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エスプリに富んだ楽しいエッセイ
2003/01/15 20:31
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴェネツィア共和国の一千年の興亡を描いた大作「海の都の物語」に書ききれなかった、いわばこぼれ話を中心にしたエッセイ。塩野さんの本は読んでみたいが、「海の都の物語」や「ローマ人の物語」のような分厚い超大作はちょっと…という方に特にお薦め。
特におもしろかったのは、トルコのハレムの話(トルコはヴェネツィアの宿敵)。“官能的”の一言では片づけられない、ハレムの知られざる実態と、その中でしたたかに生き抜く女たちの姿が興味深い。これをテーマにした歴史小説があれば読んでみたいのだが。
世界最古の叙事詩「オデュッセイア」は、実は朝帰り亭主が女房に言い訳するための壮大なホラ話だった…という説もケッサク。軽い文体の中に、男性心理への深い洞察が潜んでいる。
アガサ・クリスティーが40歳の時の写真しか載せなかった…という話を皮切りに、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスが、長生きしたにもかかわらず、20代の若い時の彫像ばかり作らせ、しかも美化修正してしまった…という、容貌についての話にも大笑い。
などなど、読みやすい文章で気軽に楽しめるが、エスプリと人間洞察に富んだ、とてもおもしろいエッセイである。お試しあれ。
イタリアに来て読みたい一冊
2005/05/22 06:14
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:RinMusic - この投稿者のレビュー一覧を見る
ローマの中心と銘打たれているのはヴェネツィア広場である。広いローマの心臓を名乗るほどのヴェネツィア、残念ながら私はまだ訪れていないが、イタリアの長い歴史においてまさしく水平線上に雲一つない時代を謳歌し、地中海世界を庭としていたこともある。このエッセイはヴェネツィアの盛衰、むしろ斜陽の中にある種のノスタルジーを持って書かれているような印象をまず受ける。フィレンツェでメディチ家(ルネサンス期)の華ある歴史が、権謀と暗殺で塗られたものと知ったが、ヴェネツィアは諜報というのがどうやら大きなキーワードとなっているようだ。そして塩野女史も諜報員のごとく、このエッセイでオスマン帝国の後宮を生々しく描いている。
歴史を描く女流作家を挙げよと言われると、知るところだけでも五指に余る名前が浮かぶが、やはり塩野女史はその中でも異色であろう。女流作家は女を描きたがる。そして女の性を語りたがる。それはそれでよいことだが、歴史を表で動かしているのは常に男であり、男をうまく描けていない物語は、どことなく力と動きに乏しく、雄々しい臨場感に欠いてしまう。海は男のロマンである。塩野女史は男を描く歴史作家である。そして私たちは女史の作品をイタリアに来て読むべきだ。例えばコーヒーのこと、ワインのこと、城塞のこと、娼婦のこと、カトリックについて、ゲットーについて、イタリアの石畳を歩けばきっと共通体験することができる。このエッセイに限っては、『海の都の物語』と併せて読まれるべし。
読み応えのある蘊蓄に富んだエッセイ集 「イタリア!・・・なるほどイタリア!」と薫香が漂う
2023/09/03 20:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ローマ、ヴェネツィアなどのイタリア文化とそこに暮らした人々の思想や人生観などエッセー風にまとめられた短編が30話収められている。一話一話に「なるほど」と思わせるネタが山盛りであり、また各話最後には風刺的な落ちまでついていて愉しく読めた。司馬遼太郎先生の書き方、文体を彷彿とさせる。
内容で特に興味を惹かれたのは、中世には大きくて重く豪華なのが当たり前の書籍であったが、グーテンベルクによる印刷術登場以降、持ち運びに便利な文庫本が発明されていく過程である。その中ではやたらと過剰な飾りのついた中世の羽根文字が簡略化され、今日われわれが見慣れている「イタリック体」という文字が発明された件である。読みながら何度も「なるほど そういう歴史があったのか」と頷いた・
巻末の佐々淳行氏の解説も、もと警察官僚がお書きになった堅苦しさはなく、簡潔に内容がまとめられていて読み応えがあった。これだけでも本書の31章めを構成しそうに充実していた。
気軽にかつ読み応えあり
2002/07/21 10:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ベリ太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは出版社のPR誌に連載した30の随筆風の小編を、
1冊にまとめ上げたものである。
そのような性質上、興味を引く章から拾い読みも楽しい。
一般の読者が入りやすいように、
興味を引き付けるような出だしから始まる構成は巧みである。
そしてこの内容に入っていくとなるほどと思わせるもの、
初耳でそんなこともあったのかと驚かせること、
しかしながら、中身は専門家の分野に属することもあって、
しっかりと厚みがあって読み応えがある。
これは現代一般でイメージするエッセイではないだろう。
もちろん研究というものとも違う。
ふと思い出したのは江戸後期に流行した考証随筆の風がある。
意外なところに伝統を見出した思いだ。
イタリア
2019/11/25 20:29
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
読むだけで知的な良い女になれるような気がします。トルコのハーレムの話など、興味深い話しが盛沢山。読み応えがあります。
面白いとは思うけれど
2023/03/25 00:08
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近出た邦訳書でアルド・マヌツィオについて書かれた事は、この本で紹介されている。それなら同じ時代のヴェネツィアで活躍して、第2ラビ聖書やタルムードを出版したダニエル・ボンベルクも書いてほしいところだが、ユダヤ教に関心がない人には無理なのかもしれない。アルド・マヌツィオが現代の本の源流に位置するが、ボンベルクの仕事はヘブライ語の出版物の世界では原点といった意味合いがあるのに。
オスマン朝について書かれた内容は当時のヴェネツィアが仕入れた情報やイタリア語や英語の研究書に由来しているらしい。同じ新潮社から出たオスマン朝の研究者が書いた「ハレム」と固有名詞を含めて、随分違う。ハレムについて書かれた個所は「オリエンタリズム」そのものな視点のキリスト教徒が書いた興味本位な本が下敷きになっているのではないか。それこそオスマン朝独特な制度であるスルタンの兄弟殺しやイェニチェリもキリスト教的な視点から見れば異様な制度だろう。
読み返してみたいとは思わないのは第4次十字軍のようなヴェネツィア共和国のみが利益を得た悪名高い戦争を屁理屈をつけて「肯定」するし、第3次ポエニ戦争でのカルタゴの誇りを理解しようとしないからだ。著者は宗教者の狂信を批判するのに、相手の立場に立って物事を見ないのは矛盾しているとは思わないのだろうか?
イタリア遺聞 塩野七生
2017/11/09 17:00
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投稿者:英 - この投稿者のレビュー一覧を見る
35年前に書かれた本です。散文的に表されていて非常に読みやすく
また内容も肩のこらない会話調です。ざっーと読んでもイタリアにまつわる話が
数多くあり楽しく読了出来ます。雑学的ですが色々な意味で後で役に立つ本
でした。
怪しげな情報が満載?
2024/09/19 22:47
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じ版元の新潮選書で刊行されている小笠原弘幸の「ハレム」と読み比べると同じ対象を書いているのに全然違う。塩野七生のネタ元は「ハレム」に出て来る当時のイタリア人が書いた本か、それを下敷きにした英語かイタリア語の本なのだろうか?ヒュッレム・スルタンは「ロシア女という意味で、ロッサーナと呼ばれた」とある。これはヨーロッパ圏での通称だそうだ。考えようによっては新潮社は塩野七生の本なら中央公論社のような他社で刊行された本まで自社で刊行しているのに食い違う情報が満載の本を出したものだ。塩野七生の本を初めて読んだのが「イタリア遺聞」の単行本なので白けてしまう。「あらかじめ人工的に聾唖者にされた奴隷」についても先天的な人だったそうでスレイマン1世の頃は白人が宦官長だったとか。
第一、塩野七生はハレムの「由来」として「六世紀このかた、トルコのスルタンは、正式な結婚をしてはならないと決められていた。まだトルコ民族が小アジアの流謫の民であった時代、スルタンの妻が敵の捕虜になって以来」云々と書いている。塩野七生が中国史の本を読まないので?突厥の可汗はレビレート婚だった事は知らないとしても、どうしてこんな無茶苦茶な事を書くのだろうか?一夫一婦制が大前提のキリスト教徒かユダヤ教徒が書いた興味本位な本か、それを元にした通俗本あたりを鵜呑みにしているのだろうか?
「海の都の物語」でギリシャの火と火薬を混同していたので変なところを間違っていそうだ。
「第六話 ハレムのフランス女」は小笠原弘幸の「オスマン帝国」によると「これは根拠のない作り話」だそうだ。仰々しく書いた内容が実は「作り話」では困る。
ヴェネツィアのユダヤ人について実は知っているなら何故「海の都の物語」では書かないのだろう?この本で書かれているようにゲットーという言葉はヴェネツィア由来だから敢えて書かなかったのか?キリスト教徒のダニエル・ボンベルクがヴェネツィアでヘブライ語とアラム語でタルムードやユダヤ教徒のみならずキリスト教徒が「神の言葉」と向き合う為にラビ聖書を刊行していたのに。
「海の都の物語」同様、アルド・マヌーツィオが聖書を刊行した事は書かないのでアルド出版社ではギリシャ・ローマの古典か「俗語」で書かれた当時のベストセラーしか刊行しなかったように読めてしまう。七十人訳にはアルド版というのがあるんだけど。「読むことの歴史」には教皇ピウス4世が設立した印刷所でトリエント公会議が「公式に認められた印刷する任務を与えて」アルド出版社から人を「招いた」とあるし。塩野七生が「海の都の物語」で書いた第4次十字軍で「成功を収めた」ヴェネツィア共和国が地中海貿易を制する結果となった「投資」を賞賛するような常識外れな宗教観と矛盾しようが肝心な事を落としては意味がない。
ふぅ
2002/02/09 21:19
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投稿者:ぶーにゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1979年から3年間連載されたエッセイをまとめたもの。読みやすい、けれどもホネがある。読み終わった後「ふぅ」と言った。他の、知識を得ようと読んだ本とは、当然ながら確実に違う。さすが塩野さんです。塩野さんが後藤田正晴氏と対談した後、後藤田氏は秘書官を呼んで「すぐ本屋に行って塩野七生の本を全部買ってこい」と命じたというエピソード(佐々淳行氏の解説より)も納得できるし。