全日本選手権では硬さの見られた選手たちが緊張から解き放たれ、伸び伸びと演技してくれたのは何よりだった。樋口新葉がキレのある動きでダイナミックな滑りを見せれば、鍵山優真も試合より軽快なフラメンコのステップを踏む。「ゆなすみ」こと長岡柚奈/森口澄士のコミカルな演技見応えがあり、「うたまさ」こと吉田唄菜/森田真沙也はアイスダンサーらしい見事なリズム感で曲を表現してくれた。
そして鍵山がノリノリで参加していたことも、目を疑ってしまうような光景だった。坂本花織は家入レオの「Shine」を使っていたが、これは僕がカラオケでも歌うくらい好きな曲。中田璃士が使ったホージアの「Take Me to Church」も好きな曲だし、この他にも「Goodbye Yellow Brick Road」や「天国への階段」に「Paint It Black」まで聴けたら、音楽だけでもうお腹いっぱいな印象だ。
以前は、日本選手のエキシビションといえば競技の一部を使うか、同じような雰囲気の内容しか見られなかったのに、ずいぶん多彩になったものだ。表現力だけでなく、選曲の自由さや仲間を募ったり小道具を使ってみたりという工夫が素晴らしい。小道具といえば島田麻央は箒にまたがっていたが、それをわざわざ言葉で伝えるフジテレビのセンスには苦笑するしかなかった。
島田と言えば、2シーズン前の「キャンディだいすき、キャンディください!」という幼さを前面に押し出したプログラムから、ずいぶん進歩したものだ。それでもなおファンタジー路線で行くのは、周りの大人の意向も強いのだろう。
残す大舞台は四大陸とワールド。特に世界選手権は、ミラノ・コルティナダンペッツォ・オリンピックの出場枠がかかっているので、男女とも3枠を、そしてペアにも期待したい。