特集
真相・ニュースの現場から
さまざまな事件や出来事の裏に隠された秘話、ヒューマンストーリーに迫ります。
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「翼音のフクロウをずっと」 店や孫娘失った男性、蒔絵筆に魂込め
2024/12/31 11:00 3126文字漆塗りで仕上げたマグカップに、フクロウの姿が浮かび上がる。「いいね、じいちゃん」。筆を走らせる間も、孫娘の声が脳裏によみがえる。 信じられないことが次々と起きた1年だった。元日、最大震度7を観測した能登半島地震で、石川県輪島市久手川(ふてがわ)町の自宅は準半壊となった。市中心部の観光名所「輪島朝市
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「ちっちゃいおばあちゃん」から孫への手紙 添えられた図書券
2024/12/31 09:00 1726文字「ちっちゃいおばあちゃん」の手紙には、いつも孫を思う言葉がつづられていた。添えられた図書券の包装紙さえ、捨てられずに大切にしている。 ◇同級生の「にいなちゃん」 東京都世田谷区で暮らす野口桃子さん(32)は1999年4月、「にいなちゃん」と出会った。2人はそろって、世田谷区立千歳小学校に入学してい
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妻子救えず「俺は地獄に」 店再開の男性、痛恨の念に締め付けられ
2024/12/29 17:00 2691文字「2人は天国にいるけど、俺は(死んだら)会えるのかな」。石川県輪島市で居酒屋を営んでいた楠(くすのき)健二さん(56)は、2024年元日の地震で倒れてきた隣接するビルに自宅を押し潰され、妻と長女を失った。地震後、川崎市で始めた店は軌道に乗ったが、がれきに挟まれた2人を救えなかった罪の意識は片時も消
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「せめて制服だけは…」 被災直後の採寸会、子どもの笑顔にほっと
2024/12/29 07:00 2018文字石川県穴水町の衣料品店経営、小林英夫さん(59)は2024年元日の地震で義父を亡くした。義父から受け継いだ店は全壊。営業再開のめどが立たない中、大きな気がかりがあった。春に小中高校に進む子どもたちの制服の採寸作業をどうするのか。「せめて子どもたちの制服だけは、何とかしよう」 ◇義父から受け継ぎ5代
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寺で突然、性暴力 住職「逆らえば地獄に」 尼僧支配した聖域の構造
2024/12/11 11:36 2226文字たとえ黒でも、師匠が白と言えば白――。 住職だった男性からそう教えられていた尼僧が、密室の寺で性被害に遭った。 「精神的支配、洗脳みたいだった」。元住職は逮捕・起訴され、有罪判決が下ったが、信じていた人と教えに裏切られ、尼僧は心を病んだ。 「聖域」のはずの寺でなぜ性被害が起きたのか。 ◇「心から尊
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「ごめんなさい。もう限界」 兄との死を選んだ妹のラストメッセージ
2024/12/11 06:31 3964文字残暑厳しい2023年9月25日、東京都奥多摩町の山あいにある湖のそばで、女性(46)の遺体が見つかった。女性は軽ワゴン車の後部座席に横たわり、運転席では女性の兄(48)が息絶えていた。 記者は2人が生きた証しを知りたくて、関係者への取材を重ねた。【岩崎歩】 <前編> 幸せな「家族アルバム」から途絶
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幸せな「家族アルバム」から途絶えた写真 ある兄妹の最期を追って
2024/12/11 06:30 2235文字有名企業でチームリーダーを任されていた女性は、毎日同じような服で出勤していた。昼食は菓子パン一つ。仕事を終えると、決まって自宅に1本の電話を入れ、家路を急いだ。 残暑厳しい2023年9月25日。東京都奥多摩町の山あいにある湖のそばで、その女性が遺体で見つかった。女性は軽ワゴン車の後部座席に横たわり
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史上最悪の獣害「三毛別羆事件」 7人が殺された“悲劇の地”の今
2024/11/27 05:30 2770文字約110年前、北海道の農村で、国内獣害史上最悪と呼ばれる惨劇が起きた。7人がヒグマに殺害された「三毛別羆(さんけべつひぐま)事件」だ。事件後、地元ではある親子がクマ撃ちの名手となり、駆除を続けた。親子が愛用した猟用刀は、2人が亡くなった今も地元に残っているという。誰が受け継いだのか――。観光名所に
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最高のお姉ちゃん「かえちゃん」を奪われた家族の20年 小1女児殺害
2024/11/17 05:00 3044文字幼少時に犯罪で姉を失った妹は、周囲を悲しませないために姉のように振る舞おうと苦悩してきた。その妹に被害者家族の苦しさを背負わせたくないと、父親は接し方に悩んできた。家族には「『かえちゃん』っていう最高のお姉ちゃんがいた」。その存在が事件で奪われて20年。2人は今なお、当時の記憶に苦しめられている。
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あと少しで容疑者に…震えた右手 女児殺害事件、警察官が学んだこと
2024/11/16 16:30 1449文字携帯電話を持つ右手は震えていた。容疑者にたどり着けるかもしれない。怒りなのか、えたいの知れない相手への怖さなのか。ある警察官は20年前、女児の命が奪われた捜査のまっただ中にいた。警察としての最大の使命に向け、あの時に学んだことを大切にしている。 奈良県警の大玉知子さん(56)は捜査1課で特殊犯係の
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学校で性被害 小2女児、信じてもらえなかった「下半身触られた」
2024/11/16 11:45 3161文字幼い子どもが学校で性被害に遭ったと保護者に打ち明けた。でもその内容を学校や教育委員会に全て真実だと信じてもらえなかったら――。 神奈川県茅ケ崎市内の小学校で実際にあった出来事が、児童らの証言が食い違っていることから一向に解決しない。被害を訴えた2年生の女児は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断
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カリホウメン
留学で来日のスリランカ男性には永住権 入り口の違いで大きな差
2024/11/13 11:01 2088文字スリランカ人男性のルビさん(50)=仮名=が来日後に長い時間を過ごした栃木県足利市でゆかりの場所を訪ねると、ルビさんの大変な姿がおぼろげながら見えた。 以前住んでいたアパート近くのJR両毛線「山前駅」は地方都市の住宅地にある。ルビさんは、この駅に降り立ち、どんな気持ちだったのかと想像した。 駅から
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カリホウメン
月1回の仮放免延長申請 「強制退去の可能性」入管からの警告文
2024/11/13 11:00 2024文字仮放免延長申請の日の朝は早い。 午前6時半ごろ、スリランカ人男性のルビさん(50)=仮名=は寝起きする神奈川県鎌倉市の「アルペなんみんセンター」を出た。朝ご飯は食べずコーヒーだけを飲んだ。「この日の朝は食欲がわかない」 通勤ラッシュで混み合う横須賀線に乗り込みJR品川駅まで出た。 駅の通路には、職
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追跡 公安捜査
大川原化工機事件 警察庁幹部「やるな」 消えた警視庁の検証アンケ
2024/11/13 05:00スクープ図解あり 1893文字化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件で、警視庁公安部外事1課が起訴取り消し後の2021年8月、捜査の問題点を検証するアンケートを捜査員に実施していたことが判明した。だが、アンケートの存在を知った警察庁幹部に外事1課長(当時、以下同じ)が叱責され
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カリホウメン
バスで移動中に襲撃され重傷 スリランカ脱出を決意し日本へ
2024/11/12 11:01 2023文字2002年10月19日、名古屋空港の外に出ると風が冷たかった。気象庁の記録では、名古屋市は同日昼から夜にかけ雨が降ったりやんだりだった。 荷物はかばんひとつだけ。中には着替えと、資料などを詰め込んだ。ブローカーを通じ、70万円で得た3カ月の商用ビザで入国した。 「まずは働きながら考えよう」。スリラ
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カリホウメン
難民申請に150万円必要と言われオーバーステイ 無情の仮放免
2024/11/12 11:00 2132文字「カリホウメン」 難民申請中の外国人の家族に取材すると必ず耳にする言葉だ。 仮放免は日本から強制退去の命令を受けた難民申請者らが一時的に収容が解かれる制度。出入国在留管理庁によると、2023年末で2929人が仮放免として扱われている。 県境をまたいでの移動はできない。国民健康保険にも加入できない。
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「選挙イヤなの…」と涙した一人娘 激戦制したママ候補の時短戦略
2024/10/28 15:30 2388文字「お疲れ様でした!」 3候補が接戦を繰り広げた衆院選東京15区。投開票日が目前に迫っているにもかかわらず、立憲民主党の酒井菜摘氏(38)は他の候補より1時間早く街頭演説を切り上げ、自分の乗らない選挙カーを見送った。自宅で待つ小学1年の長女(7)と過ごす時間を大切にするためだ。 ◇長女の涙のわけ い
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「助けてください」行方不明説も流れた丸川珠代氏 遅すぎた謝罪
2024/10/27 20:00 3246文字衆院選東京7区から立候補していた自民新人の丸川珠代氏(53)は議席獲得が絶望的となった。元民放アナウンサーとして抜群の知名度を誇り、五輪担当相などを歴任し常に日の当たる道を歩いてきた。彼女はなぜ敗れたのか。 自民党派閥による裏金事件の発覚から11カ月、第一声は謝罪から始まった。 「多くの皆様に不信
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SNSで中傷受けたら?法的手続き簡略化で、申立件数が倍増
2024/10/18 09:00 991文字インターネット上の中傷投稿などについて、発信元の特定を求める手続きが簡略化され、裁判所への申立件数が急増している。最高裁のまとめでは、2024年上半期で前年同期の2倍近くになっていることが明らかになった。 ※あわせて読みたい関連記事あります。SNSの悪質「なりすまし」投稿 被害女性の法的手段で見え
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SNSの悪質「なりすまし」投稿 被害女性の法的手段で見えた相手は
2024/10/18 09:00 1461文字SNS(ネット交流サービス)のアカウントは自分の名前になっていた。繰り返される投稿内容はあまりにも不快だ。卑わいな言葉に性的な画像。もちろん、全く身に覚えがない。誰が私になりすましたのか――。 「見ず知らずの人が投稿を見て、私のものだと思ったら気持ちが悪い。これが世界中に公開されていると思うと怖か
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