筆者は,電動キックボードが危険であると何度も書いてきた。許可するのなら,逆に電動キックボードや自転車など,二輪の低速移動手段専用のレーンをクルマから切り離して確保するべきだとし,そのためには街路樹を撤去してでもレーンを確保すべきだと提案している。今のような車道脇のレーンは段差や障害物が多く,不安定な電動キックボードにとってはさらに危険だからだし,歩道走行を可能にしたとしても,歩道も段差が多くて歩行者との接触の危険があるからである。
オリンピック種目にもなったスケートボード。専用の練習場が整備されるなど,若い人のスポーツの1つの選択肢となり,世の中からも認められる形となりつつある。以前は,駅前広場や公園で練習する若者たちも多く見かけ,その音がうるさいのと,歩行者にとって危険な印象があった。スポーツとして認められた今でも手軽な練習場所があるわけではなく,駅前でもときどき見かける。だがそこは遊戯禁止場所として排除される。ローラースケート,ローラーブレードなども,専用の施設でなければ練習はできない。
一方で,直線方向への走行のみしかできず,自転車に近い移動手段として電動ではない「ただのキックボード」も存在する。電動キックボード同様,スケートボードにハンドルが付いた形で,主に子供用の遊具として販売されている。
この「ただのキックボード」の大人用の製品もわずかながら通販で販売されている。
筆者宅でも,子供にキックボードを買い与えていたが,遊具なので一般道路(公道)や歩道を走ることはできず,家の前の路地(私道)や公園で遊ばせるだけだったので,残念ながらそれほど使われなかった。体重も60kg制限があったので,大人が使うわけにもいかず,眠ったままになっている。
スケートボードやローラーブレードなど,いずれもタイヤの直径が小さく,樹脂製だったりゴムそのものだったりしてクッション性が低く,スプリングも入っていないので,普通の歩道程度の凸凹でも身体に相当響くし,不安定な面も多い。
しかし,上記の「ただのキックボード」はタイヤの直径が20cmほどと比較的大きく,歩道への段差さえ気を付ければ移動手段として便利に思えた。子供用のキックボードのブレーキが,後輪のカバーを足で踏みつけるという何とも原始的な方式なのに対して,この製品は加えて普通のブレーキも搭載しており,危険回避性にも優れている。
さらにユニークなのが,ペダルで足こぎができることである。正直,キックボードで移動している子供を見たとき,必死で足で地面を蹴って,ボードに乗ってもまた地面を蹴る動作を繰り返すという,なんともけたたましい乗り方をしなければならないのだが,このペダルがあると,安定して乗った状態で推進できる。移動手段としても優れていると感じている。
しかし,現実はこの「ただのキックボード」は「ただの遊具」としか認定されていない。自転車以上の「軽車両」であれば歩道を含めた公道を走ることはできるが,軽車両として認定されないので公道を走れない。つまり移動手段として使えない。
そういえば,同じ2輪で電動式の「セグウェイ」は,いまだに公道走行が認められていないらしい。同じように,電動式の移動手段はさまざま開発され,入手も可能な状態なのだが,やはり公道走行は認められていない。こうなると,電動キックボードの公道走行を解禁したところに何らかの裏取引があったのではないかと勘繰りたくなる。まあ,立ち位置が高く不安定なので,歩行者からすると圧があるし,体重移動による加減速という不確定要素があり,ブレーキも装備していないから,車両とは認められないのだろう。セグウェイなどの「搭乗型移動支援ロボット」と「電動クルマ椅子」,「シニアカー」の区別も正直はっきりしない。
今回提案している「ただのキックボード」は,手動ブレーキもあるし,立ち位置も低い。スピードも出ない。電動キックボードは一般にゴムタイヤをはいているので乗り心地はある程度確保されているのに対し,「ただのキックボード」はタイヤは固めなので乗り心地は悪い点はガマンするとして,安全基準をクリアすれば自転車相当の移動手段として認定してもいいのではないかと思ったりする。後方に自転車のような赤点滅ランプを付け,前方に前照ランプを付け,場合によってはヘルメット着用も努力義務化して,移動用手段として認定してほしい。
折り畳み式自転車が重さ15kgほどになるのに対し,この「ただのキックボード」は7kgと軽い。携行袋に入れれば公共交通に乗るときの迷惑度も少ない。
いまだに公道を走れないスケートボードがオリンピック競技として認知され,公道を走れる電動キックボードが許可されているというのに,そのいいとこ取りをしている「ただのキックボード(+手動ブレーキ,ランプ)」が移動手段として認められないのは残念である。