たとえ、突き落とされても 桂三四郎さんが追い続ける師匠の背中

「是が非でも欲しかった賞でした」と落語家の桂三四郎さん。彩の国落語大賞受賞を記念して開かれた独演会を楽しみにしてきた=さいたま市浦和区の埼玉会館で2024年10月5日、宮間俊樹撮影
「是が非でも欲しかった賞でした」と落語家の桂三四郎さん。彩の国落語大賞受賞を記念して開かれた独演会を楽しみにしてきた=さいたま市浦和区の埼玉会館で2024年10月5日、宮間俊樹撮影

 師匠は、弟子に圧倒的な実力差を見せつけていた。自身に近づく余地を1ミリも与えない。「獅子は我が子を千尋(せんじん)の谷に落とす」ということわざを身をもって示す高座だった。

 10月5日、埼玉会館(さいたま市浦和区)で開かれた落語の独演会。2023年度「彩の国落語大賞」を受賞した桂三四郎さん(42)の晴れの舞台――のはずだった。しかし、師匠とのあまりのレベルの違いには、崖から落とされたような感覚を味わった。

 独演会の特別ゲストとして高座に上がったのは、桂文枝さん(81)。三四郎さんの師匠だ。文枝さんは得意の創作落語を披露し、客席を笑いの渦に巻き込んでいく。「惚(ぼ)けてたまるか!」という演目で、その変幻自在なテンポに、裏方のスタッフたちも高座を映すモニターにくぎ付けだ。

 舞台裏にいた三四郎さんは思わず口にした。「全然、手加減せえへんな」。本来は三四郎さんの祝勝会みたいな場なのに、文枝さんは弟子に花を持たせることはない。ひたすら自身の芸を見せる。客の反応も含め、三四郎さんは師匠に圧倒された。

 「崖から落とすだけではない。…

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