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巴里倫敦塔さんのレビュー一覧

投稿者:巴里倫敦塔

60 件中 16 件~ 30 件を表示
台湾有事のシナリオ 日本の安全保障を検証する

台湾有事のシナリオ 日本の安全保障を検証する

2022/07/19 15:04

台湾有事のシナリオは詳細で説得力

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

中国と台湾の軍事衝突に焦点を絞り、起こりうるシナリオを検討するとともに、日本がとるべき安全保障政策を論じた書。米国・台湾と中国の間の軍事的緊張がエスカレーションする過程とその後の展開に関するシナリオは詳細で説得力がある。ロシアのウクライナ侵略や中露の日本近海での示威行動、中国の南シナ海での現状変更活動、繰り返される北朝鮮のミサイル発射など、世界情勢は実にきな臭い。根拠のない楽観論に安住し、不都合なことは起きないことにするのではなく、課題に正対して準備すべきは準備する重要さを説く。
 台湾有事については米国インド太平洋軍司令官が2021年3月に、6年以内に中国による台湾侵攻の可能性に言及している。米国の国家安全保障問題の研究者や専門家の間では、台湾危機が起きる起きないかの議論は終わり、台湾危機がいつ起きるか、米国はどのように対処するべきかに研究の焦点は移っているという。笹川平和財団安全保障研究グループの「日米同盟の在り方研究」と、米国ヘリテージ財団とのプロジェクトをベースにした本書は、さまざまな切り口で台湾有事を検証しており勉強になる。緊張感を持って冷静に対処する上で、基調な論点を提供しており、お薦めの1冊である。
 「現代ロシアの軍事戦略」(小泉悠著)でも強調しているが、本書もグレーゾーン事態への対処を重要視する。軍事力の直接行使ではなく、サイバー攻撃や電磁波攻撃、プロパガンダ、ディスインフォメーション、フェイクニュースなどによって日本を混乱に陥れる。グレーゾーンは直線的にエスカレートせず、どの時点で軍事力行使に発展するかを見極めるのは困難である。現在の戦争は、平時、グレーゾーン、有事を区別するのが難しくなっている。

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人口減少社会のデザイン

人口減少社会のデザイン

2020/03/29 15:46

人口減少社会が持続的であるためになすべきことを多角的に論考

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日本にとって喫緊の課題となっている「人口減少社会への対応」に興味のある方にお薦めできる1冊である。
 筆者は、人口減少社会が持続的であるためになすべきことを多角的に提案する。ドイツ以北の欧州を手本にしたコミュニティ重視のまちづくりや、鎮守の森・自然エネルギーコミュニティプロジェクトなど、耳を傾ける価値のある提案も登場する。著者のリベラルな思想には賛否があるかもしれないが、高度経済成長の呪縛をいまだに引きずり、経済成長がすべてを解決するという幻想に取り憑かれた日本にとって興味深い論点を提示しているのも間違いない。
 筆者は人口減少社会の意味から説き起こし、コミュニティやローカライゼーションの重要性について論じる。その後、人類史における人口減少の意味を位置づけ、ポスト成長社会を議論する。さらに持続可能な社会保障、持続可能な医療、持続可能な福祉社会といった時宜にかなった論点について持論を展開する。死生観といった話題を取り上げるのも本書の特徴である。

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ネットは社会を分断しない

ネットは社会を分断しない

2019/12/16 11:09

定説を大規模調査で打ち砕いた書

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「インターネットは社会の分断を助長する」「インターネットは罵詈雑言の世界で、エコーチェンバー現象で過激化する」「若者は保守化している」といった世の中で流布する定説を、10万人規模の大規模調査データに基づいて打破した書。
 分極化し過激化しているのはインターネットを使わない中高年層である。インターネットを介して多様な情報に触れている若者層は、相互理解を深めて穏健化しているという。ヤフーなど大手ネットメディアの利用者は分極化していないというのも興味深い。FacebookやTwitter、ブログの利用者では左傾化と右傾化が同時に進行し、分極化が進んでいるとする。

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小林一三 日本が生んだ偉大なる経営イノベーター

小林一三 日本が生んだ偉大なる経営イノベーター

2019/07/16 13:55

多彩な登場人物も魅力

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阪急電鉄、宝塚、東宝、阪急百貨店などを立ち上げた稀代の事業家・小林一三の評伝である。生い立ちから、不遇の銀行員時代、鉄道事業への進出、宝塚、少女歌劇団、映画や演劇の東宝の立ち上げ、政治家時代、戦中戦後に至る小林の足跡を丹念にたどっている。著者はフランス文学者で、渋沢栄一の評伝も手がけた鹿島茂。全般に手慣れた感じで安心して読み進むことができる。
 小林の凄さは、「需要がなければ生み出せばいい」という思考パターンである。例えば阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道の立ち上げに際しては、「乗客がいなければ作ればいい」と考え沿線の宅地を開発した。阪急百貨店のターミナルデパートしての特徴を十二分に活用した経営手腕にも思わず唸らされる。筆者はビジョナリスト/イノベーターとしての小林一三、ビジョナリー・カンパニーとしての阪神電鉄についてしっかり書き込んでいる。渋沢栄一や松永安左衛門、鳥井信治郎、岩下清周、五島慶太、岸信介、古川ロッパなど、多彩な登場人物も本書の魅力の一つである。

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When 完璧なタイミングを科学する

When 完璧なタイミングを科学する

2019/07/16 12:02

賢い生き方やより良い生き方についての指針を示した書

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仕事や人生、健康におけるタイミングの重要性と、タイミングとは科学だとを説く書。How to本ならぬ、When to本で、視点がユニークだ。人間の肉体的/心理的状態に対する新たな知見を示している。学際的な研究やデータに基づいて議論を進め、賢い生き方やより良い生き方について役立つ指針を示している。
 本書が対象とするのは、仕事の種類とタイミング(朝・昼・晩でやるべき仕事は何か)、運動のタイミング(減量や鍛錬、怪我を考慮したタイミング)、休むタイミング(注意力を高める休み方)、休憩と成績の関係などだ。結婚や転職のタイミングや事業の始め方、中年の危機などについても考察する。読んでていて楽しくなる書である。

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生産性とは何か 日本経済の活力を問いなおす

生産性とは何か 日本経済の活力を問いなおす

2019/06/11 07:48

新聞などの報道を正しく理解するために役立つ

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先進国における日本の生産性の低さが問題となってる。戦後最長の景気回復を達成したが、日本の潜在成長率は1%程度と低い。その元凶が生産性(正確には全要素生産性)向上の停滞である。本書は分かったつもりになっている生産性について、高めることの意味や、高めるための処方箋などを論じた書である。新聞などの報道を正しく理解するために役立つ。生産性を明快に解説しており、多くの方にお薦めできる。
 日本の生産性が低いのは、低生産性の企業を延命し、生産性向上を図るために仕事のやり方を変えようとする活力を失わせ続けてきた政策が原因と筆者は語る。AIなどの技術革新はあるものの、それをビジネスに適用しやすくする制度改革や組織改革がないために、生産性が停滞していると分析する。

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格差や分断が進む社会だからこそファシズムを警戒すべきと警鐘を鳴らす

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格差拡大など資本主義社会の抱える諸問題を解決する方策として台頭する「ファシズム」について、元外交官の佐藤優と政治・思想史学者の片山杜秀が対談した書。ファシズムの本質と危うさ、今後の展開について、日本とグローバルの両面から語り合う。格差や分断を解決する上で、ファシズムの効果は抜群であり、だからこそ警戒すべきと警鐘を鳴らす。多くの日本人がファシズムを独裁や全体主義と混同しており、日本人はあまりに無防備だと断じる。
 資本主義国家で格差が拡大しており、社会の分断が進む。ファシズム国家は本質的に福祉国家であり、私益よりも公益を優先する。分けあえる財産があれば分け与え、国家を効率的に動かす。理屈よりも実践を重視する。格差拡大や分断といった社会問題を効率的に解決するにはファシズム的な政治手法が不可欠だとする。だからこそ、今の資本主義国家の状況は危ない。ファシズムとは何かを改めて考える必要があると強調する。
 日本の戦前・戦中・戦後の分析は興味深い。日本は資源の乏しい「持たざる国」である。持てる国に対抗するには、国民や資源を束ね効率的に国家を運営しなければ歯が立たない。そのため軍人や指導者はファシズムに手を染めた。本当に持たざる国なら身の程をわきまえる。しかし日本は持たざる国としては中途半端に人口が多い。客観状況を無視して、主観的な願望で物事を決めていく念力主義がはびこったとする。
 約5年前に上梓された書で、安倍政権が前提だったり、ロシアのウクライナ侵略や習近平の独裁体制が対象外だったりするが、対談の内容はかなり普遍的なのでさほど問題は感じない。ロシアは国境を「面で考える」など、多様な見方に触れることができて勉強になる。

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日本の建築

2024/03/23 15:10

ユニークな視点での分析に納得

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国立競技場や高輪ゲイトウエイ駅、東京駅前のKITTEなどで知られる建築家・隈研吾による日本建築論。社会的・政治的・経済的・時代的な背景や建築家の置かれた立場を踏まえながら、日本建築を“ナマモノ”として論じる。村野健吾や藤井厚二、堀口捨己、吉田五十八、丹下健三といった日本の建築家たちが、日本の伝統をどのように消化・理解して、建築に生かしたのかを紹介する。建築家としてのユニークな視点での分析や充実した建築物の写真は十分に楽しめる(写真は新書版なので限界はあるが)。建築好きにはお薦めの1冊である。
 冒頭が桂離宮を高く評価したブルーノ・タウトで始まるのも嬉しいし、建築における京都(西)と東京(東)の対比、バウハウスなど西洋の建築との対比は興味深い。西と東の建築については、品の良さと悪さ、小ささと大きさの観点から議論を展開する。
 日本建築では、まず硬い素材から施工を始め、そのあとに徐々にやわらかい素材をそこにはめたりはったりしていく。この施工手順によって現場での様々な微調整が可能となり、いい加減にもゆるいモデュラーコーディネーションが、見事に合理的で柔軟なシステムとして機能する。施工の順序という時間軸が内蔵されていることが日本建築を日本建築たらしめているという。

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異次元緩和の決定過程を徹底検証、読み応え十分

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大量の通貨供給によって物価の押し上げを狙い、10年にわたって続けられた日銀の「異次元緩和」。その舞台裏を追い、妥当性を検証した書である。筆者は元時事通信の記者で、日本の財政・金融政策の決定過程に対する検証ではつとに定評がある。本書でも手練れぶりが遺憾なく発揮されている。黒田東彦日銀総裁の誕生秘話に始まり、初の学者総裁・植田和男が選出された経緯までを丹念な取材に基づき明らかにする。
 黒田日銀総裁就任時に打ち出された異次元緩和は、マネタリーベースを2年間で2倍に拡大し、2%の安定的な物価上昇を2年間で実現することを目標に置いた。黒田バズーカと呼ばれた。それが10年も続き、途中にはマネタリーベースの増加ペースの拡大、長期国債の買い増し額の拡大、ETFとREITの買い入れペースの拡大などのカンフル剤を打ったものの効果は薄かった。逆に、積み上がった国債は発行残高の54%に及び、ETFの総額は54兆円に達するなど、日本経済を劣化させる副作用もたらした。
 筆者は、異次元緩和の誕生と変遷、リフレ派と呼ばれる論者たちの勃興と退潮、路線転換をめぐる黒田総裁と日銀プロパー、さらには日銀と金融庁、政府との攻防を時系列で追う。誰が、いつ、どこで、何をしたかを押さえることで、政策の決定過程に浮き彫りにする。日本経済は復活の兆しを見せているが、その前夜となる10年を知って損はない。読み応え十分な、お薦めの1冊である。

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専門知を生かせない政治、社会的責任を果たさない専門家を批判

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専門知を生かせない政治・行政の責任、社会的責任を果たさない専門家の問題について論じた書。学術会議会員の任命拒否、新型コロナウイルス対策、原子力行政、司法制度改革、介護保険制度などを事例に挙げて鋭く批判する。政治がどのように専門家を扱ってきたか、専門家がどのように政治に取り込まれてきたかを具体的に示している。行政学の泰斗で市民主体の行政についての論客だった新藤宗幸らしい内容である。
 政治と専門家との関係に変化が生じたキッカケは、新自由主義の流れとともに中曽根政権が濫設した「私的諮問機関」。法令に根拠をもたず国会審議を経ずに設置できでき、政権にとって使い勝手が良い存在だった。第2次安倍政権以降は「有識者会議」「審議会」と名前を変えたが、科学リテラシーの軽視と反知性主義に拍車がかかった。本来なら専門知に基づき政治に忖度なく提言する組織のはずだが、政権に意向に沿って都合よくお墨付きを与える存在に成り下がった。
 新藤は、理系研究者にも厳しい目を向ける。人文・社会科学思考が“貧困”な理系研究者は潤沢な研究費をエサに取り込まれていると舌鋒鋭く批判する。専門知の機能不全の問題は、アカデミックの世界だけでは官僚機構にも生じている。内閣人事局の設置による官僚の人事権の掌握以降、官邸の官僚支配の構造が定着することで、官僚機構で士気(モラール)と職業倫理(モラル)が損なわれたとする。

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「歴史は繰り返さないが韻を踏む」を実感でき、歴史の奥深さを堪能できる書

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冷戦開始から終焉までの流れを俯瞰して知ることができ、歴史の奥深さを堪能できる書。「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という言葉があるが、冷戦時代と現在の混沌とした状況に類似した構造(韻)を、本書からは読み取れる。例えば戦略的な要衝や軍事基地、戦略資源の確保、同盟の形成といった地政学的な利益を追求する構造はよく似ている。1次と2次の台湾海峡危機を生んだ毛沢東の暴走・過激化が、現在の中国の姿とオーバーラップするのは不気味である。
 本書は、米国、ソ連、欧州だけではなく、アジアの動きも視野に入れる。冷戦終結後に利用可能になった旧ソ連や東欧の文書などに基づく最新の研究成果を取り入れ、冷戦の複合的な性格・構造を明らかにする。上下2巻で500ページを超える大著だが、お薦めの1冊である。
 本書を読むと、現在生じている多くの国際問題の出発点が冷戦にあることが分かる。ロシアのウクライナ侵攻、9.11同時多発テロ、北朝鮮の核開発など、冷戦によって生じた構造が紆余曲折を経て現在につながる。
 筆者は、欧州と東アジアの事態がしばしば連動したことを明らかにする。例えば、西ドイツの東方政策にヒントを得て韓国は北朝鮮に対話を呼びかけ、天安門における中国の対応がゴルバチョフの東欧政策に影響を与えた。
 歴史の“もし”も興味深い。ゴルバチョフとミッテランらが求めていた、ソ連が参加し東西ヨーロッパ全体を包含するような安全保障秩序が確立していれば、ロシアのウクライナ侵攻は起こらなかった可能性が高い。日ソや日朝、米朝の関係を好転させるチャンスが存在した。例えば、ソ連が北方領土の2島返還を決定したにもかかわらず、日本政府が好機を逃した。

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資本主義の在り方が問われている現在、原点に戻るのも悪くない

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近代資本主義の精神を追究したマックス・ウェーバーとウェーバーの系譜を連なるニクラス・ルーマンの産業社会に関する研究をベースに、「社会学とは何か」を紹介した啓蒙書。ウェーバーの代表作である「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を俎上に上げ、資本主義にとって組織とは何か、産業社会の成立の条件は何か、近代資本主義のバックボーンとなるピューリタンリズムの存在など、ウェーバーの研究の意味や意義を詳細に解説する。資本主義の在り方が問われている現在、原点に戻るのも悪くない。
 興味深かったのはウェーバーの研究そのものよりも、研究の進め方、調べ方である。ウェーバーは社会学に数理や確率、計量の考え方を導入し、論考に「平均的」「機会」といった確率的な表現を用いたという。
 ウェーバーとルーマンの研究の解釈が中心なので、タイトルの「新地平」に惹かれ、新しさを期待して購入すると失望しそうだ。ちなみに評者は、「職業としての学問」や「職業としての政治」を繰り返し読んだが、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」は未経験。本書で繰り広げられる議論は、それなりに刺激的で新鮮だった。

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TSMCについて知っておくべきポイントを的確に押さえている

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飛ぶ鳥を落とす勢いのTSMC(台湾積体電路製造)の歴史、経営方針・戦略、経営陣、組織、ガバナンス、コンプライアンス、知財戦略、将来戦略などについて、台湾のジャーナリストが詳細に綴ったビジネス書。創業者であるモリス・チャンの経歴や経営哲学、UMCやエイサーといった台湾企業との関係、インテルやサムスンに対する競争優位性にも触れる。最後に、緊迫化する中国との関係、電力や水資源の不足など、TSMCが今後10年に直面するリスクの数々についても言及する。
 筆者は、TSMCの競争力の源泉として次の7つを挙げる。(1)制度は米国式だが、リーダーシップは台湾式、(2)2万人の人材を抱える研究開発・技術チームと投資、(3)一流で実践的な企業文化、(4)卓越した技術と知財戦略、(5)完成されたサプライチェーン、(6)競争力のある報酬制度、(7)革新的なビジネスモデルである。筆者はそれぞれについて分析を加え、他の台湾企業やインテル、サムスンなどに対する優位性を明らかにする。
 勝てば官軍の雰囲気が漂う書だが、TSMCについて知っておくべきポイントを的確に押さえているのも確か。国家安全保障と密接に関係する半導体のサプライチェーンに脚光が当たる今、一読に値する書である。

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違う分野の研究者が集まり語り合う異種格闘戦

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異なる専門分野11人の東大教授が、10ジャンルについて語り合った書。10のジャンルとは、エネルギー、教育、宇宙、IT、仮想空間、AI、国家、生命、ビジネス、環境である。盛り上がりに欠けるテーマもあるが、普通なら質問される側の東大教授が、専門外のテーマについて素朴な疑問を投げかけるところは面白い。ネットワークの研究者である江崎浩教授が「違う分野の研究者が集まって話すと、やはり新しい発見があるんですね。我々はもう少し集まって話をしなければいけない」と語っているが、本書には異分野格闘戦の効果が出ている。
 4つのパートで構成し、それぞれ3人の研究者が対談する。イーロン・マスク評、GAFA評、日本のビジネスの問題点、半導体の民主化、宇宙開発の民主化、宇宙エレベーター、正体不明の物質ダークマター、メタバース、6G/7G/8G通信、認知症、パーキンソン病、記憶の仕組みなど、話題は多岐にわたる。素人感覚の質問に、その分野を専門とする研究者が噛み砕いて回答しており勉強になる。
 4つのパートのなかで最も興味深かったのは、暦本純一、合田圭介、松尾豊の対談である。人間に能力をダウンロードする時代になる、1000歳まで生きる人間を作ることは可能か、イーロン・マスクの「ヤバさ」とは、研究者はSFがお好き、ブレストはもう古い、「雑談」こそがクリエイティブである、「兵士」は多いが「司令官」が足りない日本、など話題は多岐にわたり楽しめる。

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民主主義の新たな姿をファンダムに見出す、希望の書

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今や民主主義は「死んだ」「壊れた」「奪われた」「失われた」などと言われる。権威主義が幅を利かせ民主主義が危機的な状況にある現在、民主主義の新たな姿を「ファンダム(fandom)」のなかに見出した書。ファンダムとは、ファン(fan)と領国(kingdom)を組み合わせた造語である。アイドルや趣味、アニメ、スポーツ、音楽、ゲームなどのファンによる「推し」活動や文化を意味する。このファンダムの行動パターンが、伝統的な政党に代わる人々の組織化の可能性につながると主張する。
 本書は、編集者の若林が政治学者の宇野に質問する形式をとる。フランスの思想家トクヴィルの思索を手ががりに、民主主義をアップデートする道筋を提示する。両者の丁々発止のやり取りは実に刺激的で、興味深い視点と論点を提供してくれる。民主主義の未来に希望を感じさせる書である。
 本書の特徴は、民主主義を政党や選挙ではなく、行政権に焦点を当てて論じているところにある。デジタル化の進展による双方向性が、行政の在り方に影響を与え、供給側の論理で作られた旧来の政策は破綻を来したとする。デジタル社会において代わりになるのがファンダムである。ファンダムがプラットフォームとしての行政権を利用しながら社会を変える。市民の「何かできる」「何かしたい」をモチベーションに、その場にいる人たちが「できること」を紡ぎ合わせて行動する。ファンダムによる民主主義では、応援することも立派な参加であり、貢献となる。
 終わりをデザインするのではなく、始まりをデザインすることが重要という指摘も面白い。完成形をデザインする建築家ではなく、育ってきた植物に応答的に反応せざるを得ない庭師的な行動パターンが重要になる。

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