突き付けられた「命の価値」 遺族が憤る支援の現実 大阪ビル放火
毎日新聞
2022/12/15 16:00(最終更新 12/18 03:52)
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大阪・北新地の心療内科クリニックで院長や患者ら26人が死亡した放火殺人事件は、17日で発生から1年を迎える。遺族の多くが国の「犯罪被害者給付金」について、十分な金額を受け取れない恐れがあるという。今も悲しみに暮れる遺族が突き付けられたのは、「命の価値」の算定方法を巡る現実だった。
「子どもの成長を一緒に喜び合い、小さなことで笑う。普通の会話がしたいです」。最愛の夫を奪われた女性は書面で取材に応じ、苦しい胸の内を明かした。
夫は資格を生かした職に就き、同僚や友人に慕われた。幼い子供の育児や家事への協力も積極的で、家族に精いっぱいの愛情を注いでくれる大黒柱だった。
その夫は多忙な仕事で心身の不調を訴えて退職。治療とともに職場復帰を支援するクリニックの「リワークプログラム」に参加していた。「これからどう働くか具体的な道筋が見えてきた。話す時間をつくってほしい」。事件は夫からそう伝えられた直後に起きた。
夫を失って絶望する中、女性は経済的な負担も強いられた。遺体の搬送費用や葬儀代……。夫との思い出が詰まった自宅で子供と生活を続けると決めたが、月々の生活費も重くのしかかる。谷本盛雄容疑者(当時61歳)=不起訴=は死亡し、賠償金の請求が難しい。
「遺族は放っておかれるわけではないんだ」。女性がわずかな希望の光を感じたのが、警察から説明された給付金制度だった。
制度は1981年、被害者や遺族の支援拡充を目的に導入された。きっかけは8人が死亡、380人が負傷した74年の三菱重工ビル爆破事件で、殺人や傷害など故意の犯罪に巻き込まれた被害者や遺族に国から一時金が支払われる。
しかし、女性の期待は間もなく失望に変わる。
「収入…
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