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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
冬の女王と呼ばれた亡き親友は、実は詐称の女王であったのかと疑問を抱きつつ命懸けの登頂に挑む主人公の姿に胸を打たれました。想像もつかない世界ですが、緊迫感に溢れた描き方で息が詰まるようでした。
新たな山岳冒険小説の書き手の誕生
2023/12/31 21:20
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投稿者:リオボカ - この投稿者のレビュー一覧を見る
雪山に登る動機がはっきりしているのが良かった。登山のシーンの臨場感は素晴らしいです。頂上での友人との再会シーンは幻想ではあるが感動的でした。
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藤谷緑里は高校一年生の夏、古本屋で一冊の写真集を手にしました。
緑里の手にした写真集はサウニケ島という島を撮ったものでした。
緑里は反対する両親を説き伏せ、写真の専門学校に入学します。
そして、お金を貯めてニ十歳の夏、初海外旅行でサウニケ島を訪ね、十七歳のリタ・ウルラクと妹のシーラに出会います。
そして、デナリ国立公園でリタと緑里は約束をします。
リタは世界的な登山家になり、緑里は一流の写真家になるという。
緑里は商業写真家になり、自分の写真が撮れずにいましたが、リタは続々と冬山を単独登頂することに成功していました。
しかし、リタは心無い者たちに「単独登頂なら山頂に立っていなくても嘘がつける」と疑われます。
リタは「私は冬の女王だ」と名乗りますが、世間は「本当は詐称の女王だ」と言い出します。
リタは二十五歳で、マウント・デナリで遭難しますが、遺体は見つかりませんでした。最期の言葉は「完全なる白銀」。
2023年冬、緑里はリタの妹のシーラに誘われてリタの見たのと同じ景色を見てリタの潔白と「完全なる白銀」を撮るためにデナリへ登ることになりますが。
果たして緑里は登頂できるのか…?
以下ネタバレ含む感想ですのでこれから読まれる方はお気をつけください。
リタと緑里の友情を交えた山岳小説だと思いますが、リタの行方がわからなくなっていたのが、山頂で緑里が見たリタは感動的でした。
「緑里の人生を変えたと言える相手はただ一人。リタ・ウルラクだけだ」心に残る一行でした。
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ある目的のため北米最高峰の冬のデナリの単独登頂を目指しそこで消えたリタ。そしてリタの登頂を疑う記事。その疑いを晴らすために親友の緑里とシーラが冬のデナリを目指す。リタとの出会いと失ってからの日々とデナリへの挑戦。それぞれに物語があってその想いたちが溢れてくるデナリへのアタックには圧倒されてしまう。凍てついた空気、強風、吹雪、霧。死がすぐそこにあるような所から更にまだ上へと進む緑里とシーラ。二人の張り詰めた空気が伝わってくる。なにかに真っ直ぐに向き合う真摯な姿と危うさがリタや緑里たちの魅力となって一気読みで、終盤は祈るような思いを持って一緒に歩を進めているような感覚になった。
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新刊を読むたびに驚く。いったい岩井圭也にはいくつの引き出しがあるのだろうか。
けれど、思う。いろんな引き出しのいろんな物語を紡ぎながらも、岩井圭也が求めるのはいつも人が生きている形そのもの。
冬山登山、しかも北米最高峰の山に登るということ。その厳しさだけではなく女性初単独行を成功させた女性の、その成功と死の真実を追う友人二人のスリリングな雪山行を描き出す。
友人は本当に成功したのか。死と隣り合わせの日々の、同行者とのいさかい。クレバスに堕ちる恐怖。読みながら同じように心が荒れる。もう、戻っていいよ、諦めていいよ、と何度も思う。
頂上から見た景色。彼女の最期の言葉。「完全なる白銀」の真実。
一枚の写真が写すもの。見えないけれどそこにあるもの。その頂に立った者にだけ見えるもの。
完全なる白銀の完全なるラストに、思わず背筋が伸びた。見えない白銀の世界が見えた気がした。
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主な舞台となるのはアラスカ、そこに聳える北米最高峰のデナリ山頂を目指すのは、日本人カメラマンの藤谷緑里だ。岩井さんの小説では初の女性主人公である。
アタックは2023年の冬に、現地の友人でレンジャーのシーラと2人で行われる。途中で2008年から始まるこの物語のいくつかのシーンがカットバックで挿入される。
ゴリゴリのいわゆる“山岳小説”を期待すると肩透かしをくらうかもしれない。けれども、緑里、シーラ、リタの3人のシスターフッド、女性であることの損得、温暖化の影響などが無理なく盛り込まれた傑作である。
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北米最高峰デナリに登攀する感動するお話
親友のリタ・ウルラクがデナリ単独登頂後下山時に行方不明になる。ジャーナリストにその登頂を疑われ冬の女王という名誉から詐称の女王"クイーンオブブリテンダー"と汚名を着せられる事に…
リタの汚名を晴らそうと緑里とシーナがデナリを登攀するがマイナス40℃に達する凍てついた世界、滑落する仲間、遺失した荷物、ブリザードや濃霧でホワイトアウトする視界、高度障害による頭痛と倦怠感といった過酷な状況下の中繰り広げられる刻一刻と削られていく体力と縮まっていく山頂までの距離。
苦しい事ばっかりだけど、これも人生!
山頂からの景色はまさにその通り!それ以外の言葉はいらないよね
私も行動食で羊羹選びがちだから凍りはじめた歯ごたえがある羊羹食べたい
岩井圭也さんの文章とても読みやすい!
岩井圭也さんの作品もっと読んでみようかな
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舞台は標高6190メートルの北米最高峰デナリ。
主人公の親友リタは冬季デナリの頂上から〈 完全なる白銀 〉を見たという言葉を残して消息を絶ちました。
主人公藤谷緑里は親友を追って冬季デナリの頂上〈 完全なる白銀 〉を目指します。
美しく荘厳で人を寄せ付けない冷酷さを持つ北米最高峰デナリ。登山知識の浅い私ですが、文章から自然の厳しさや登頂を目指す執念が伝わり臨場感をたっぷり味わえました。
ブリザード、濃霧、ホワイトアウト、クレバス、高度障害、さまざまな困難を乗り越えて北米最高峰に手を伸ばす主人公。
特に中盤からは緊張感に満ちた迫力にクライマーズ・ハイ状態で一気読みです!
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読んでいる間中ずっと力が入っていたというか気が張り詰めていたというか、読み終えてようやくひと息ついた気分だ。後半にかけての緊張感は半端なく、まるでいっしょに山に挑んでいるような感覚になっていた。帯にある賞賛に納得。
物語は2023年の現在と2008年からの過去が交互に描かれる。2023年現在は日本人カメラマン藤谷緑里とデナリ国立公園レンジャーのシーラが北米最高峰のデナリで冬季登頂を目指す。2人がデナリを目指す理由。シーラの幼馴染で登山家のリタはデナリの冬季単独登頂に挑戦しており、「山頂で完全なる白銀を見た」と言葉を残した下山中に消息を断つ。果たしてリタは登頂に成功していたのか?それを確かめないわけにはいかない。
リタとシーラは共にアラスカ州サウニケ出身。ここは縦に五キロほどの島で、温暖化による海面の上昇の影響で徐々に海に沈んでいっている。緑里は中学時代に古本屋で目に止まったアラスカの写真集がきっかけで写真家を目指し、二十歳のころにサウニケを訪れリタとシーラに出会う。過去のパートはこの当時からのことが描かれているので、三人の絆や夢や目標などはそれぞれの人生の大きな柱となっていることがわかる。
環境問題は待ったなしで進んでいく。リタは登山家として有名になり注目を浴びることで、サウニケ出身を声高にして現状を一人でも多くの人に知って欲しい。物語の中ではこの志には現実的に莫大なお金がかかり、理想を声にするだけでは不可能なことも描かれている。リタは世界中で講演をして、スポンサー集めに精を出し、時として女性であることを自ら利用することも厭わない。目的のために全力を尽くす覚悟を感じる。一方で見方によってはお金や自分の名誉のために行動しているのだと映ることもある。さらにはアラスカ先住民の血に対する差別的な見方が含まれることもある。この物語は山岳小説であるが、環境問題や差別、人と自然などを抜きにして読むことができない。環境問題の難しさは冬のデナリ登頂の厳しさと重なるようにも感じる。登攀の描写でも人の排泄物の問題や食事、登り方などとてもリアルに描かれていて、ただ冬山アタックのスリルだけに終わらない。
とはいえ、後半のアタック場面では肉体的にも心理的にも強く死を意識せざるを得ないような状況が続き、読んでいるこちらもまるで側で見ながら精神的に追い込まれていくような臨場感を味わう。限界を超えた心理的な葛藤は、窮地に追い込まれジレンマと戦う意志は無意味だと突きつけられるかのように苦しい。それゆえ三人の絆を強く意識するような結末に向かい、もうクタクタなのに泣き笑いしたらなんだかスッキリみたいな読後感だった。最後に見たもののひと言は様々なことが詰まっていたと、一気に湧き上がってくる。
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過去に同山で友人を失った女性2人が冬の北米最高峰デナリ(マッキンリー)に挑戦する。
「凍」のような実録ものではないが臨場感は十分。
冬山に掛ける2人の強い思いも、各所に挿入された過去のエピソードから伝わってくる。
本筋にジェンダーやマイノリティ、気候変動を絡めるのは昨今の流れか。
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まずページをめくって驚いた。紙が真っ白!
今までの本はちょっと黄ばんでた?という位、完全なる白銀ならぬ、完全なる白!そこから気に入った。
高山病、凍傷、氷の絶壁、クレバスの恐怖。
何故に人はそこまでして登頂を目指すのだろうか。登山の話だからゴールは予想できたけれど、そこまでのストーリー展開は先が気になって寝れない程でなく、かといって淡々としすぎでもなく、自分も同伴しているかの様な面白い読書生活を過ごせた本だった。
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多ジャンルを書き分ける岩井圭也さん。本作は真っ当な山岳小説。ただそこは岩井さんらしく一筋縄ではいかない。主人公の藤谷緑里は北米最高峰のデナリへ旧友のシーラと向かう。彼女はかつてデナリに単独登頂をした後、行方不明となった友人、リタ・ウルラクの真意を探すために登る。彼女は本当に山頂までたどり着いたのか?このプロットで面白い。ハードな描写と女性ならではのジェンダーの意識にも目を向け、尚且つ「完全なる白銀」の言葉を残し消えたリタの真意も探るミステリもある。てんこ盛りながら山岳小説の良さを十分に取り入れた快作。
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初読みの作家さん。読みやすかった。手に汗握るシーンあり、懐かしかったり愛おしかったり。読み始めたら一気でした。「完全なる白銀」らしい本の紙の真っ白さも良かった。ただ最近少し登山絡みの本を読む機会があったので、リアリティ的にはどうなんだろうとは思った。実際には、トレーニングとか大変だって聞くので…。
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北米最高峰デナリで消息を絶った旧友リタの汚名を晴らすため、真相に迫るため、藤谷緑里もデナリに挑む。
面白かったですよ。ジャンルとしては何になるのかよくわかりませんが・・・紹介文を見てみたら「山岳×青春×ミステリ」だそうで・・・ミステリ・・・なのかなあ。あんまりピンとこない。じゃあ一体どこに魅かれたんだろう?少なくとも環境問題とか青春?とかではない。
やっぱり「山岳」の部分かな。過酷な冬山登山のあれこれは非常に興味深いです。緑里の「夢を追い求めつつも現実との折り合いがうんぬん」の部分は物語としては大事なパーツなんだろうけど読んでいてちょっと気が滅入りつつも、よくある話なので退屈にも感じてしまいました。
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地球温暖化の影響により沈みつつある故郷を救うために登山家としての名を上げることにしたリタが、冬季のデナリで消息不明になった。単独登頂を果たし、山頂で「完全なる白銀を見た」と告げたリタだが、その登頂には疑問が差しはさまれ、「詐称の女王」と呼ばれることに。リタの汚名を雪ぐため、友人である緑里とシーラはデナリ登頂に挑む。壮大な山岳小説です。
正直なことを言うと、登山に対してまったく興味がありません。むしろなぜそんなに苦しいことをわざわざするんだろう、と思ってしまいます。だけれどこういう小説を読むたびに凄いなあ、というのはひしひしと感じます。絶対に行きたくないけれど、雰囲気を読んで味わうだけで充分に堪能できますよ。登山の苦しさも、そして素晴らしさも。
緑里とシーラはリタを間に挟んだ関係であって、彼女たち自身が仲が良いようにはあまり思えません。だからこそこんな二人が相棒として命のかかった登山に挑むのは大丈夫なのだろうか、と不安になってしまいました。さらに彼女たちに襲い掛かる天候や地形の危機にははらはらさせられっぱなしです。彼女たちのリタに対する想いや故郷を思うリタの志は美しいけれど、それだけで耐えられるものではないでしょうデナリ登頂なんて! 美しさと、それ以上の苛酷さも感じさせられる作品でした。素敵な物語でしたよ。だけれどこれを読んで冬の山に登ってみたいだなんてことはこれっぽっちも思いません。