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募る危機感、生成AIによるデジタル影響工作
2023/05/12 14:31
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投稿者:巴里倫敦塔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシアや中国を中心とした権威主義国家によるサーバー空間を使った世論工作、分断工作、偽情報、プロパガンダなどの実態や今後の見通しなどを論じた書。セキュリティやリスクマネジメント、防衛関連の専門家・研究者とジャーナリストから成る8人の筆者が多角的に考察する。オムニバス形式の書籍はとかく内容と書き口にバラツキがあるが、本書は粒が揃っており、各章の品質は高い。「多様でグロテスク」な国々との付き合い方を考える上で弁えておくべき情報リテラシーについて論じており、多くの方にお薦めの書である。
本書は、「デジタル影響工作とはなにか」「激変する各国のメディア環境とメディアの変容」「日米をはじめとする西側諸国における影響工作とメディアの状況」「ロシアや中国などの権威主義国家によるデジタル影響工作の実際と民主主義への影響」などをカバーする。ここで語られるちなみにデジタル影響工作とは、データサイエンスやアドテクノロジー、AIを駆使してターゲットの行動変容を促す行為を指す。ネットの情報を右から左へと書き飛ばす“こたつ記事”があふれる日本のメディアは、デジタル影響工作の格好の餌食である。危機感や訓練が必要だと指摘する。
ChatGPTの盛り上がりを目の当たりにしている現在、気になるのは生成AIを使ったデジタル影響工作についても触れ、「今そこにある危機」と位置づける。2023年以降に、大量の偽情報があふれ人々が真偽を判断するのを諦める「インフォカリプス(情報の終焉)」が起こるとする。暴動誘発アルゴリズムが開発される可能性を示唆する。インフォカリプスとは、インフォメーションとアポカリプス(黙示録)を組み合わせた、米ミシガン大学のアビーブ・オバディアの造語である。
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