戦争と平和の「昭和」 小泉今日子さんが朗読・音楽で伝えたいこと

小泉今日子さん=東京都渋谷区で2023年4月24日、北山夏帆撮影
小泉今日子さん=東京都渋谷区で2023年4月24日、北山夏帆撮影

 歌手、俳優、文筆家、プロデューサーなど多面的な活動で注目されてきた小泉今日子さん(57)。今月には、ライフワークとする朗読と音楽のステージ「マイ・ラスト・ソング」の全国ツアーが3年ぶりにスタートした。今回の舞台は日本や世界を取り巻く現状を踏まえ、戦争と平和を意識した内容となる。小泉さんが今、思うことは。

 「(日本で)戦争が起きて、終わったのも『昭和』なんだよ、ということを誰かが意識的に発信しておくべきかなという気がします。いい歌がいっぱいあるしね」

 ツアー開始直前の4月下旬、小泉さんはインタビューで、昭和歌謡を前面に出す今回の舞台に込める思いをこう語った。

 「マイ・ラスト・ソング」は、小泉さんが2008年から取り組む舞台だ。TBSの人気ドラマ「寺内貫太郎一家」(脚本・向田邦子ら)などを手掛けた演出家・プロデューサーで、作家としても活躍した久世光彦(くぜてるひこ)さん(1935~2006年)の同名エッセーをもとにしている。

 「末期(まつご)の刻(とき)、一曲だけ聴くことができるとしたら、どんな歌を選ぶか」をテーマに、久世さんが14年間にわたって雑誌で連載した約120編には、小学唱歌や昭和の流行歌が数多く登場する。歌にまつわるエピソードや思い出は、戦前、戦後の日本で時代の変化を見つめてきた久世さんらの息遣いや足跡を伝える。

 小泉さんはデビュー後間もない10代で久世さんに出会った。演技や文章の書き方の手ほどきを受け、恩師と慕ってきた。久世さんがつくるドラマには歌が欠かせず、「昭和」を描くことへのこだわりも感じてきた。特に、1981年に航空機事故で向田さんが亡くなった後の久世さんの作品について、小泉さんは「向田さんが残したかった(時代の)記憶とか、言葉とかを意識的に取り込もうとしたんだと思う」と言う。

 「(亡き)父もそうですが、久世さんは(終戦で)ずっと信じていたものを突然失った。どこを見上げたらよいのか分からない少年時代を経験した」

 小泉さんは「親から戦争体験を聞ける最後の世代」の使命として、経験した者だけが語ることのできる思いや言葉を「つなげていかないといけない」と考える。

 ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮の弾道ミサイル発射、そして日本の防衛費増額……。武力が幅を利かせる時代が再びやってきた。平成、令和と時が流れ、昭和が遠くなりつつある今こそ「平和を守らなくては」という思いを受け継ぎ、伝えたいと小泉さんは思う。

 今回の「マイ・ラスト・ソング」は13日のJ:COM北九州芸術劇場(北九州市小倉北区)など全国8カ所を回る。08年から続くロングラン作品をピアノの弾き語りで支えるのは、松江市を拠点にライブ活動をするシンガー・ソングライター、浜田真理子さん(58)だ。小泉さんと同世代で「最期の曲を考えることは、これからどう生きるか、人生を考えるきっかけにもなる」と話す。

枠にはまらないスタイルは変わらず

 小泉さんは新聞で書評を担当するなど読書家としても知られる。20年からはインターネットの音声配信「ポッドキャスト」で、独立系の書店や作家を訪ねる番組「ホントのコイズミさん」を続け、22年に書籍化した。今夏には、…

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