「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第6部
蒼天剣・橙色録 7
晴奈の話、第310話。
「オレンジ」帰還報告。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
7.
殺刹峰、アジト。
「あー、えっとですねー、そのー……」
モノは無表情で、ペルシェの報告を聞いている。
「敵リーダーと思われる、『狐』さんにですねー、そのー」「ペルシェ君」
モノは表情を崩さず、淡々と尋ねてきた。
「まず、敵は倒したのか?」
「……いーえー」
「一人も?」
「……はーいー」
「全員に逃げられたのか?」
「……はーいー」
「なるほど。それで、こちらの方には被害が出たそうだが……」
そこでペルシェが顔を伏せ、非常に申し訳無さそうな態度を見せた。
「それがですねー、兵士さんの方なんですけどもー、2名死亡しちゃったらしいんですよー、薬が切れたらしくってー」
「ほう」
「それでー、あたしが追っかけてたリーダーさんなんですけどー、雷の術使いでー、あたしの術が効きにくかったんですよー。それで追い回してたらー、そのー、逃げられちゃったとー、そう言うわけなんですー」
「なるほど。ここで待っていたまえ。ドクターを呼んで、詳しい話を聞くことにしよう」
「……本当にー、そのー、すみませーん」
ペルシェは顔を伏せたまま、肩を震わせる。モノはため息をつき、ペルシェの肩に手を置いた。
「まあ、想定外の事態が起こり、それでも無事帰って来た。こちらには大きな被害も無い。大局的に何の問題も無い。
問題点を洗い出し、次に活かせ」
「……はーいー」
15分後、ペルシェはモノに連れられて来たオッドに改めて報告した。
「ふーん」
オッドは興味深そうな顔で、メモを取っている。
「まぁ、大体の原因は分かったわぁ」
「ほう」
「恐らくだけどねぇ、想定してた以上にダメージを受けたんでしょうねぇ、きっと」
「と言うと?」
「あの薬は筋力とか反応速度とか、そーゆーのパワーアップさせるしぃ、痛みとか疲労とか、そーゆーのも感じなくさせてるんだけどぉ、それでも殴られれば後々痛くなってくるしぃ、長時間動けば負担もかかる。体自体にはダメージ、蓄積されるのよぉ」
「ふむ。つまり感覚としてはまったく痛み、疲労は無いが、体の物理的、生理的限界はあるわけだな。となると撤退の機をつかみづらい――あまりいい薬では無いな」
モノの指摘に、オッドは唇を尖らせる。
「あらぁ、失礼ねぇ。ま、今回みたいに軽装で行かせるのは得策じゃないってコトねぇ。重さも感じないんだから、次はもっと重装備で行かせた方がいいわねぇ」
「なるほど。……となると、エンジェルタウンとソロンクリフに向かわせた『マゼンタ』と『バイオレット』が心配だな。彼らも『オレンジ』隊と同様、軽装だからな」
「そうねぇ。ま、今回は偵察と割り切って、帰ってくるのを待った方がいいかもねぇ」
「そうだな。最悪殲滅できずとも、よもや敗走することはあるまい。それに……」
「それに?」
オッドは何かを言いかけたモノに尋ねたが、モノは首を振った。
「……いや、何でもない。まあ、ペルシェ君からは以上だな」
モノはそう締めくくって、ペルシェからの帰還報告を聞き終えた。
「……? において、……? よって、……」
「何読んでんだ?」
請求や賠償を受けずに済んだため、バートたち三人は無事、宿に戻っていた。
「バートが持って来たノートやねんけど、全然読めへんねん。ウチ、央北語よー分からへん」
「オレもそんなに詳しくないけど、そんなに違いは無いはずだぜ。っつーか、お前普通に屋台で注文してメシ食ってたじゃねーか」
フェリオが突っ込むと、シリンは顔を赤くしてぼそっと答えた。
「……実を言うと、文字自体読めへんねん、あんまり。ご飯系は読めんねんけどな」
フェリオは小さくため息をつき、シリンの横に座る。
「そっか。ちょっと貸してみな」
「あい」
「『499・12・19
RS作戦 最終報告
報告者 T・D(大尉) 記録 C・R(中尉)』。
何だこりゃ?」
「おい」
ノートを読んでいたフェリオの後ろに、バートが立っていた。
「返せ」「あっ」
バートはフェリオからノートを引ったくり、自分のかばんにしまい込んだ。
「何するんスか」
「これは最重要機密だ。今は、まだ読むな。クロスセントラルで全員が集合した時、見せるつもりだ」
「……了解っス」
鋭い眼光を混じえて話すバートに、フェリオはうなずくしかなかった。
蒼天剣・橙色録 終
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「オレンジ」帰還報告。
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殺刹峰、アジト。
「あー、えっとですねー、そのー……」
モノは無表情で、ペルシェの報告を聞いている。
「敵リーダーと思われる、『狐』さんにですねー、そのー」「ペルシェ君」
モノは表情を崩さず、淡々と尋ねてきた。
「まず、敵は倒したのか?」
「……いーえー」
「一人も?」
「……はーいー」
「全員に逃げられたのか?」
「……はーいー」
「なるほど。それで、こちらの方には被害が出たそうだが……」
そこでペルシェが顔を伏せ、非常に申し訳無さそうな態度を見せた。
「それがですねー、兵士さんの方なんですけどもー、2名死亡しちゃったらしいんですよー、薬が切れたらしくってー」
「ほう」
「それでー、あたしが追っかけてたリーダーさんなんですけどー、雷の術使いでー、あたしの術が効きにくかったんですよー。それで追い回してたらー、そのー、逃げられちゃったとー、そう言うわけなんですー」
「なるほど。ここで待っていたまえ。ドクターを呼んで、詳しい話を聞くことにしよう」
「……本当にー、そのー、すみませーん」
ペルシェは顔を伏せたまま、肩を震わせる。モノはため息をつき、ペルシェの肩に手を置いた。
「まあ、想定外の事態が起こり、それでも無事帰って来た。こちらには大きな被害も無い。大局的に何の問題も無い。
問題点を洗い出し、次に活かせ」
「……はーいー」
15分後、ペルシェはモノに連れられて来たオッドに改めて報告した。
「ふーん」
オッドは興味深そうな顔で、メモを取っている。
「まぁ、大体の原因は分かったわぁ」
「ほう」
「恐らくだけどねぇ、想定してた以上にダメージを受けたんでしょうねぇ、きっと」
「と言うと?」
「あの薬は筋力とか反応速度とか、そーゆーのパワーアップさせるしぃ、痛みとか疲労とか、そーゆーのも感じなくさせてるんだけどぉ、それでも殴られれば後々痛くなってくるしぃ、長時間動けば負担もかかる。体自体にはダメージ、蓄積されるのよぉ」
「ふむ。つまり感覚としてはまったく痛み、疲労は無いが、体の物理的、生理的限界はあるわけだな。となると撤退の機をつかみづらい――あまりいい薬では無いな」
モノの指摘に、オッドは唇を尖らせる。
「あらぁ、失礼ねぇ。ま、今回みたいに軽装で行かせるのは得策じゃないってコトねぇ。重さも感じないんだから、次はもっと重装備で行かせた方がいいわねぇ」
「なるほど。……となると、エンジェルタウンとソロンクリフに向かわせた『マゼンタ』と『バイオレット』が心配だな。彼らも『オレンジ』隊と同様、軽装だからな」
「そうねぇ。ま、今回は偵察と割り切って、帰ってくるのを待った方がいいかもねぇ」
「そうだな。最悪殲滅できずとも、よもや敗走することはあるまい。それに……」
「それに?」
オッドは何かを言いかけたモノに尋ねたが、モノは首を振った。
「……いや、何でもない。まあ、ペルシェ君からは以上だな」
モノはそう締めくくって、ペルシェからの帰還報告を聞き終えた。
「……? において、……? よって、……」
「何読んでんだ?」
請求や賠償を受けずに済んだため、バートたち三人は無事、宿に戻っていた。
「バートが持って来たノートやねんけど、全然読めへんねん。ウチ、央北語よー分からへん」
「オレもそんなに詳しくないけど、そんなに違いは無いはずだぜ。っつーか、お前普通に屋台で注文してメシ食ってたじゃねーか」
フェリオが突っ込むと、シリンは顔を赤くしてぼそっと答えた。
「……実を言うと、文字自体読めへんねん、あんまり。ご飯系は読めんねんけどな」
フェリオは小さくため息をつき、シリンの横に座る。
「そっか。ちょっと貸してみな」
「あい」
「『499・12・19
RS作戦 最終報告
報告者 T・D(大尉) 記録 C・R(中尉)』。
何だこりゃ?」
「おい」
ノートを読んでいたフェリオの後ろに、バートが立っていた。
「返せ」「あっ」
バートはフェリオからノートを引ったくり、自分のかばんにしまい込んだ。
「何するんスか」
「これは最重要機密だ。今は、まだ読むな。クロスセントラルで全員が集合した時、見せるつもりだ」
「……了解っス」
鋭い眼光を混じえて話すバートに、フェリオはうなずくしかなかった。
蒼天剣・橙色録 終
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昨日の続き。
登場人物とクルマについて。
昨日もお伝えしたように、
登場人物の中にはクルマ関係の名前が付いた人がちょくちょく出てきます。
現在展開している第6部の主要登場人物も、
全員ではありませんが同様の名付け方をされています。
ただ今回、元ネタはクルマそのものではありません。
ある「縛り」を入れています。
元ネタが分かった方、コメントいただけると嬉しいです(*´∀`)
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登場人物とクルマについて。
昨日もお伝えしたように、
登場人物の中にはクルマ関係の名前が付いた人がちょくちょく出てきます。
現在展開している第6部の主要登場人物も、
全員ではありませんが同様の名付け方をされています。
ただ今回、元ネタはクルマそのものではありません。
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