哲学者の密室
著者 笠井潔
三つの事件を経て、矢吹駆に対する自分の感情を持て余していたナディア。そこに起こった新たな事件は、頭部を殴打され、背中に刺傷を負った死体が、誰も入ることのできぬはずの三重密...
哲学者の密室
商品説明
三つの事件を経て、矢吹駆に対する自分の感情を持て余していたナディア。そこに起こった新たな事件は、頭部を殴打され、背中に刺傷を負った死体が、誰も入ることのできぬはずの三重密室の中で発見される、という衝撃的なものであった。さらに、その謎を追う彼女の前に、第二次大戦中、コフカ収容所で起こった密室殺人事件が浮かび上がってくる。二つの事件の思想的背景には、二十世紀最大の哲学者のある謎が存在した。ナディアに請われ、得意の本質直観による推理で事件に立ち向かう矢吹駆の前には宿敵イリイチの影が……!? 現代本格探偵小説を生み出した大量死の謎をも解き明かす、シリーズ最高傑作の呼び声高い第4作。/解説=田中博
目次
- 序章 追想の魔
- 前篇 ノートゥングの魔剣
- 第一章 夜の急報
- 第二章 雨の密室
- 第三章 夢魔の塔
- 第四章 死の哲学
- 中篇 ワルキューレの悲鳴
- 第五章 地獄の門
- 第六章 鬼の履歴
- 第七章 血の饗宴
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すごい読み応え!
2002/05/23 23:34
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しをん - この投稿者のレビュー一覧を見る
矢吹駆シリーズの中では圧倒的に長い。内容も極めて濃密。ハイデガーをめぐる哲学論議はじっくり読むのも、そこは読み飛ばして探偵小説として楽しむのも可。
矢吹と敵の哲学っぽい言い争いは、詭弁家同士…と思いつつもふむふむ、と入り込んでしまう。
ところで矢吹駆シリーズは、前作を踏まえた発言などがあるから、初めての人は、「バイバイエンジェル」から読むのがお勧め。
シリーズは以下。
0織天使の夏 (番外編と言う感じ。「バイバイ、エンジェル」が書かれる20年前にかかれたもも。矢吹の過去が明らかに…?)
1バイバイ、エンジェル
2サマーアポカリプス
3薔薇の女
4哲学者の密室
5オイディプス症候群
パリという密室
2003/03/16 22:50
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
な、なげーよ…、もとい、日本において哲学で笑いを取れる芸人と言えば土屋賢二と笠井潔のまず二人だろうと思っているのだ。で架空の哲学者ハルバッハの哲学論議は、どこにギャグが仕込んであるのかと鵜の目で読んでいた。なぬ、ハイデッガー? そうでっかー。
死の哲学たるハルバッハの思想は、20世紀「以降」の世界を動かしている要因である、戦争、テロリズムを含む大量虐殺という現象に対して、その実行者の動機を照らして批判するために用いられている。それを横糸に、ワルキューレ伝説になぞらえられる二つの三重密室殺人がその本質を現す現象として語られるという錯綜した構造になっている。
つまり、とっても「盛りだくさん」なのだ。
文庫にして1千ページを越す分量だが、密室殺人をめぐる物語や登場人物たちは十分に魅力的だし、探偵役の矢吹駈はシリーズを経るごとに事件を糧に成長していく。また「画面」に登場しない闇のヒーロー、キカイダーに対するハカイダー…、分かりにくいですか、んじゃアムロに対するシャア少佐、あるいはダースベイダーのような位置付けのニコライ・イリイチの存在感もますます際立っている。
舞台は、まだベルリンの壁も崩壊していない1970年代のパリ。結局、批判の対象は、エゴイズムと癒着して不可分になってしまったイデオロギーあるいはナショナリズムに行き着くわけだが、その萌芽を描いた「群集の悪魔」の舞台にパリを選んだのと同様、このシリーズがパリに「居続けている」ことには十分な理由がある。
しっかし遠い。カケルという日本人の物語は僕にも感ずるところはあるのだが、なにしろ大陸の反対側。たしかに日本でモガールのような重厚な刑事もナディアのような勉学に熱心な女子大生も求め得ないのかもしれない。カケルが日本に入国するのさえ難しそうだ。それでもこの物語は、トーキョーを舞台に描くべきだと思う。
ハルバッハ批判の一つとしての「死は存在しない」という論理はたしかに僕も失笑してしまったが、同じこの地続きの世界の中で、依然として同じことを主張している人々はまだいるのだ。作者も、読者も、パリという密室に閉じ込められ、同様に死の可能性までも閉じ込められてしまうのは、本意ではないだろう。
あ、今回の笑うところですか。僕としては、ナディア萌え〜ですかね。
時をかける密室
2018/05/30 05:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代のパリと第二次世界大戦下のソ連を行き来するストーリーがスリリングでした。二重三重に張り巡らされたトリックが圧巻でした。
図書館で
2019/09/20 21:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のきなみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
図書館で紙の本のあまりにもな分厚さに恐れ戦いて(鈍器として使えるレベルの分厚さでした)電子版に手を出しました。このシリーズは第二次世界大戦終戦後からまだ間もないパリということでちょくちょくその事についての言及もありましたが今作ではその戦時中の傷跡が直接関わってきます。日本とはまた違ったヨーロッパ市民にとっての戦争の傷跡が興味深かったです。
哲学する推理小説
2002/04/12 20:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学である。密室である。本当に、これはそういう話なのである。哲学的な密室殺人事件。量もすごいが中身も半端ではない。作者は本気でミステリーによって世界の転覆をもくろんでいるのである。そんなことが可能なはずが無いのだが、作者はいいところまで、こぎつけている。驚異だ。