home in my shoes

   妻は寝ていた。珍しいことではない。疲れたんだろう。

   洗い物も洗濯物もそのままだけど、手際良く片付けた。仕事もそうだけど、段取りや動き方で効率はけっこう変わる。それと、決めた時間までにやりきる気持ちと。

   「何で俺が」は禁句にしようと思った。それから綻びができるから。

   なんで俺が、の「俺」のセコいプライドから、次に行こうじゃないの。これまでの自分をちょっと否定することなので、痛いことは痛いけど、ちょっと飽きたよね。

   

   どうなっていたいのか。

   快男児になりたいじゃないか。基本笑顔で、思いやりがあって、厄介なことから逃げずに、いつも勝てるわけじゃないけどベストを尽くす奴に。あいつとなら組んでみたいって、後で思い出してもそんなにイヤな印象のない奴に。

   会社勤めして25年ちょっと。自分なりにそんな奴にちょっと近づけたかなって、少しだけの自惚れとプライド。あぁ、でも会社勤めなんてそのうち終わるんだよ。そんなに先の話じゃなくなってきた。

   会社のみんな、取引先さんもみんな親切だけど、勤めが終わったら切れる関係でもある。ここでの自己実現は、そこで終わりの話じゃないんだ。

   退職したら妻との仲良くして・・・、なんて話でもないんだ。その時にどうなっているかなんて、わかんない。妻の方から出て行くことだって、ない話じゃないよ。実際。

   どんな場所でも、状況でも、なりたい自分になっていたいじゃない。簡単ではないけれど。

   だから、これまでの自分の改めるべきところから逃げずに、自分で自分にダメ出しして、変わっていかなくちゃ、独りよがりの屁理屈つくって、自分を丸め込まずに。

   だって、うまくいってないんだから。それが現実で、それは望まない現実だから。自分だけでどうにかなるもんでも、もちろんないけれど、自分が少しでも変えられるのは自分くらいしかないから。

   やってみよう。新しい遊びだ。冒険なんだ。いいトシして、１6歳の頃みたいに自分の恥ずかしいところから挑戦を受けるなんて。

   あぁ、ずっと１6歳をぐるぐる繰り返してるのかも知れない。4回目の16歳をやってみようか。今度は20歳に手が届くように。

   妻のことでボヤかずに、もう少し明日の準備をしてから眠ろう。楽しい夢でも見られたらいいな。