恋愛・結婚

年収2000万円サラリーマンが妻子も家も仕事も捨てた…人生の真理に到達?

積み重なっていった価値観のズレと生きる世界の違い

「実は、若い頃から自分で商売をしたいという夢があったんです。それを実現したいと強く願うようになったんです。もちろん子供への責任がありますから、すぐにという話ではない。でも、子育ての目処がたったら会社を辞めたいと、人生設計を妻に話したんです。  でも、『会社辞めるなんてありえない』とか『あなたの馬鹿げた夢に家族を巻き込まないで』とけんもほろろに反対されました。加えて『あなたが商売をやっても絶対にうまくいかない』と、僕自身の否定もするようになったんです」  平行線を辿った話し合いで見えてきたのが、夫婦の間にある“価値観のズレ”だった。 「結婚した時は好きでしたし、一緒の未来を見つめていました。でも、彼女は専業主婦で、僕は社会に出て働いている。20年間の生き方の違いの中で、いつしか価値観が全く合わなくなっていたんです」  例えば、結婚記念日や給料日後などのタイミングで、田中さんは「そろそろ子供も大きくなってきたし、2人でご飯食べに行ったりしようよ」と誘っていた。夫婦2人の時間を楽しみたいと思っていたが、妻は子供優先。「子供を置いていくのはちょっと」と断るばかり。  はたまた、「子育てもひと段落しただろうから、好きなことを探して、仕事でもしてみたら?」と提案しても「まだ、手がかかるから働かない」の一点張り。仕事を楽しむ大人同士の会話を楽しみたい田中さんの希望は叶えられなかった。 「子どもの教育に関しても、ブランド私立を受験させたい。いい大学に入って、いい会社に入れれば、安定した幸せを手に入れられると保守的。自営業や独立は悪いことで、フリーランスという働き方はプー太郎としか思ってない。一事が万事そういう調子で、あなたは昭和の時代に生きているの?と聞きたくなるほど。  きっと、『時代は変わった』とうっすら感じていても、専業主婦をしていたら、どう太刀打ちすればいいのかわからないんだろうね。僕の両親とも折り合いが悪いし、これまで積み重ねてきた不協和音が浮き彫りになってしまったんです」  夫婦は、子供を育てるパートナーであり、父母という立場も持つ。だが、それ以前に、大人同士で一緒に未来を築き上げていこうとかつて誓った男と女である。その土台は土台として、結婚から何年経っても必要な立ち位置なのだろう。 「そうこうしている間に、僕が好きな人と出会っちゃったんです。しかも、夢を話したときに彼女は応援してくれた。僕個人としての夢や思いをないがしろにされ続けてきた時に、認めてくれる存在があるとそっちになびいちゃうよね」

体の相性……男女の仲はそれも大事だと痛感した

 実は田中さん、亜希子さんとの関係を妻に打ち明ける前に、バレそうになったことがあるという。カーナビの履歴を消し忘れたことが原因だが、その浮気を疑われた時に、妻は「私だって恋愛がしたい」とつぶやいたという。その際、田中さんは「彼氏とか作ったら?」と提案した。しばらく経った後、「彼氏は見つかった?」と妻に聞いてみたところ、結局、子育てが忙しくて出会いすらないという返事が返ってきたそうだ。  気づけば夫婦の時間は4~5年持っていなかったと言う。オーラルでの前戯もしてもらったことはなく、「これをしてほしい」と要求をすることも、「あんなことをしてみたい」と願望を話し合ったりすることもできない関係だったと言う。 「やっぱり男と女においては、それってすごい大事じゃないですか。少し喧嘩をしたってすれば仲直りできるタイミングにもなる。それに、僕はなんでも楽しみたいタイプなんですよ。人生も楽しみたいし、だから男女のことも楽しみたい。つまらないベッドタイムは過ごしたくないじゃないですか」  この男女の行為も“価値観が違う”のだと、結婚20年経って気づいたそうだ。 「妻のことは今でも嫌いではないです。何か大きな欠点があるかといえば、それも見当たりません。真面目で、いい人だと思ってます。何が悪いとか、何かきっかけがあったとかじゃないんですよね。生活の積み重ねの中で、気づけば価値観が大きくずれていってしまった。そのことで同じ未来を描けなくなってしまったんです」  現在、副業として自分の商売を始めていると言う田中さん。この副業が本業と同等レベルに稼げるようになったら本業を辞めて離婚して、亜希子さんと再婚したいのだと語る。  夫婦の間に起こる不協和音。それは、日々の生活の中ではどうしても起こる。ちぐはぐが小さなうちにチューニングできていれば、再びしっくりいくだろう。でも20年も積み重ねてしまうと、ずれを合わせていくのは非常にしんどい作業になる。「今更調律するよりは…」と別の人生でリスタートを切る方が良いという結論になることもあるのかもしれない。
フリーライター。性風俗、女性問題、金融犯罪などを中心に執筆。未婚で1児を出産後、結婚。3児の母。愛人に走る女性をルポした『副業愛人』など著書多数。女性のお金や生活事情に関するルポ、詐欺事件を多く扱う。性とお金に対する欲望と向き合う人間をフィールドワークし、取材執筆を続けている。日本プロダクション協会の監事も勤めている
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