「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第6部
蒼天剣・緑色録 3
晴奈の話、第338話。
素直じゃないない。
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3.
晴奈たちがイーストフィールドを目指し出発した後、フェリオとシリンは拘束と監視のため、カモフと同じ部屋で過ごしていた。
「なーなー、カモフ」
その間中、シリンはカモフに色々と質問をぶつけていた。
「何だよ」
「ホンマに誰にでもなれるん? 女の子とかも行ける?」
「ああ。今はあの赤毛の長耳女と賢者とか抜かしてる野郎に封印されてるけど、老若男女誰にでもなれる」
「へー。便利やなー」
素直に感心するシリンに、フェリオも同意する。
「確かにな。潜入捜査やモンタージュの時には役に立ちそうだ」
「ま、潜入は俺の得意技だよ。お前らの中にも、すんなり入ったしな」
「ウチ、全然気付かへんかったわー。すごいわー、ホンマ」
「……へへ」
べた褒めされればカモフも悪い気はしないらしく、口元を緩めている。
一方、シリンの関心が向けられないので、フェリオは面白くない。
「……ちぇ」
すねたフェリオを見て、シリンがニヤッとした。
「どしたん、フェリオ?」
「何でもねーよ」
「妬いた?」
「妬いてねー」
「えっへへー」
シリンは尻尾をピョコピョコさせながら、フェリオに抱きついた。
「な、何すんだよ」
「心配せんでも、ダーリンちゃんはウチのもんやでー」
「な、何だよ、それっ」
その様子を見ていたカモフが、椅子を揺らして笑い出した。
「はは、仲いーなぁ」
「……んだよ、茶化すなよ」
シリンに抱きしめられながら顔を真っ赤にするフェリオを見て、カモフはまた笑った。
一方、晴奈一行は――。
「大丈夫だろうか?」
「え?」
楢崎はクロスセントラルに残してきたシリンたちを心配し、周りに尋ねてみた。
「もし大挙して襲われたら……」「その心配はございませんわ」
楢崎の心配を、フォルナがにべもなく否定する。
「何故かな?」
フォルナの代わりに小鈴が答える。
「秘密組織が中央政府の直轄下で暴れてたら、秘密も何もあったもんじゃないじゃん。大丈夫、だいじょーぶ」
「ふむ、それもそうか」
「来るとしてもごく少数でしょうから、シリンが困るような数にはならないと思いますわ。わざわざそんなこと、あなたがご心配なさらなくてもよろしいかと」
「ああ、うんうん。余計な心配だったね、うん」
相変わらず、フォルナと楢崎の反りは合わないらしい。普段から距離を取っているし、たまに会話してもこんな風に、非常にぎこちない空気を生む。
(ねーねー晴奈)
小鈴が小声で尋ねてくる。
(何で瞬二さんとフォルナって、あんなに仲悪いの? 何かあった?)
(いや、私にも何故だか……?)
(ふーん)
と、晴奈たちの会話にモールが割り込んできた。
(多分だけどね、狐っ娘の方は筋肉の方を『説教してくるうざいおっさん』と思ってるね。
んで、筋肉は筋肉で狐っ娘のコトを『ワガママで苦労知らずなお嬢サマ』って思ってるんだよ、きっと)
(なーるほどねー)
(双方、そーゆーのが気に食わない『お年頃』なんだろうねぇ)
(ふむ……)
と、ここで晴奈はモールに向き直った。
「そう言えばモール殿、何故我々と同行を? これまでずっと、私たちの後をつけていたではないか。何故今回、姿を見せたのだ?」
「ん? ああ、いやね。私も殺刹峰に用事があるから、忍び込む時は同行させてもらおうかと思ったんだよね」
「ふむ。……はて? 今回カモフを運良く捕らえたことで、殺刹峰への道が拓けたわけで、……となると」
「うん?」
晴奈はけげんな顔をモールへ向ける。
「妙に首尾よく現れたものだな、と。今回の捕獲は成功しない可能性も、ひいては殺刹峰への道が見つからない可能性もあったのだが」
「そこはそれ、全張りってヤツだね。君らが行きそうな街でしれっと現れて、進捗状況を確かめていこうかなーって思ってたんだよね。そんで行く時になったら一緒に行こうと思ってたら、行き方が分かったって言うからね」
「ほう、なるほど」
このやり取りを聞いていた小鈴はクスクス笑っている。それを見たモールがジト目でにらんできた。
「何がおかしいね、小鈴」
「アハハ……、相変わらず素直じゃないなーと思って」
「ドコが?」
「ウエストポートからエンジェルタウンを通る道って、主要都市はソコだけじゃん。ソコから他の街道回ってたら超遠回りになるから、今あたしたちとこうやって同行できるわけないし、どー考えても晴奈の後追いかけてたってコトになるけど、ねー」
「……ふんっ。偶然だね、偶然! 偶然、晴奈たちのチームを追ってただけだね」
「そっかー。じゃ、偶然ってコトで」
「そう、偶然!」
モールはぷいと小鈴から顔を背けてしまう。
その様子を見て、今度は晴奈がクスっと笑った。
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素直じゃないない。
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3.
晴奈たちがイーストフィールドを目指し出発した後、フェリオとシリンは拘束と監視のため、カモフと同じ部屋で過ごしていた。
「なーなー、カモフ」
その間中、シリンはカモフに色々と質問をぶつけていた。
「何だよ」
「ホンマに誰にでもなれるん? 女の子とかも行ける?」
「ああ。今はあの赤毛の長耳女と賢者とか抜かしてる野郎に封印されてるけど、老若男女誰にでもなれる」
「へー。便利やなー」
素直に感心するシリンに、フェリオも同意する。
「確かにな。潜入捜査やモンタージュの時には役に立ちそうだ」
「ま、潜入は俺の得意技だよ。お前らの中にも、すんなり入ったしな」
「ウチ、全然気付かへんかったわー。すごいわー、ホンマ」
「……へへ」
べた褒めされればカモフも悪い気はしないらしく、口元を緩めている。
一方、シリンの関心が向けられないので、フェリオは面白くない。
「……ちぇ」
すねたフェリオを見て、シリンがニヤッとした。
「どしたん、フェリオ?」
「何でもねーよ」
「妬いた?」
「妬いてねー」
「えっへへー」
シリンは尻尾をピョコピョコさせながら、フェリオに抱きついた。
「な、何すんだよ」
「心配せんでも、ダーリンちゃんはウチのもんやでー」
「な、何だよ、それっ」
その様子を見ていたカモフが、椅子を揺らして笑い出した。
「はは、仲いーなぁ」
「……んだよ、茶化すなよ」
シリンに抱きしめられながら顔を真っ赤にするフェリオを見て、カモフはまた笑った。
一方、晴奈一行は――。
「大丈夫だろうか?」
「え?」
楢崎はクロスセントラルに残してきたシリンたちを心配し、周りに尋ねてみた。
「もし大挙して襲われたら……」「その心配はございませんわ」
楢崎の心配を、フォルナがにべもなく否定する。
「何故かな?」
フォルナの代わりに小鈴が答える。
「秘密組織が中央政府の直轄下で暴れてたら、秘密も何もあったもんじゃないじゃん。大丈夫、だいじょーぶ」
「ふむ、それもそうか」
「来るとしてもごく少数でしょうから、シリンが困るような数にはならないと思いますわ。わざわざそんなこと、あなたがご心配なさらなくてもよろしいかと」
「ああ、うんうん。余計な心配だったね、うん」
相変わらず、フォルナと楢崎の反りは合わないらしい。普段から距離を取っているし、たまに会話してもこんな風に、非常にぎこちない空気を生む。
(ねーねー晴奈)
小鈴が小声で尋ねてくる。
(何で瞬二さんとフォルナって、あんなに仲悪いの? 何かあった?)
(いや、私にも何故だか……?)
(ふーん)
と、晴奈たちの会話にモールが割り込んできた。
(多分だけどね、狐っ娘の方は筋肉の方を『説教してくるうざいおっさん』と思ってるね。
んで、筋肉は筋肉で狐っ娘のコトを『ワガママで苦労知らずなお嬢サマ』って思ってるんだよ、きっと)
(なーるほどねー)
(双方、そーゆーのが気に食わない『お年頃』なんだろうねぇ)
(ふむ……)
と、ここで晴奈はモールに向き直った。
「そう言えばモール殿、何故我々と同行を? これまでずっと、私たちの後をつけていたではないか。何故今回、姿を見せたのだ?」
「ん? ああ、いやね。私も殺刹峰に用事があるから、忍び込む時は同行させてもらおうかと思ったんだよね」
「ふむ。……はて? 今回カモフを運良く捕らえたことで、殺刹峰への道が拓けたわけで、……となると」
「うん?」
晴奈はけげんな顔をモールへ向ける。
「妙に首尾よく現れたものだな、と。今回の捕獲は成功しない可能性も、ひいては殺刹峰への道が見つからない可能性もあったのだが」
「そこはそれ、全張りってヤツだね。君らが行きそうな街でしれっと現れて、進捗状況を確かめていこうかなーって思ってたんだよね。そんで行く時になったら一緒に行こうと思ってたら、行き方が分かったって言うからね」
「ほう、なるほど」
このやり取りを聞いていた小鈴はクスクス笑っている。それを見たモールがジト目でにらんできた。
「何がおかしいね、小鈴」
「アハハ……、相変わらず素直じゃないなーと思って」
「ドコが?」
「ウエストポートからエンジェルタウンを通る道って、主要都市はソコだけじゃん。ソコから他の街道回ってたら超遠回りになるから、今あたしたちとこうやって同行できるわけないし、どー考えても晴奈の後追いかけてたってコトになるけど、ねー」
「……ふんっ。偶然だね、偶然! 偶然、晴奈たちのチームを追ってただけだね」
「そっかー。じゃ、偶然ってコトで」
「そう、偶然!」
モールはぷいと小鈴から顔を背けてしまう。
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