唯一の国、日本
どちらの姓を選んでもいいという建前とは裏腹に、実際には96%が夫の姓を選んでいるという実態がある
「妻が姓を変えるが当たり前」というそんな常識に違和感を覚え、結婚に際して妻の姓を名乗ることにした社会学者が、公私にわたり遭遇する理不尽や不条理を「実況」する体当たりルポ
家族制度の歴史から選択的夫婦別姓を求める運動の「40年戦争」まで幅広く論じ、立ちはだかる厚い壁の正体を考える
妻氏婚を選んだサイボウズ青野慶久社長のインタビュー、「4%の側」になった夫たちとの座談会も収録
〈家族論としても、社会論としても、ジェンダー論としても読める、示唆に富んだ書である。〉──想田和弘「神奈川新聞」書評より
『THE 21』2020年7〜12月号連載を元に大幅に加筆修正、2021年11月刊
「自分で自分の生き方を選ぶこと」の重さをかみしめることになる一冊
夫婦同姓じゃないといけないのは日本だけ
2022/01/29 22:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とらとら - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫婦となったときに、夫婦二人が同じ姓にしないといけない国は、日本だけだということは初めて知りました。
日本の戸籍で、夫婦になったときに、どちらか一方の性を選ばないといけなくて、姓を変えることで、個人の特定を維持・管理するうえでのめんどうや不都合が生じるひとがいるけど、それを回避できるよう、選択制で夫婦別姓を選べるようにすることに、日本では抵抗があって、40年間、それが実現していないとのこと。
管理面で、家族もしくは家という単位を維持したいという思いがある人たちが、その象徴として、家族は同姓であるべき、という考え方に連結させているのではないかな。
でも、それが、個人単位での人の特定・維持管理という面と齟齬をきたしているようです。そもそも、家や家族という単位が多様化しているところで、その定義をあいまいにしたまま、姓を合わせることでその単位を定義・維持しようとしているとこに無理が生じてきているのかなと思いました。
投稿元:
レビューを見る
面白かった。夫婦別姓を、なんとなく感覚的に否定していたが、これを読んだら肯定派に鞍替えさせられてしまつた。別姓が駄目な根拠は確かなく、感覚的な否定が、まさに根拠のないものであることを言い渡されてしまった感じ。
投稿元:
レビューを見る
仕事もプライベートも"下の名前"(Given Name)で呼ばれ続けて20年近く経っているからか、姓についてこれほど紛糾してる人たちがいるとは思っていなかった。
たまたま、戸籍と住民票の関係を知りたくて読み始めただけだったので、ちょっとびっくりした。
「もしこの世に人間が1人しかいないのであれば、その人に名前は必要ない。(151P)」
名前はその人そのものなんだなという立場に立つと、改姓の影響は全然小さくないですね。ほんとうに。"男性が改姓してもいい雰囲気"が醸成されていれば、同性婚的にもメリットあるなぁ。
投稿元:
レビューを見る
結婚の際に男性が姓を変えると何が起こるのか、著者の体験談をとても興味深く読みました。女性側から見る不便さ、不自由さとはまた違った視点が新鮮です。制度の問題点や歴史的な推移もわかりやすくまとまっています。文章が読みやすくていろいろ勉強になりました。
投稿元:
レビューを見る
世帯とは、同じ住居で同居する世帯ごとに世帯主が定められ、市区町村が作成する住民票に記載される。あくまで現時点の状況を示すだけのもので、流動的といえる。
戸籍とは、夫婦およびその子を単位として親族関係を登録することで、国がその身分を証明する制度。これはその人をその家族関係を基準に管理するもの。(p68)
『特に日本人にとって姓は、夫婦の絆や親子の絆、そしてその家族の一員であるという帰属意識と強く結びつけられて意識されているようだ。(p94)』
まぁなんとその通りだと思う。
田畑や商店といった家業を受け継ぐことが重要であった時代には、養子や娘婿のような苗字を変える男性たちが普通に存在した。
しかし、工業化や経済の近代化によって、多くの人が外に勤めに行くようになり、生きていくために必ずしも家を継ぐ必要がなくなった。
なるほど。働き方や生活モデルの変化が影響を及ぼしているのか。
結婚とは。家族とは。選択の意味するところは何か。
ゼクシィのあの有名コピーに対する答えも書かれている。
投稿元:
レビューを見る
近年の日本では年間50万組以上のカップルが結婚し、そのうちの96%が夫の姓を選んでいる。
そんな日本で、残りの4%として妻の姓を名乗ることを選択した社会学者が、自身の実体験を交え、日本の家族の歴史や選択的夫婦別姓について紐解いていくルポタージュ。
強制的夫婦同氏制を採用しているのはもはや日本だけらしい。
現在の戸籍制度は1871年の戸籍法制定から続くもので、明治という新時代の「近代国家」の要請に従って創設された(戸主を起点とした上下関係をもつ)家制度の名残が、家制度がなくなった今でも続いているというのが驚き。
1947年の民法改正で家制度が廃止されたあと、地方での家族ぐるみの経営・生活様式から都市での職在分離・核家族化に移行したことで、家制度の思想が却って普及した(性別分業や男性支配が促進された?)というのは、理屈が分かるような分からないような。
対談も収録されていて、全体的に読みやすかった。
投稿元:
レビューを見る
なぜ別姓を強制されるわけでもないのに、選択的夫婦別姓がこんなに進まないのか(今までに40年も戦いを繰り広げているらしい。)考えるヒントになった。ポイントは不安。「多様化する社会に合わせて選べるようになるのがいい」とのことだったけど、横並びが大好きな日本人が、その感覚を得るにはまだ時間がかかるのではないかなと思った。
投稿元:
レビューを見る
経験徒然。
新書だし、読みやすい文体。
そして、目新しいことに夫婦別姓・同姓に関して、男性が改姓したという経験談から描いてる。
選択的夫婦別姓をめぐる知識のない人が入口とするのによい。
棘も少なくて抵抗少ないかと。
投稿元:
レビューを見る
不思議に思っていた点が色々と読みやすく整理されてる良書。夫婦別姓には賛成なんだけど、なぜそんなに反対する人がいるのかを説明している。姓と家族とを結びつけるのは、高度経済成長期の日本の家族構造で、男女双方同姓にこだわり得るとか、そもそも選択できるという自由が反対派は不安になる原因ではないか、など色々と不思議な点が腑に落ちた。
投稿元:
レビューを見る
日本はなぜいまだ夫婦同姓なのか、夫婦別姓への取り組み。伝統的な家族観とは、と夫婦別姓にまつわる諸問題を解説している1冊。著者の中井さんは妻の姓に変更した男性でその事実によってどういうリアクションをされたか、そのリアクションから見えてくる日本社会で男性に求められていることとはを紐解く1冊
エッセイ口調で書かれているのですんなり読める。なぜ夫婦別姓に反対している人は頑なに反対するのか、も網羅しており、反対の立場の人の考えも理解できる(かといって同姓でいいわけではないが)
本書のなかで国民のための国家ではなく国家のための国民になっているという一文だった。たしかにあらゆる面で日々そう感じる…
投稿元:
レビューを見る
夫婦同姓が法律で定められているのは日本だけ。その中で妻の姓を選ぶのはたったの4%。
「妻の姓を選んだ社会学者」である著者が感じ経験した「この国で妻の姓を選ぶということ」を率直に書いてくれている。私の個人的経験とも結びついて学びのある本だった。
文章が軽妙なので入り口はめちゃくちゃさらさらしているけど、終わりはちゃんと締めているし、「妻の姓」を選んだ男性達の対談も良かった。
あらすじ
●夫婦同氏制が現存する世界最後の国、日本――。
●妻の姓を選んだ社会学者が経験した、おどろきの数々とは?
●夫婦同姓の不条理とふしぎさを描く、渾身のルポルタージュ!
夫婦同氏制が現存する世界最後の国、日本。そこで、妻の姓になることを選んだ著者が目の当たりにした、結婚にまつわる日本のふしぎな制度と慣習の数々。
時には理不尽な出来事を経験しながらも、著者は次第にその「ふしぎさの正体」を探究したくなり、日本の戸籍制度や家族の歴史の研究を始める。その先に見えてきた、日本人の「おどろきの家族観」とは?
さらに本書では、選択的夫婦別姓・全国陳情アクション事務局長の井田奈穂氏や、サイボウズ株式会社 代表取締役社長の青野慶久氏へのインタビュー、加えて「妻の姓を選んだ夫たち」の特別座談会も収録。
選択的夫婦別姓の実現が叫ばれる今こそ読みたい、著者渾身のルポルタージュ。
(PHP研究所HPより引用)