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ファンタジーという名の神話
2007/07/14 14:42
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鳥居くろーん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんの予見も持たずに読んでいたら
話が突然 鏡の中の世界に取り込まれ驚く
私はこの手合いの展開に慣れておらず
しかしそれにしてもどこかで読んだような
などといぶかしく思っておれば
思い出した これは童話の世界であった
さらにいうなら世界各地の古い民話や伝承
それらを下敷きにしている
先祖代々より見知った世界
いうなれば神話なのかもしれん
常識とか立場とか そういったものでできた分厚いヨロイ
それを着込むことに慣れてしまった我々が
生身を取り戻すことはもはや
なまじなことでは果たされまい
そう 遠い記憶をよびさます声に触れる そのことをのぞいては
世間一般の評価はどうあれ、梨木香歩の文体は私にとって脅威。たいそう魅力的なのだが、一度引き込まれると自分自身を見失いそうな不安を感ずる。それはただ優しいというだけでなく、恐ろしい感覚をも呼び覚ます根源的なもの。たとえ好きであれ、そうそう迂闊に読むことはできない。
ムーミンの世界に似ている
2002/02/05 19:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:楓 - この投稿者のレビュー一覧を見る
双子の弟と死に別れ、共働きの両親と暮らす少女・照美。イギリス人一家の別荘だったというバーンズ氏の秘密の「裏庭」で、彼女の孤独な魂の物語が始まります。自己救済、という重めのテーマを子供にもわかるように説いた長編。著者の傑作だと思います。異世界と現実世界を主人公・照美の内と外になぞらえて進んでゆく物語は、どこかムーミンの世界を思わせる優しさを併せ持っています。しかし、重い作品なんです。読んだあと、救いとは誰によってなされるものなのか、と考えさせられてしまいました。
傷をみつめ、自分のものにするための旅
2002/05/10 16:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:梅矢 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学一年生の少女照美はバーンズ屋敷の「裏庭」へ渡って冒険をする。冒険には相応しい衣装が必要だ。照美が貸衣装屋で選んだ服は、傷つき血を流す特別な服だった。子どもであるからといって心の傷と無縁ではない。彼女にとってこの旅は、傷との付き合い方を語る三つ子の「おばば」の言葉を聞く旅でもあった。
傷は照美の母、さっちゃんにもあった。思春期を迎えた女の子にとって当たり前の身体の変化を、罪であるかのように扱われては救いがない。女であることの呪いを、なぜ女性である母親も吐くのだろう。実の母親から冷遇されて負った娘の傷は別の女性にも共感されやすい。しかし同性の娘に対してそうせざるを得ない母親の傷は取り残されてきた。この話は、女から女へ受け継がれた負の遺産を断ち切る話でもある。照美という名前は、さっちゃんのお母さんが生前「娘が生まれたらつけてほしい」と言っていた名前だったのだ。もしかして彼女は、孫娘がやがて根の国まで自分を追いかけて、かつての自分の傷さえ浄化させる力を持つ子だと予感していたのかもしれない。
“傷”を抱えているすべての人たちへの物語
2006/09/25 15:53
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
(あらすじ)
丘のふもとにある無人の古い洋館バーンズ屋敷の庭は、町の子ども達にとって絶好の遊び場だった。そこで弟を失って以来屋敷に足を向けなくなっていた少女・照美は一番の友達である綾子のおじいちゃんから、その屋敷には昔レイチェルとレベッカという双子の姉妹が住んでいて、屋敷にある大鏡の向こうには“裏庭”と呼ばれる不思議な世界が広がっていたこと、レベッカはそこの庭師だったことなどを聞かされる。ある日そのおじいちゃんが倒れたと聞かされて何年かぶりにバーンズ屋敷を訪れた照美は鏡の前に立ち、裏庭への扉を開ける。
そこで照美は、この世界はいま崩壊にさらされていて、解体され3つの藩に持ち去られた一つ目の・の化石を再びひとつに戻さなければ、崩壊は急速に進み照美も元の世界に戻れなくなることを知らされる。
そして照美の探索の旅が始まった。
照美はその世界で出会ったスナッフや、必ず2人で生まれてくるはずなのに片割れのいない片子のコロウプ・テナシと一緒に旅をしますが、行く先々で崩壊の兆しであろう奇妙な現象に出会います。それぞれの藩にいる音読みの婆は繰り返し照美に“傷”についての忠告をします。いわばこれは“傷”の物語。
今はあちこちから“癒し”という言葉が聞かれますが、これは“癒し”というものを“傷”という観点から捉えてその意味を語っているとも言えるでしょう。
照美は旅を経て成長していくのですが、そこに挿入されるかたちで、照美の母親・さっちゃんや、父親の徹夫、何十年を経て日本にやってきたレイチェルそれぞれの“傷”をめぐる物語が進行します。それは単に照美のいなくなった世界での状況を説明するだけでなく、とても生き生きと描かれていて読み応えたっぷり。 少女・照美の冒険と大人たちの物語と、二重に楽しめるのではないでしょうか。
大人向けのファンタジー
2022/04/10 19:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
「西の魔女が死んだ」とはかなり雰囲気が違いますが、かなり大人向けのファンタジーだと感じました。重い内容で辛くもなりましたが、読んで良かったと思える本です。
不思議な世界
2017/10/19 06:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:L - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファンタジーだとは知っていましたが、こんなにも壮大なファンタジー作品だったことに驚きました。ラスト、ふたりは幸せな旅立ちだったんだろうなと思いました。
読みやすくて楽しい。
2003/06/09 19:52
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:坂貫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、流石に賞を取っただけのことはあるなぁと思います。
なんだかすごく読みやすくて面白いのです。
ちゃんと時間をとって読めば、2・3日ほどで読み終わるのではないかと。
読むとその雰囲気がしっかり伝わってくるのです。
まるで映画を見ているような気持ちになります。
読み終わった後、いままでの物語が頭の中で次々と流れていき、暫くじ〜んと感動を味わっていました。
壮大さには、1・2歩手前ですが、すごくなんかどーん(?)と来るような。
途中で計P4程、怖いシーンがありましたが、それを想像させる表現がすごいなと感心。
文章が、想像のなかに色を付けていくのです。
これはファンタジー作品なのだけれど、すごく現実味のある作品だと感じました。
星が一つ無いのは、私の好みと少し違った所があっただけなので、
好みが合えば5星かと。
それから、読み終わった後に「解説」も読むと更に楽しめると思います。
どういった話かは、説明が下手なので他の方のコメントを参考に。(蹴)
傷は大事に育てる
2001/08/21 22:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マヒロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
自然と治っていく傷もあれば、そうでない傷もあります。特に心の傷は治りにくいものです。そういう傷は心の奥へ奥へと追いやってしまいがちですが、きちんと処置しなければ変に傷跡を残してしまうことになるかもしれないということに、改めて気付かされました。
主人公の照美は両親にとって自分はいらない子なんじゃないかと傷つき、母親の幸江もまた自分の母親(照美の祖母)に愛されなかったという心の傷を持っていて、傷は母親から娘へと連鎖反応のように続いています。父親もまた別の傷を持っていて、家族みんながそれぞれに心を痛めているのにお互いの痛みが分からない……。この物語は、照美の「裏庭」の世界での様々な試練の旅を通して、「自分」と「家庭」の再建をする家族の姿が描かれているように思えました。
そして、現在・過去、現実・裏庭、日本・英国と、作品を作り上げている世界構造が多重で、奥行きを感じる作品でした。児童文学にはあまり見られないような、現実の厳しさや痛み、ドキッとするような怖い描写もあります。なぜか子供に隠しがちな大人(親)の心の弱い部分までも堂々と書かれているところも作品の魅力だと思います。
家の庭と書いて「家庭」なんですよね。植物の一つ一つが庭を造るように、家族の一人一人が造るものが家庭。素敵なことを教わりました。そして、自分の傷ときちんと向き合うこと、傷は大事に育てることの大切さも。
危険だけれど、大切なことを気づかせてくれるバーンズ屋敷の“裏庭”
2006/04/12 00:05
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のかけら - この投稿者のレビュー一覧を見る
今は空き家になっている、丘の麓のバーンズ屋敷の庭は、子どもたちの格好の遊び場だ。けれどバーンズ屋敷には、もうひとつ庭があった。友だちのおじいちゃんから、その不思議な“裏庭”のことを聞いた照美は、ある日自分も“裏庭”に迷い込み、不可思議な世界の大冒険を余儀なくされる。
冒険が進むにつれ、自分が目を背けてきた現実とも向かい合う照美。悩み、傷つきながら成長する照美を、ついつい応援したくなってしまう人も多いのではないだろうか。
“裏庭”は、非日常の世界ではあるが、人の心の奥深くを映した鏡でもある。ほんの少しの勇気さえあれば、“裏庭”への扉を開くことができるのかもしれない。