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短い話 (返事に困る話)


母親の通院や美容院のために 私が車を出す日がある

用事が終わると ベーカリーなどに寄って、家でのおやつにするための軽食を買って帰ることが多い

母親(80代後半)は、私の息子が通う大学のことや
実家を売却したらいくらになるだろうといった話をするし
決して「ここはどこ あなた誰?」の状態ではないのに
夫は10年前に亡くなっているという認識が 時々抜け落ちるらしい。

持ち帰りする食べ物を選ぶとき
「お父さんのは どれがいいかしらねえ」みたいなことを、父が生きてた頃と同じ口調で言うので
その度に 少し胸がつかえるような気持ちになり、返答に困る

「お父さんはもういないよ」と事実を言うのも冷たい気がして
それを口にするのは 父の暮らしていた気配を完全に消し去ることのように思えて、
私は「ごはんが入らなくなるから そんなに要らないんじゃないの?」と返すことしかできない。

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Author:raffine
活字が好きなアラフィフ主婦 家族は夫と息子とカメ🐢
近鉄線圏内在住
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