私は天才ピアニストだ。
音楽を波のように奏で、観客は思わずため息をついてしまう。
そんな私に、妬みと嫉妬を覚える人も、もちろんいる。
ーーそして今私は、その中の一人に、殺されかけているのだ。
「ザクッザクッ」
私は猿ぐつわをかまされ、手と足を縛られている。
そしてこの男は、木の根元のあたりに穴を掘っている・・・私を生き埋めにするつもりなのか。
突然、体が持ち上げられた。
そのままドーンと穴の中に放り込まれ、上から土をバッサバッサとかけられる。
「ゲホッ、 ゴホッ!」
もう生きる道は諦めよう。天才ピアニストは
天才ピアニストらしく、優雅に死を受け入れよう。
・・だが一つ、私には心残りがあった。
・・ピアノが弾きたい!
最後に一曲、弾きたかった・・・
そう思いながら、意識が遠のいていった。
ーーあれ?意識があるぞ。やった!生き返ったんだ!
うおーと声を出そうとしたが、それはできなかった。
わかるのに少々時間がかかったが、私は今、木の一部になっているらしい・・
木の根元に埋められたから、私を木が吸い上げて、こうして私も木の一部となったわけか。
嬉しいような嬉しくないような気持ちのまま、1週間ほど過ぎたある日。
何やらチェンソーのようなものを持った男が近づいてきて、あっという間に私を切ってしまった。
呆然としている私をトラックに乗せ、工場へ向かう。
その工場の看板には、「大山製紙工場」とかいてあった。
そうか、私は紙になるのか・・・
ーーそして私は、立派な紙になって工場から出てきた。
私はそのままある家に運ばれ、封を勢いよく開けられた。
「ねえママー!すごいいっぱいの紙!」
「そうね。それだけあれば、工作好きな春十も満足でしょう。」
これから、さぞかし酷い扱いを受けるんだろうと、私はビクビクした。
「ねえ、ママ、春十のピアノ、どこだっけ?」
「なんで?」
「ん・・なんかね・・突然頭に、ピアノ作りたい!って浮かんできたんだ。
お手本にしたいんだけど・・」
・・ピアノ!
ここ長らく聞いていない言葉だった。
そうだ!私はピアニスト!ピアノを弾きたい!!
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コメント
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ブラウスみたい(笑)
読み応えがありますね。
そして… 犯人は、その後春十は、色々気になっちゃいます^^