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わたしの感想がそのまま本書の中に
2024/01/24 22:07
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆな - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレ。
103ページ
税金を使ってでも社会のお荷物を合法的に閉じ込めて「劣等」な遺伝子を長期的安楽死に追いやるための施設
100ページ
F××××××××××××CK!!!
なーにがシンパシータワーだよと思いながら読み進めていたら、終盤に差し掛かった箇所にちゃーんと共感できる言葉が書いてある。
主役であるマキナサラだって本当はそう思ってる。だけど社会的に、特にサラのような影響力の高い人物はそういうことを口にしてはいけないのだ。なんて息苦しい。
83ページ
「私には分かるの。それについて一度でも口を開いたらきっと、言うべきじゃないことを言ってしまう。だから言わせないで。言うべきことじゃないことを私は言うことができない。誰も傷つけるべきじゃない。」
すべてが完璧ゆえにやや傲慢で傍若無人なマキナサラにまでこんなことを言わせる始末。
仕事でも日常でも、弱者や配慮すべき対象に苦しめられている人にはおすすめ。
序盤は生ぬるい社会の空気感に本を床に投げつけたくなるが、中盤に登場するマックスの言葉やマキナサラ(の心中)に首がもげるほど頷きたくなる。
この小説の読み方
2024/02/29 17:27
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第170回芥川賞受賞作。(2024年)
なんといっても、この作品の背景設定が秀逸である。
今ではほとんど記憶にも残っていない2021年に開催された東京オリンピック。その遠い記憶の中に、国立競技場の設計問題で一度は採用されかかったザハ・ハディド案があったことを逆手にとって、この作品では彼女の設計した国立競技場が建っているという設定である。
もうその時点で、作者九段理江さんの勝利といえるだろう。
さらに、「東京都同情塔」というタイトルの、韻のいい言葉の、それでいて不気味さは、実はこの塔が「新宿御苑に新しく立つ刑務所」の名称だというのだか、なんともいいしれない緊張感をもたらす近未来小説でもある。
これらの虚構の建物の間に立つのは、「東京都同情塔」の設計を行った女性建築家であるが、
彼女がこぼし続ける言葉は、これらの建造物に匹敵するような言葉の氾濫である。
溢れる続ける言葉の整理のために、彼女が親しくする美青年が必要だったようにも思えるし、この美青年こそ、今回の受賞作で話題となった生成AIの姿にも見える。
時に難解にも感じるこの作品ですが、芥川賞選考委員の「選評」を読んで、すっきり入ってきたのは川上弘美委員のこんな言葉だった。
「作者は正解をだしてほしいのではないからです。作者はたぶん、ただ、考えてほしいのです。作者と違う考えでもいいし、いっそのことまったく関係のないことを考えるのでもいい。でも、考えてみて、と」。
この言葉をたよりにしてこの小説を読むと、随分たすかるはずだ。
芥川賞受賞作品として久しぶりに面白いと思った
2024/03/07 16:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
言葉と現実とが乖離している現代社会、それはそれは昔から、そうであったかもしれない。多様性を認め合いながら共生することは、とても素晴らしいことに違いない。けれど、どのような異論も認められないほどの、圧倒的な破壊である。一市民が破棄に対してできることは、破壊後の新しい世界のルールを誰よりも早く覚えて、適応することしかない。犯罪者を不幸な生い立ち、環境下で過ごして犯罪を起こさざるを得なかった人々、ホモ・ミゼラビリスと呼び、良い移住空間施設「東京都同情塔」に収容する近未来で、頭の中の言葉と外の言葉が交錯する。
「シンパシータワートーキョウ」のある世界
2024/10/02 21:20
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレ
第170回芥川龍之介賞受賞作品、小説内にAIーbuiltの文章というのが登場するが、これは実際に ChatGPTをはじめとする生成AIが作成した文章が使用されているということを知ってびっくり、こういった作品も誕生しているのかびっくり、物語の世界は、あの中止されたザハ・ハディドの新国立競技場が建設され、コロナ禍の中、2020年にオリンピックを開催したアナザーワールドが舞台となっている。その競技場に隣接して建設された「シンパシータワートーキョウ」(東京同情塔)、これはなんと刑務所のことで、その環境はまるでタワーマンションでの生活そのもの(もちろん、住人は外へが出ていけないが、というか服役者は誰も外へ出ていきたくなくなる)、このタワーを発案した人は暗殺され、設計者はこの建造物を設計したことを後悔している、不思議な世界だが面白そうな世界
ザハ・ハディドの新国立競技場が建設された世界
2024/06/03 10:33
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第170回芥川龍之介賞受賞作品、小説内にAIーbuiltの文章というのが登場するが、これは実際に ChatGPTをはじめとする生成AIが作成した文章が使用されているということを知ってびっくり、こういった作品も誕生しているのかびっくり、物語の世界は、あの中止されたザハ・ハディドの新国立競技場が建設され、コロナ禍の中、2020年にオリンピックを開催したアナザーワールドが舞台となっている。その競技場に隣接して建設された「シンパシータワートーキョウ」(東京同情塔)、これはなんと刑務所のことで、その環境はまるでタワーマンションでの生活そのもの(もちろん、住人は外へが出ていけないが、というか服役者は誰も外へ出ていきたくなくなる)、このタワーを発案した人は暗殺され、設計者はこの建造物を設計したことを後悔している、不思議な世界だが面白そうな世界
仮想ではなく現実
2024/02/09 18:12
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
自信過剰な37歳の「建築家の女の人」である「牧名」が主人公。
ザハの国立競技場が存在し、AIがより発達し、カタカナ語が氾濫する近未来の東京を舞台にしたパラレルワールドの物語だが、未来小説・SF小説感はなく、むしろ現実のユートピアとディストピアを描いているような面白さがある。
生成AI、カタカナ語への置きかえ、多様性や平等主義の暴走への違和感がリズミカルに表現されている。書き出しの一文から良い。
感想がすんなり出てこないくらい、
2024/03/16 16:47
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投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の中に落とし込むことができず難しかった。だけれども、私の中にも検閲者がいることや赤の他人に傷つけられるくらいなら信頼されている誰かに傷つけられたいと思う気持ちとか、部分的には共感できることがあったから、九段さんてどんな人だろうと関心が湧いた。そしたら同い年やないの。距離がグッと縮まった。(勝手に)たくさん本を読む人なのだろうと思う。そうじゃないと、言葉ひとつ発する度にそこに含まれる意味を考えないと思う。そして、私たちが育った時代背景が影響を与えていると思う。
良いか悪いか
2024/02/01 01:39
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京に建設された、犯罪者を収容する施設。と言っても刑務所とは些か違うらしい。合わせてAIに因る文章や、片仮名文字に対する反抗なども盛り込まれている。これまでにない小説と評価は出来るが、村上春樹の文体に似ている気もする。これからの作品を読んでみないと……採点は難しい。
0.000001ミリの、ウルトラファインバブル搭載のシャワーヘッドから、言葉のシャワーを浴びせられた
2024/01/23 15:14
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投稿者:みつる - この投稿者のレビュー一覧を見る
読了後、新聞のインタビュー記事で
「言葉によって解決することをあきらめたくない」
と言う、作者の思いを知り、
この本の中に込められている、言葉のひとつひとつが
読者に対して、強く何かを訴えてきていると感じました。
建築家の牧名沙羅が、ドローイングに集中できずに、書き殴ったのは、建築案ではなく、言葉の数々だったこと
常に彼女が自らをコントロールしていると唱えているマントラ。
(コントロールできているかどうかは、ともかくとして)
また、機械と人間との対話や、人間は機械に答えを求めるようになってしまった現代。と言うのも、言葉を意識しての書き方だからなのかな。とも思えました。
芥川賞と名のつく元になった、芥川龍之介が
まさか、機械によって小説が書かれるようになるとは
思ってもいなかったでしょうが
それと同じく、刑務所を当たり前とし
毎日毎日、誰かの刑が確定し、刑務所に誰かが送られる今日
トーキョートドージョートーのような建物、システムが出来上がるのも、もしかしたら時間の問題かもしれません。
何故あなたは犯罪者ではないのか?
この問いをかけられた時
押川剛さんの
「「子供を殺してください」という親たち」と
宮口幸治さんの
「ケーキの切れない飛行少年たち」
の内容が思い出されました。
どちらも漫画でしか読んでいませんが
育った環境が良かったから、犯罪者にならなかっただけではないか。と言われれば、反論ができずにいました。
私に未来は見えないので、いつかこの塔のようなものができるかもしれませんし
復興支援にあてるべきだと言われていた、国立競技場の件も
大阪万博を取りやめたり、縮小して、能登地震の支援に
と言われれば、全て同じような道を辿っているのではないかとも思えてきます。
一文一文の力が強すぎて、読み終えた時には
脱力してしまいましたが
最初に作者のインタビューでの言葉を聞いた時に
本当に言葉の強さを知っているな。と感じました。
AIに手直ししてもらった部分もあるとのことですが
言葉の大切さと強さを知らなければ、書けない本だと感じました。
まさに0.000001ミリの、ウルトラファインバブル搭載のシャワーヘッドから、言葉のシャワーを浴びせられたようでした。
"「何が怖いんですか?塔内だろうが塔外だろうが、みんな同じ世界に生きる、同じ人間ですよ」"95頁
"ひとつ。言葉は、他者と自分を幸福にするためにのみ、使用しなければなりません。
ひとつ。他者も自分も幸福にしない言葉は、すべて忘れなければなりません。(中略)
幸福な場所を未来永劫守るために、不幸を招く言葉、ネガティブな言葉はすべて、お忘れください。"115〜116頁
東京にはもう「強い」建築は実現できないのか?
2024/01/19 07:54
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投稿者:kamosan - この投稿者のレビュー一覧を見る
世間はもう新国立のザハ案のことは忘れてしまっただろう。(当時と同じような論調で今度は万博の木造リングで藤本壮介さんが叩かれているようだが。)
2020年にオリンピックが強行され、ザハ案新国立が実現した東京を描いた作品。
作中の新国立はおそらくコンペ時パースのザハ案が最も美しかったプランで実現したようだ。
最初のパースには首都高を超えるブリッジがザハ案にはあるが、同情塔とそれで新国立競技場が接続しているような描写がある。
ザハと対になり調和している超高層建築(71階建なので350mくらい?)と書かれてなんとなく外観、プロポーションが想像できるのは
やはりザハの強い形態、プロポーションのイメージのおかげだろう。
作中では用途(タワマン刑務所ユートピア)のせいで炎上するが、外観は非常に美しいと評判のようだ。
現実の東京の再開発超高層ビルはほとんどが大人しいデザインなので、
東京にも、主人公サラ・マキナ設計のような目立つ超高層ビルが作れないだろうか。
純文学というものを読み慣れていないので的はずれな意見なのかもしれないですが……
2024/01/25 23:54
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆー - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞で話題になってたので読んでみました。
芥川賞作品を読むのは初めてかも。
都心のド真ん中に豪華なタワマンをぶっ建てて、そこに犯罪者を住まわせる……っていう、スケールの大きな話がメイン。
……なんだけど、この作品では終始、その塔を設計する建築家の女の人、それとその女の人のお気に入りのイケメン君……の、内面の独白、みたいな感じで進行していく。
読んでいる時は、まるで彼、彼女達の思っている事がこの世の一大事みたいに感じられて、ハラハラしながら一気に読んでしまった。
けど……読み終えて、ひと呼吸して、思い直してみると、彼らの思っている事って、なんだか余りに感じ易すぎるというか……。
私のようなガサツな人間からすると、なんとも些末で、小さくて、物凄くどうでもいい問題なんじゃないの?
とかって思ってしまった。
話としては、設定としてはスケールが大きいだけに、なんだかその“小ささ”とか“どうでも良さ”が余計に目立ってしまったというか……。
建築家の女の葛藤にしても、終始、結局自分の中だけの話というか……。
別に社会がどうとか、影響がとか、犯罪者がとか、そうゆうのよりも、彼女は結局、自分の中だけでがんじがらめになってしまっているだけなのでは。
レイプって設定もちょっと安易だと思っちゃったかな。
かといって、葛藤しながらも前に進むとか、そういうんでもなく。
ポルノでも、メイクラブでもなく……要はマスターベーションて事なんですかね。
ミレニアル世代の若者をレッテル貼りしたみたいなイケメン君は……結局なんだかよくわからなかったかな。
言い方は悪いんだけどだいぶ前に流行ったセカイ系を連想しました。
本人達は凄くシリアスで、まるでこの世の一大事みたいな気分なんだけど……実際には何にも中身のある事言ってない……みたいなアレ。
もちろん、そんなに酷くはないですが。
とにかく、この人達は色々と考え過ぎじゃないんですかね。
シリアスに張り詰めすぎなんじゃないかと思います。
それとも、そうゆう思考停止が駄目なのかな?
けど、風にそよぐ木の葉にいちいち立ち止まってたら生きてけないしな……。
そうゆう事を、面と向かって、しっかりと考えるキッカケになるのが“文学”ってことなんですかね。
他人との比較とか。曖昧化させる横文字とか。言葉の話とか。考えてしまう部分も結構ありました。
生成AIだとか、言葉狩りだとか。SNS、ジェンダーフリー、多様性、なんちゃら事務所のアレ、パパ活、ママ活(今はそんなのもあるんだね)……とか、まぁどうでもいい、鬱陶しい話もあったけど。
……っていうか、色々と詰め込みすぎてて、ゴチャゴチャしちゃってる感はあるかも。結局、なんなんだ?っていう。
曖昧に終わってるから感想も曖昧になるのかも。
……とにかく、なんだか色々と引っかかる、ザラっとした小説でした。
まあまあ面白かったです。
新しい刑務所
2024/02/26 00:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
新しい刑務所が、つくられます。その名は「シンパシータワートーキョー」。建築家の牧名は、仕事と、個人的信条とのギャップに違和感アリアリのようすですが。読み終わり、なんだか、不思議な世界の物語でした。