巧すぎますよ、原田マハさん
2024/04/26 07:11
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
版画家・棟方志功は多くの人が知っている。
板に顔を押し付けるようにして彫るその姿、
癖の強い津軽弁、親しみのある丸い顔、そして、何より棟方を印象づけるこの言葉、
「わだはゴッホになる」。
そんな棟方が生み出した版画の数々。
『板上に咲く』は、原田マハさんの3年ぶりの長編アート小説。
棟方志功を描きつつ、なかなか売れなかった貧しい日々を共に暮らす
妻チヤとの夫婦の物語を巧みに織り成した作品。
巧すぎますよ、原田マハさん。
棟方志功は1903年青森で生まれた。
ゴッホの名画「ひまわり」に感銘を受け、生涯ゴッホの背中を追いかけることになる。
チヤと結婚したのは、1930年とあるから、棟方はまだ20代で
貧しい生活を送っていた頃。
その後版画で柳宗悦などに認められ、次々と大作を生み出していく。
棟方が亡くなるのは、1975年。72歳だった。
棟方ほどの業績がある芸術家をどのように描けば読者に伝わるか、
原田さんが選んだのは妻チヤからの視線だった。
棟方の手にした彫刻刀ではなく、
その夫のために毎日磨り続けたチヤの墨があればこそのアートの世界を
巧みに描いたといえる。
毎日のお米さえままならなかった貧しい生活も描かれていながら、
何故かこの物語には悲壮感がない。
棟方の明るさ、チエの思いやり、友人たちのあたたかさ、
それらが棟方志功という天才が生み出した作品を照らしたように、
このアート小説もまた、ひまわりのように天を向き、咲き誇ったといえる。
妻のチヤと夫のシコウ
2024/11/30 22:09
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投稿者:タカミー - この投稿者のレビュー一覧を見る
妻チヤから見た 人生の出来事。方言での会話が また味のあるものとなっていた。
読了後 昨年の棟方志功展 観に行くべきだったなぁと後悔。
板の上に顔がくっつくくらいの距離で猛烈に彫る映像が思い出され ゴッホに感化され自分も芸術家になるんだ という情熱が文章から伝わってきた。
チヤさんが疎開先から東京に戻って作品を疎開させたとあり、チヤさんが棟方志功の作品を信じて 惚れ込んでいたことがわかり、胸にくるものがあった。(創作をそばで見てたから余計に命と同じくらい大事だって感じたのだろうな)
以前 私自身荻窪に住んでて”いづみ工芸店”という民芸品のお店があり その店主が戦後荻窪に呼んだ事 何度か行った駒場の日本民芸館の最初の買い取り作品だった事など色々知る事ができて、志功さんの作品を観る目が変わりそうだ。
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投稿者:302 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みはじめてすぐ引き込まれ、一気読み!
感動した。
こんなにも自分を疑わず真っ直ぐな人は居ないんじゃないかと思うし、妻のチヤさんがそれを上回る真っ直ぐさで驚く。
そしてそれが報われるものだなぁと。
棟方志功の名前と作品の一部はなんとなくイメージできるが、この本を読んで見たくなった。
ゴッホとその周辺
2024/05/26 12:47
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投稿者:はぐらうり - この投稿者のレビュー一覧を見る
原田さんの、ゴッホとその周辺の物語がとてつもなく好きだ。今回は棟方志功の話。
いつも芸術への愛情を感じる。小説家としてはもちろん、キュレーターとしての愛情が多分に入ることで、唯一無二、読んだことのない小説になっている。
本作はオーディブルオリジナルだったということに驚いた。たしかにこの前後で読者に語りかける構成は、聴く読書に合う。読めるうちは活字を追いたいと思っているけれど、はじめて聴く読書もしてみたいと思った。
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界のmunakataを妻の視点であたたかく綴った一代記。一気によみました。何箇所か内容がダブり気味に進む所があって気にはなりましたが読みやすい一冊です。しかし原田マハさんのアートの小説として、もっと霊感を響かせてもらいたかったなと思います。
なお、本作では有名な棟方志功の「私はゴッホになる」という宣言を、「ワぁ、ゴッホになる」と書いていますが、記憶では「わだばゴッホになる」ではなかったかと。あるいは本作の方が発言・なまりとして正しいのでしょうか。
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感動した。感動した。読んでいてもう読み終わるのがとてもいやでした。もっと終わらずに読んでいたいと思いました。版画を彫るシーンは映像で見た事がありあんなに近くで彫る姿がとても印象的でした。疎開した時に版画を配送できなかった時、志功が妻チヤがいてくれるだけでいいと言うシーンはとても感動しました。この作品を読んで棟方志功の木版画をじっくり見て見たいとつくづくと思いました。あなたもこの感動作をじっくりと読んで見て下さい。
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マハ様〜(*´-`)♡
なんて素敵な物語なんでしょっ!!
ゴッホに憧れ
ゴッホの「ひまわり」に魅せられ
日本のゴッホになる事を夢みた棟方志功…
やがて…
“世界のムナカタ”と呼ばれる芸術家になるまでの物語_
物語の視点も
“我(わぁ),日本のゴッホになる!”と言い
美の世界に魅入られた棟方を
健気に支え続ける 妻のチヤさんの視点で
語られるのも素敵だったなぁ〜(*´-`)
棟方のそばで 40年以上…墨をすり続け…
世界の棟方になることを信じて
時には背中を押すような 芯の強い一面もあるチヤさん!
どこか懐かしい気持ちにさせられ…それでいて
温かくダイナミックで 観るものを圧倒する
棟方志功さんの作品の裏には…
一生支え続けた チヤさんの存在があったからなんですね!
読み終えて…
ふたりの絆や愛に 胸があつくなりました!
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昨年10月 棟方志功展に行った。 洋画 日本画はよく行くけど 版画は興味もなく 「棟方志功は目が悪く這いつくばる様にして作品を作る人」位の知識しかなかったけれど 実際の作品を見て 圧倒されたのを覚えてます。
原田マハさんの「板上に咲く」 もちろん小説ではあるけど、 史実や実際の作品に基づいてるので 棟方志功さんの人柄とか 妻のチヤの事 とても感動しました。原田マハさんのアート小説はさすがです。
読後 棟方志功展図録を見直したら お話に出てくる作品あれもこれも 実際見てて あーこの本を読んでから 展覧会行きたかったです。
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アート好きなら誰もが知ってる棟方志功の物語。
妻の視点で語られます。
すごく面白かったです!
読み物として面白い!
内容も史実にそったフィクションに仕上げられていて楽しめました。
そして戦争の愚かしさについても考えさせられました。
時代背景が今と異なるのでとても新鮮です。
男女の考え方も昭和って感じです。
でも、昭和の時代の中でここまで強く生きられる女性ってすごくカッコイイ!!
終盤、惚れた男のために戦火の中へ戻る姿に感動しました。
すごいなあ笑
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棟方志功、来たっ!!
…とはいえ、作品以外あまり知らなかったんだけど。
弱視で、板に齧り付くようにして彫ってるイメージのみで、気難しくて、とっつきにくい人のように思っていたけど、家族を愛し、人にも愛される、素敵な人なのだった。
とにかく、奥さんのチヤさんが凄い。
なぜこんなに深く、信じて、支え、愛せたのかな?
チヤさんはひまわり。
棟方という太陽をどこまでも追っていくひまわり。
日本のゴッホに成ろうとし、世界のムナカタになったのも凄いんだけど、家族の太陽でもあったんだろうな。
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棟方志功というと独特の作品と弱視だったということ位しか知らなかったけど、この一冊でぐっと身近な人物になった。
一番近くで「世界のMUNAKATA」が生まれるところを見ていた妻チヤの目線から描かれていたことが大きいと思う。
純朴さやひたむきさが、板に乗り移ったかのような作品達。文字を読んでいるだけなのに頭の中は彼の作品だらけになっていた。
装丁もイメージにピッタリ!タイトルや作者名も棟方作品から切り貼りして作られたそうだけど、よく文字が全てあったなと。私の名前だと作れないんじゃないだろうか。
日本民藝館、大原美術館…また作品を観に行きたくなってしまった。
(棟方志功記念館が今春で閉館していてショック!)
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憧れのゴッホを超えてその先へ__板画家棟方志功の半生を妻チヤの視点で描いたアート小説。チヤの献身的な姿に何度も胸を打たれました。そして、人生は"もしも"の連続だ。2人が出会わなかったら世界のムナカタは存在しなかっただろう。
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宗像志功は、人との出会いに恵まれていた。もちろん、それだけではなく、才能もあった。
誰もやらなかったことを成し遂げた宗像の日本人魂を尊敬する。
当時は油絵の方が世間で持て囃されていて、宗像の板画は格下に見られていた。そこで腐らず、どうやったら板画が認められるのかを考え、苦しみぬいた末に作品を完成させてしまう。
天才と言いたいところだが、彼は作品を生み出すのに毎回かなり苦心しており、何だか少し身近に感じられる。
芸術に全てを捧げるのかと思いきや、妻のチヤや子ども達を大事に思っているところも良い。
チヤが宗像の展示作品を観られないのは、仕方のないことだったかもしれないが、どうにか観てもらいたかった。
チヤにとって宗像は太陽、宗像にとってチヤはひまわり。明る過ぎる気もするが(笑)、何と素敵な夫婦ではないか。
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事実として知っていらっしゃる方も多いと思うので全部ネタバレで書きます。
棟方志功の妻となったチヤ子が語る棟方志功の生涯。
二人が出逢ったのは棟方とチヤの故郷の青森市。
チヤは18歳で看護師を目指していました。
棟方は17歳でゴッホの<ひまわり>を見てひと目で心を奪われ東京で青森の絵の仲間の家に居候しながら「日本のゴッホ」になりたいと言っていました。
チヤと棟方は弘前のデパートで再会し、棟方がその後新聞で公開ラブレターを送ります。
そして二人は結婚するのですが、東京へ戻った棟方はなかなか食べられず、チヤと長女のけようを呼び寄せてくれません。
ところが棟方はとある偶然から、
柳宗悦、濱田庄司、河井寛次郎の三人に認められ、太平洋戦争を経て「世界のムナカタ」になります。
ヴェネチア・ビエンナーレのグランプリ国際版画大賞を受賞しました。
日本のゴッホになる、とあの人は最初言いました。
だけど結局、あの人はゴッホにならなかった。
ゴッホを超えて、とうとう世界の「ムナカタ」になったんです。
「私はひまわり、あの人は太陽」。
棟方は四人の子どもたちとチヤ子のことをとても大切にしていた愛妻家でした。
若い頃二人が離れ離れに暮らしたのも棟方が妻子を大切に思うからこそでした。
チヤ子はチヤ子で棟方の為に、版画で使う墨を磨って、子どもたちに「お母さんは墨の匂い」と言われるほど。
相思相愛の素敵なカップルでした。
閑話休題
この本は出る前から私はとても楽しみにしていました。
というのも、私の母の実家に(母が産まれる前ですが)棟方は遊びにきたことがあるのです。
母の実家は東京の阿佐ヶ谷に二軒家を持っていて、隣の一軒を青森出身の人に貸していたそうです。
この本を読むと、その人物とは棟方の居候していた家の主人で、青森出身の松木満史ではないかと思われます。
そして、棟方が日展(帝展)に初入選した日、二人が「隣の奥さん親切だから御馳走してもらうべ」と言って訪ねてきて母の母(私の祖母)が御馳走すると、「ワァは、世界のムナカタになる」と言い、「奥さん紙をください」と言って何枚も墨絵を描いて残していってくれました。
そのうち何枚かは、私も家にあったので(母は上の姉二人を乳児の時に亡くした一人っ子です)実物を見たことがあります。
でも、その絵もうちに置いておくより棟方の好きな方にお譲りした方がいいということで売ってしまいました。
最後の一枚だったふくろうの墨絵の写真を私のXにポストしておきますのでよろしかったら御覧いただければ嬉しいです。(私のXには私の本棚からすぐ入れます)
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原田マハさんのアート小説。
今回は、板画画家 棟方志功。
ゴッホに憧れ、ゴッホをめざし、ゴッホが感嘆した版画で、
世界のムナカタになったーー
その人生を妻 チヤの視点でえがいた。
棟方もチヤも青森出身。
戦前の日本で、地方での暮らしでは情報もごくわずか。
そんななか、棟方は雑誌で紹介されたゴッホ「ひまわり」を見て、芸術の雷に打たれた。
当時、パリでもまだそこまで評価されていなかったゴッホを日本で取り上げていたというのに驚き!
芸樹の目利きの素晴らしさよ。
そしてこれが縁になっていくのもまた不思議なめぐり合わせ……
棟方は絵の才能もあったが、視力が弱く物を正確にとらえることが難しかった。
それが版画への道に進んでいくことにもなる。
心にわきあがったものを板に削れば手の感覚で、作品を見ることができる。
実直で温和な棟方は人を惹きつける魅力もあった。
彼のそれは作品にもあふれた。
彼を支援した柳宗悦らは「民藝の美」を提唱した。
ーー
民藝の美は、無心の美であり、自然の美であり、健康の美である。
それまで誰も注意を払うことのなかったごくふつうのものーーうつわ、台所用品、着物、かごやほうきに至るまでーーにこそ普遍的な美が宿っている。
ーー
棟方の作品は慈愛が満ちている。
彼の人柄が溢れ出ている。
弱視だからこそ、彼の心にみえるものを作り上げた。
読みながら作品名を検索しながら読んでいった。
スマホの小さな画面からでも感じる感動は、本物を目の前にしたら……
柔和で酒もタバコもやらない、子どもたちや奥さんを愛して、ただひたすら作品にうちこんだ棟方志功。
棟方の制作工程はチヤさんも覗くことはなく、物語であってもうかがい知ることはできない。
ここが拡がれば小説の感動もふくらんだだろう。
最後に載った参考文献の数々、取材協力の方々、原田マハさんは小説であっても忠実に「棟方志功」を語りたかったのだろうな……