エリックとマチルダ
ミーシャ・リヒター 作
みつじまちこ 訳
新教出版社
2023年2月28日 第1版第1刷発行
Eric anc Matilda (1967)
『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第三章 恋するとは」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。
最後に「訳者あとがき」があり、そこで、作者ミーシャ・リヒターについて紹介されていた。
ミーシャ・リヒターは、1910年、ウクライナのハルキウ生まれ。7歳の時に、ロシア革命を逃れて、ポーランド、そしてアメリカへと渡った。 ボストンのミュージアム・スクールとイェール大学で美術を学び、公共事業促進局の壁画作成に従事した後、1942年から雑誌 『ニューヨーカー』に 風刺漫画を寄稿するようになる。2001年に90歳で亡くなる前年まで書き続け、作品の総数は1500以上。
雑誌『ニューヨーカー』は、先日読んだ 村上春樹と柴田元幸の『 本当の翻訳の話をしよう』の中でも出てきて、掲載されている小説も面白そうだったので、ちょっと気になっている。手にしたことはあるけれど、ちゃんと読んだことはなかったし、風刺漫画なんて気にしたこともなかった。こんど、実物を手に入れてみよう。
リヒターの絵は、どこかで見たことがあるような気もする。と、それくらい、シンプルでいて、躍動的で、印象に残る。
物語は、 いたってシンプル。 主人公はユキダチョウのエリック。たくさんの仲間がパレードしているなかに、可愛い女の子、マチルダを見つける。エリックは、マチルダに恋をしている。
エリックは、パレードに加わって、マチルダに気が付いてもらおうと、一生懸命目立とうとする。後ろを向いて歩いてみたり、逆立ちしてみたり、歌ってみたり。
でも、マチルダはまるで気が付かないみたい。
色々ためしてみても、気が付いてもらえないエリックはしょんぼり。。。一人、パレードから抜ける。
エリックは、森の賢者のフクロウに相談してみた。
「だいすきだよって ことばで つたえればいいのじゃないかね?」
エリックが「だいすきだよ」をつたえようとパレードに戻ってみると、みんなは飛び立っていくところだった。
「マチルダ まってよ。 ぼく、きみのことが だいすきなんだ」
マチルダは振り向いて、
「エリック!」と叫んだ。
マチルダは最初から、エリックのことをわかっていた。エリックがいろんなことをしているのも知っていた。
「でも、わたしのことが だいすきだってことは、さっき ことばでつたえてくれるまで しらなかった。 わたしも あなたが だいすき」
そして、ふたりは、つばさとつばさをよせあって、南へととんでいきました。
おしまい。
大事なことは言葉にして伝えないとね。
絵は、黒の筆のような線で描かれ、エリックとマチルダのくちばしにだけ色がさしてある。黄色と赤色と。絵というか、イラスト。迷いなく、心の赴くままに筆を運んだって感じの勢いがいい。描けそうで、なかなか、描けないタイプのイラスト。線だけで、動きを表しきっている。1967年出版というから、50代の時の作品だろうか。きっと、思いついてすぐに作品にした、って感じかな。
お話も、シンプルだけど、うんうん、そうねそうね、って。
そして、エリック、よかったね、って。
気づいてほしくて、目立とうとする若者にありがちな行動。よくわかる。でも、やっぱり、言葉でないと伝わらないことがある。ガチョウの世界もそうなんだね。
がぁがぁ。
大事なことは、言葉でつたえよう。
ありがとう、ってね。
絵本は大事なことを伝えてくれる。
絵本は、いいね。