親友の訃報

昨夜、俺の友人が亡くなったと人づてに聞かされた。
死因は病死、病名は急性骨髄性白血病だそうだ。
急性骨髄性白血病は、骨髄芽球(白血球になる前の未熟な細胞)に異常が起こり、
がん化した細胞(白血病細胞)が主に骨髄で無制限に増える病気で、
手術後快方に向かっていたらしいが、感染症によって亡くなられたそうだ。

彼とは高校の部活からの付き合いで、俺は彼の結婚式の友人代表挨拶までした間柄だ。
高校在学中はもちろん、卒業し結婚してからもお互いの夫婦同士も仲良くやっていた。
しかし、彼ら夫婦が離婚し引っ越して携帯番号も変えてからは疎遠になっていた。

40代後半、俺がアルコール依存症で精神病院に入院する半年前ごろ、
ひょんなことから「高校部活の同期で飲もう」ということになり久々に彼と再会した。
会ってしまえば一瞬で気持ちは高校時代に戻ることが出来た。
そこで彼の新しい電話番号を聞くことができ、再び電話やメールを交わすようになった。
彼は教師という職業柄、うちの息子の高校受験の相談相手にもなってもらった。
しかし、俺がアルコール依存症の症状が現れ始めたころからまた連絡が途切れ始めた。
だから彼は俺がアルコール依存症、肝硬変、肝臓がんだということも知らなかった。
当時の俺は、酒を飲まない彼に対し、恥ずかしくてとてもそのことが言えなかったのだ。
そしてその時、俺のアルコール依存症の症状も悪化していたが当然それも言えなかった。

忘れてはいないが思い出すことが少なくなっていたところに突然の彼の訃報を受け、
同期で俺の知りうる番号に電話で訃報を告げながら時折涙がこみ上げて来た。

彼は自分に厳しく人に優しい人間だった。
彼ほどではないが俺も同類なので、高校在学中からそれを察知し何でも相談するよう促した。
部活の練習が終わりみんなが帰ってからも、不安な箇所を彼と2人で居残り練習をした。
「彼は人知れず我慢してしまうタイプなのでサポートしてあげてください」
と、彼の結婚式の俺の友人代表挨拶でも言ったほどだ。

彼は最初の結婚から十数年後に再婚したが、離婚から再婚までの間に心を病み休職していた。
そんなことがあったなんて、その飲み会があるまではちっとも知らなかった。
彼も俺と同じで、心の病気のことが恥ずかしくて言えなかったのだと思う。
辛くても苦しくても自分の中だけで吸収して消化しようとしていたのだろう。
彼らしいと言えば彼らしい。
精神疾患は、なってみた人でなければわからない病気なのである。

急な話で、彼の住所も勤め先も知らず、彼の再婚した奥さんにも会ったことが無い。
彼の電話番号しか知らない俺は、歯痒いが今の段階では他からの連絡を待つしかない。

もしも次の人生があるとするならば、「次はもっと楽に生きろよ」と彼に言ってあげたい。
ご冥福をお祈り申し上げます。


つづく。

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