私たちの声が政治に届いていない。そんな民主主義への絶望が世の中を覆っている。
2025年で戦後80年。さび付いてしまった民主主義が力を取り戻す道はあるのか。
この記事では、次の内容を知ることができます。
・デジタル民主主義を実現する「リクリッド」の仕組み
・リクリッドを開発した企業のCEOの思い
・「1人1票」を疑う「クアドラティックボーティング」とは?
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オードリー・タン氏へのインタビュー
なぜ今、民主主義なのか
民主主義は「テクノロジー」
日本でいま、最新のデジタル技術を生かし、民主主義を「アップデート」しようと試みる人々がいる。
民主主義も突き詰めればテクノロジーの一つ。カタチの見えない「民意」を探るためのツールだ――。そんな思想が背景にある。
取り組みの最前線に立つ一人が、栗本拓幸(ひろゆき)さん(25)。設立から5年弱のスタートアップ企業「Liquitous(リキタス)」(横浜市)の代表取締役CEO(最高経営責任者)を務める。
リキタスは、自治体の施策について市民の意見を募る仕掛けを構築した。
その名は「Liqlid(リクリッド)」。リキタスの社員10人が構築したオンラインプラットフォームだ。
DXで市民参加を実現
リクリッドの仕組みはこうだ。
自治体が設定したテーマに対し、市民がさまざまな意見やアイデアを投稿する。市民は他の人の投稿を見ることができ、対話や議論につながっていく。
全体の意向を確認するため、投票を行う場合もある。
そうやって合意形成された民意に基づいた施策の実行が自治体には可能になる。
そこに魅力を感じる自治体は増えている。
千葉県木更津市は「新庁舎1階がどういう場所になってほしいですか」とリクリッドを通じて市民に聞き、東京都日野市は市営ドッグランの評価を募った。
導入するのは全国で約60自治体を数える。
近代の民主主義は、有権者の代表者となる政治家を選んで政治を委託する「間接民主主義」を主流とする。
広大な領土に住む膨大な国民の意見を一つ一つ拾い、それをまとめ、施策に反映するのは不可能。アナログな手法しか使えない時代には、それが常識だった。
リクリッドは、その壁をデジタルの力で突き破り、「直接民主主義」を実現するツール。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)で市民参加を実現したい」。それが栗本さんの志だ。
コロナ禍で潮目変わる
栗本さんの人生は、激動する社会・政治に大きく影響を受けてきた。
生を受けたのは1999…
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