人にはそれぞれ矜持がある。母は45歳にして大学生3人を抱えた未亡人になるなんて、思いもよらなかっただろうし、しかも、亡くなった旦那の家業を継ぐことになろうとは、考えてもいなかったであろう。
3年間は父の話題を母にすることはご法度だった。母から話題にする分には問題がないが、子供達が話題にすることは禁じられていた。それ程、母にとっては乗り越えることが困難なことであったともいえよう。
私でさえ、そうだったのだから。夏の暑い日に父は別の世界に旅立ってしまい、9月に大学のキャンパスに戻った時、クラスメート達が他愛なく笑い合っている姿に、異様な違和感を覚えたことを今でも思い出すことが出来る。
しかし、母は悲哀感も悲壮感も、一度でも漂わせたことはなかった。子供というフィルターを通しての母しか表現できないが、いつだって生命感に溢れ、正義感に燃え、松明をかざして群衆を導く、圧倒的なオーラを持っていた。
幼稚園生の頃か、小学生になっていたのか定かではないが、一度母に尋ねたことがある。「ママは魔法使いなの?」私は大まじめだった。一瞬、沈黙の時間が流れた。
「ううん。違うわよ。」
母は私の質問を笑い飛ばすでもなく、どうして、と聞き返すこともなく、真っすぐに受け止めて、真剣に答えてくれた。そのことが子供ながらに嬉しかったし、母は嘘を決してつかない、との思いが胸に刻まれたように思う。
そして、計画を急に変更することを酷く嫌うところがあった。だからこそ、計画は用意周到に立て、滅多なことでは変更しない。それなのに、対極的なことではあるが、瞬時に物事を決めてしまう潔さも併せ持っていた。
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