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一般書

ロング・グッドバイ

著者 レイモンド・チャンドラー(著) , 村上春樹(訳)

私立探偵のフィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ね...

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ロング・グッドバイ

税込 1,153 10pt

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私立探偵のフィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には悲しくも奥深い真相が隠されていた……村上春樹の新訳で話題を呼んだ新時代の『長いお別れ』が文庫版で登場

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みんなのレビュー185件

みんなの評価4.2

評価内訳

チャンドラー研究の良書

2015/11/19 23:18

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

村上春樹訳『ロング・グッドバイ』は、翻訳小説の部分と訳者のあとがきの部分とを合わせて、レイモンド・チャンドラー研究の良書だと思う。
 翻訳小説だけで見れば、私にとっては、清水俊二訳の『長いお別れ』のほうが、親しみやすく、読みやすく、リズムが良くて、愛着が湧く。
 もっとも、一つ一つの単語については、私が親近感を持つ清水訳が、他の人にとっては違和感を持つ場合も多いと思う。
 たとえば、早朝五時に尋ねてきたテリー・レノックスにフィリップ・マーロウがコーヒーを淹れる時、清水訳では<コーヒーわかし>と書き、村上訳では<コーヒーメーカー>と書く。私もコーヒーメーカーという言葉を聞きなれてはいるが、それでもなお、<コーヒーわかし>のほうに、親しみやすさに加えて懐かしさを感じる。
 あるいはまた、マーロウが金持ち専用の興信所カーン機関に行った時、村上訳では、カーン大佐は元<憲兵>だったと書いてあるが、清水訳では<MP>だったと書いてある。日本にMPがいたのは私が生まれる前のことだが、親がMPという言葉を使うのを聞いたことがあり、その言葉に伴う雰囲気が印象に残っている。
 一方、マーロウがやくざのメネンデスに向かって、テリーがおまえに援助を求めなかったのは当然だ、なぜなら、清水訳では<パンパンから金を借りるようなもんだから>、村上訳では<娼婦から小遣いをもらうようなものだから>と言っている。これは村上訳のほうがよい。なぜなら、<パンパン>とは駐留米軍の相手をした日本女性を指した言葉で、マーロウが住んでいた街には存在しなかったものだから。
 日本に<MP>や<パンパン>がいたのは、『長いお別れ』とほぼ同じ時代だ。村上春樹は私より十歳近く上で私と同じ関西出身なので、おとなが<MP>や<パンパン>と言う時の関西弁のイントネーションや雰囲気を知っているはずだが、いわば、もはや戦後ではない、ので、『ロング・グッドバイ』では、<憲兵><娼婦>という、より普遍的な(?)言葉を使ったのだろう。
 しかし、一つ一つの訳語の選び方にとどまらず、文章全体の流れとして、私にとっては、清水訳のほうが、優しく美しくなめらかに感じるのである。
 私は村上春樹の小説が好きで、大いに期待して『ロング・グッドバイ』を読んだのだが、期待しすぎてしまったようだ。
 ただ、50ページに及ぶ<訳者あとがき 準古典小説としての『ロング・グッドバイ』>は、とてもよい。チャンドラー小説への思い入れ、彼の生涯、作品の時代背景など、懇切丁寧である。特に警察組織の解説はありがたかった。これを読んでからもう一回、マーロウものを読み直すと、登場人物についての混乱が収まった。スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』と『ロング・グッドバイ』との比較は圧巻である。また、赤狩りへの言及も重要だ。村上春樹はダシール・ハメットが密告を拒んで投獄されたことに触れている。それは、『ロング・グッドバイ』出版の2年前であり、マーロウが、友達のために留置場に入れられたと複数の人物から称賛されているのは、ハメットへのチャンドラーの思いがこめられているのかと、私は思った。
 猫を愛することは文章を書くことと並んでチャンドラーの「ネイチャー」だったと、村上は書いているが、猫への愛については、清水による『長いお別れ』のあとがきのほうが詳しい。清水も作品への愛や時代背景に触れ、映画化作品を紹介し、異例の長いあとがきとなったと述べているのがおもしろい。

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文句なしの名作であることは、間違いがないのです

2010/12/21 20:22

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る

 村上春樹訳の「長いお別れ」
 
 私立探偵フィリップ・マーロウは、一人の男と出会う。男をめぐる謎と、その別れ。

 ハードボイルドというと、なぜかハンフリー・ボガードの顔が浮かぶのである。で、その印象とは全く違うマーロウ像に戸惑いつつ、結局のところひきこまれる。
 確かに、物語はハードボイルドなんだろうけど、卵っていうより、もっと無機質なものを感じた。
 というのは、ようするにマーロウを描いているようで、実際にはテリー・レックスという不器用で純粋な男を描いているからなのだろう。直接その像を見るのではなく、投影された影を見るように。
 影は、無機質なものだ。

 そして、とても情緒的で詩的な文章が、いやおうなしに切なくさせてくる。

 やっぱり、名作なんだなと実感した。

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本物の生きる屍に会う

2022/11/12 11:26

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:象太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

主人公の私立探偵マーロウは周囲の人間をスケルトンのように見ていて、彼らの醜い骸骨姿に唾を吐きかけながら接している。しかし、あるときテリーとアイリーンという本物の生きる屍に出会い、強く惹かれていった。
 魂が抜けた空っぽな人間であるテリーとアイリーン。そこに見たものは何だったのか。あとがきで訳者の村上春樹は、マロウがテリーに見出したのはマロウ自身だと指摘しているが、それはマロウ自身が空であることを述べているに等しい。マロウはたまらなく孤独な人間だった。ラストの場面は、再開した友人との触れ合いをも拒んだ。その徹底した孤独ぶりは、胸に深い読後感を残した。

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名作間違いなし

2021/10/01 10:46

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:apple2 - この投稿者のレビュー一覧を見る

とても大好きな本で、名作間違いなしです。
時々読み返したくなります。
もともと『長いお別れ』が好きだったので、春樹さん訳が出版された時点で即購入しました。

どちらが好きと比べるのも非常におこがましいのですが、5.5:4.5位の割合でこちらが好みです。
ハードボイルドを堪能するのなら、だんぜん『長いお別れ』のほう。
古さの表現は時代背景がイメージしやすいので気にならないのですが、概略して変えているのでは…。
と思われるところもあります。

反面、こちらは丁寧でわかりやすく、直訳に近いのでは…。
という予想です。英語が分からないので、あくまで個人的予想にすぎませんが。
そのぶん、ハードが若干ソフトに感じられる部分があります。

先に『長いお別れ』を読んでいたからこそ、よりハードさを感じられるのだと思います。
と思うと、やっぱり両方読んでいてよかった!
願いが叶って、翻訳のコンニャクを手に入れたら、是非原作で読んでみたい本の1冊。

最近は気軽に読めるライトミステリを読むことが多いのですが、オマージュとしてもよく使われている作品です。

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「長いお別れ」既読

2019/06/15 21:17

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かんけつ - この投稿者のレビュー一覧を見る

名作なので随分前に読んでいたものの、ミステリーの落ちは当然覚えていた。村上春樹の翻訳で原文をなるべく省かずに訳したというのが売りになる。英語で原書を読み下せる語学力はないので翻訳の正確さはわからないが、読みにくくはなく読み進めた。ただし長いのでそれなりに時間はかかったが。映画「ブレードランナー」もロスだったし、後世に与えた影響は絶大なものがあるな。

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○○には早すぎる

2019/04/19 11:04

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:apple2 - この投稿者のレビュー一覧を見る

英語でThe Long Goodbyeが読みたい!と思っている1冊です。
『長いお別れ』『ロング・グッドバイ』共に持っております。
個人的には『ロング・グッドバイ』の方が現代訳であり詳細もわかりやすく、情景が浮かびやすいので心もち好みです。ただ、そのぶんハードさが薄れてセミハードボイルドっぽくもなるので、合わせて『長いお別れ』を読むとより脳内で原作に近くなるのかなぁ。
と想像しております。
様々な推理小説でオマージュ的に使われているため、推理小説好きでしたら必読の作品だと思います。

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のどごしグッドな読み心地

2019/02/04 14:29

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ya - この投稿者のレビュー一覧を見る

当方、レイモンドチャンドラー初心者にしてアラフィフBBAとしては「ったくキザだなぁ~」「っち!男ってな~」「は?何でそこでブチ切れてんのぉ?」と、最初はうざかった主人公も、著者と翻訳者の幸せなベストマッチで実現した流れる文章、まあまあ天こ盛りなプロットに登場人物のミステリー加減(翻訳の村上氏の後書きによれば著者の革新的な技術による)にあっという間に読ませられ、違和感ふっとび、酔っちゃいました。ともすれば中毒になっちゃいそうなテイストです。電子書籍でも快適に読めちゃいました。あ~次どれにしようかな。

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翻訳家の作品への愛情

2021/01/28 23:05

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:うみしま - この投稿者のレビュー一覧を見る

この作品はずっと昔学生時代に、手に取ったのですが、あまり面白いと感じることができず、途中で投げ出してしまいました。今回村上春樹さんの訳とのことで、改めて手に取りました。やはり、翻訳する方の作品への想いというか、対象作品への愛情というか、熱い想いが、作品を面白くするのだと実感しました。村上作品は初期のものから読み親しんでいたため、とても読みやすく、また、村上さんの言葉遣いや表現が、チャンドラーに影響を受けていたのだということもわかり、非常に興味深いものがあります。村上春樹ファンであれば、翻訳もすんなり読めると思います。本文そのものもよかったですが、それ以上にあとがきが充実していておもしろかったです。

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会話を楽しむ

2020/07/19 13:09

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:らいぶらり - この投稿者のレビュー一覧を見る

主人公は探偵だが、はっきりいって謎解きはどうでもいい作品。
ウイットのある会話がよい。村上春樹の翻訳が秀逸。

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かっこいい

2015/12/31 16:29

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぽんた - この投稿者のレビュー一覧を見る

村上春樹さんの翻訳ということで読んでみましたが、主人公たちの雰囲気が共通しているようなところもあって、楽しく読みました。

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2010/09/26 14:15

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2011/08/11 07:20

投稿元:ブクログ

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2010/09/24 01:15

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2022/06/18 22:12

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2010/11/20 23:17

投稿元:ブクログ

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