| Home |
2016.01.16
出会った頃のこと(前編)ー図書館となら、できること
「委員長、おはよう。これすごくよかった。またおもしろい本あったら教えて」
「同じ人が書いた短編集ちょうど持ってるよ。持ってく?」
「委員長、ごめん。こういうの好きじゃないの分かってるんだけど、どうしても渡してくれって頼まれて」
「部活の先輩? それは断りにくいね。うん、大丈夫、ちゃんと返事するから」
「委員長、また試食してくれる?今度こそ失敗してないと思うんだけど」
「うん、これなら。ラッピング? この前行った製菓材料店の近くにいいお店あるよ」
「委員長、昨日の委員会で会長にマジ切れしたって本当?」
「うそうそ。確かにちょっとやり合ったけど」
「委員長、助けて、今日のリーダー、超長いとこ当たりそうなの」
「そういう時は夕べのうちに電話しなって。ノート見る?」
始業のベルが鳴って、みんなが席に戻っていくと、いつものやり取りを見ていた隣のワタナベさんがため息をついて呟いた。
「委員長、あたし、あんたみたいな子、ほんとは苦手なんだけどさ」
「そこは『嫌い』でよくない?」
「そう、そういうとこ。毒混ぜたじゃれ合いできるの、あんただけなんだよね。この学校、いい子ばっかりでさ」
そう言っていつもの皮肉っぽい笑みを浮かべる。それが同じ歳と思えないくらいに似合っていて、お陰で私もあまり遠慮せず毒が吐ける。
「それは見る目がないね。案外曲者揃いだよ、ここ」
「あたしが興味あるのは、そういうあんたが、何でクラス委員なんて雑用係かってでているかってこと。何たくらんでんの?」
一枚かませろ、とでも言いたげに愉快そうに言う。もちろん返事は期待してないんだろう。
「精神修養?」
「死ねや」
ドアが開く音がして、ワタナベさんは視線を外して前に向き直った。私も座り直して背筋を伸ばす。
リーダーの先生が教室に入ってきた。
さあ、今日最初のお仕事だ。
「起立、礼、着席」
中学に入って最初のホームルームでクラス委員に指名された。
女子は私、男子は入学式で代表挨拶をしたあの子。
噂では入学試験主席の子が選ばれるというんだけど、担任に指名されたあの子は、見るからに影が薄くて、何も言わなかったけれど、どこか迷惑そうだった。
何というか、悪い予感は最初からあった。
基本的に人と話さない。人の輪に入ってこない。というより、気付くと教室にいない。居るときは、机に突っ伏して寝ているか、何か読んでいて、話しかけても気付かない。
学校はいろんな人が来るところだから、人付き合いが苦手だとか面倒だというのもありだとは思う。けれど、クラス委員の仕事となると、やっぱり問題あって、実際のところホームルームの議事進行、クラス行事の企画運営、担任とのやり取りなんかは私が全部やることになった。委員二人で、ホームルームだと議事進行と書記役、運営だとリーダーと補佐を交代していくのが普通のやり方だったけど、あの子は必ず口を開かなくてよい方や前に出ないでよい方に回った。やる気の無さは誰の目にも明らかだった。
「なんだ、こいつ」と思ったけど、本人に詰め寄るのも面倒なので先延ばしにしていた。正直にいうと、積極的に関わる意欲が沸かなかった。悪い言い方をすれば「いてもいなくてもどうでもいい奴」というカテゴリーに入れていた。
それに、クラス委員だからと先生たちから非正規に振られる雑用は、その都度、目についたクラスメイトにどんどん頼んで、手伝ってもらった。普段からよく見ていると、どの子にどんなことならやってもらえそうか、自然と分かってくる。引き受けてもらえば、普段交流のない子とも話をする機会ができる。委員二人の内一人が「消えて」いるのは、すぐにクラスの共通見解みたいになったので、大抵のクラスメイトは苦笑いしながらも頼みごとに応じてくれた。
あの子のことを思い出したのは、ある日のお昼休みだった。
その頃になると、週に何日かは教室ではなく、ワタナベさんと食堂で食べることにしていた。
「あたしといると人払いになるからね」
ワタナベさんは笑って自分のランチボックスを開いてこっちに向ける。
「また、そういうこと言う」
私は怒ってみせながら、一番おいしそうな卵焼きをつまむ。楽しみにしてる、おかず交換の儀。
「あー、気にしないで。わざとだから」
ワタナベさんは、私のお弁当箱からハンバーグを選んだ。口に入れてもぐもぐした後、顔をしかめる。
「だめ?」と思わず聞いてしまう。
「そうじゃない。……ひき肉から自作かよ。あんたはもう努力すんな。遺伝子にあぐらかいて左うちわで暮らせ。おかわり」
そう言ってワタナベさんはもう一切れさらっていく。
「ワタナベさんこそ、この卵焼き、新作だよね。ちょっとカレー粉入ってる」
「食べさすと表情くるくるの変わるが面白くてね。いろいろ冒険してんの」
「失敗に当たったことないけど」
「そういうのは親父と弟行き」
二人でひとしきり笑って、食事を続けていると、男子が一人近づいてきた。上履きの色からすると2年生。顔を覚えるのは少し自信があったけれど思い出せない。頭のスイッチを切り替え、仮説を3つ立て、2つを消去した。
「えーと、ひょっとして丸山先輩ですか? ごめんなさい。今、友人と食事中なんです。必ずお返事しますから、今はいいですか?」
「けんもほろろにやっちゃって。良かったの?」
とワタナベさんは少しも気にしてない風に言った。
「気分を害したのは認める。ちょっと大人気なかった」
私の方はまったく気にしてない訳じゃない。
「食事の時間は神聖って、あんた軍人さんか?」
「違うけど、こうしてる時間の方が大事なのは本当」
ワタナベさんは大げさにため息をついてみせた。
「あれ、今朝、押し付けられてた手紙の主?」
「そうみたい」
「あの先輩、泣きそうだったよ」
「まさか」
「前言撤回する。人払いはあんただった」
ワタナベさんは多分わざとさっきの話を蒸し返した。私はちょっとむっとする。おかげで少しの間自己嫌悪から解放される。私の表情が変わったのだろう、ワタナベさんはにやりと笑って、それを教えてくれた。こういうとこ、かなわないな。
「あんたがそういう話、嫌いなのはみんな知ってるからね。おかげであたしも無事でいられる」
「どういうこと?」話が飛んでない?
「あたしみたいなアウトカーストがハブられもせず、クラスで生きてられるのは、お弁当いっしょするくらいには、あんたのお気に入りだから」
「……」
「世界滅ぼしそうな顔すんな、消化に悪い。あー、あたしが悪かったから、そうだ、お詫びにひとつ愚痴でも聞いてあげよう」
「愚痴?」
「そこで不思議そうな顔されるとむかつく。なんかあるでしょ? そう、相方の幽霊クラス委員のこととか」
「ああ。結果的になんとかなってるから、半分忘れてた」
「やっぱり素でひどいね、あんた」
「男子の情報が入ってこないのは気になってるけどね。ホームルームみたいな表の場には出てこない流れをつかんでないと判断を誤る場合があるから」
「まあ、普段あれだけ女子に囲まれてたら、男子から情報取る暇ないか」
「それもあるけど、男子に話しかけると変に緊張されるんだよね。頼みごとは引き受けてもらえるんだけど」
「変に、って、あんたね」
「小学校の時は男子とももう少しうまくやれた気がするけど」
「ガキだったからよ」
「中学生だってガキでしょ?」
「色気づいたガキとそうじゃないガキ。天と地ほど違うわ。前から言おうと思ってたんだけどさ」
ワタナベさんはお箸を置いて腕を組み、こっちを見た。
「なあに?」
「あんた、小さい時、男の子とばっかり遊んでたでしょ?」
「……うん」
「それも結構大きくなるまで」
「小4まで、一人称『俺』でした。……実質、ガキ大将というか」
「昭和か!? あんたの近所は土管付き空き地完備の藤子空間か?」
「いろいろ限界感じて、小4でやめたんだけどね」
「ふーん。で、ジャイアンから出来杉君にジョブチェンジしたわけか」
「どんだけ藤子不二雄好きなの?」
私は苦笑した。混ぜっ返したつもりだったけど、ワタナベさんは乗ってこなかった。かわりに視線を外して、窓の方を見たまま言った。
「気をつけな。ままごと遊びをスルーしたあんたには、その辺の経験値欠けてるから」
ようやく何かが頭の中でつながった。いつものようで、どこか違う物言い。言葉の奥にあるもの。手を膝において、背筋を伸ばす。
「……ワタナベさん。何かあった?」
「何かって、何が?」
「いくら女の子に揉まれた経験がないからって、友達がひどい目にあったかどうかくらい分かる」
私の言葉に頭を振って、ワタナベさんは肩をすくめて、こちらを見た。
「迷わず直球かよ。……ああもう、分かったよ。個室から出てきたとこトイレで囲まれて『勘違いするな』とか、やられただけ」
「ちょっと、それ!」
「待った、最後まで聞け。『何のことか分からないけど、知り合いにこういうの大嫌いな子がいるから、今度聞いてみるわ』って言ったら、モーゼが海を分けるみたいにさっと引いたよ。勝手に名前使ったみたいで悪かったね」
「……誰が、とか、詳しく聞いても答えないんだね?」
「答えない」
「なんでワタナベさんがそんな目に遭わなきゃなんないの?」ー「何で、そんなこと」
「……それが分からないのは美徳だけどね。あんた、人に嫉妬したことないでしょ?」
「あるよ、もちろん」
「いま、こうして、あんたと差しでお昼してることを、羨ましく思ったり、『それもなんであんな奴が』と歯ぎしりしてる奴がいるなんて、想像の外でしょ? あ、そうそう。うちのクラスにもう一人、アウトカーストのくせにあんたとペアになってる奴がいるよね?」
事件は数日後の放課後に起こった。
その日は家の用事で学校を休んでいたのだけど、予定外に早く用事が済んだのと、次の日の委員会で使う作りかけの資料を教室に忘れていたので、着く頃には授業も終わってるだろうと思いながら、私は学校に向かったのだ。
最初から見ていたわけじゃないので事の経緯はわからなかったけど、私が教室に入ってきた時には、クラス委員の片割れであるあの子が、クラスメイトの4、5人に取り囲まれて激しく罵られていた。
遠巻きにそれを見ていたクラスの他の子たちが先に、その日休んでいたはずの私が入ってきたのに気づいた。
ちょっとまずいよといった囁き声が聞こえたけど、あの子を取り囲んでる人垣まで伝わるには少し時間がかかったようだった。
仕方なく私は声をかけた。
「ちょっと、なにやってるの!?」
輪を作っていた中の何人かが振り返り「やばい」という顔をした。
でも、気まずさとかバツの悪さを隠そうとしてか、その子たちから出たのは別の言葉だった。この、何もやらないクラス委員に意見してやってるんだ、とか、挙句の果てには、私のためにかわりに言ってやってるんだ、みたいなことを言い出した。遠巻きにしていた中にも、うなずいてる子が出てきた。
私は怒っていたと思う。
実際、お腹の中で何かが煮えたぎって喉から飛び出そうな気がしてた。
ワタナベさんのことがなければ(そして彼女の忠告がなければ)、人垣に飛び込んで2,3人窓から放り出したくなっていただろう。
ワタナベさんはジョブチェンジと言ってくれた。私は努めて頭を冷たくする。ガキ大将時代、負けん気とケンカ早さだけが売りだったけれど、あれから言葉と状況判断は磨いてきたはず。
「そう、わかった」
落ち着いて、そう言えた。届くところにあった机を軽く叩いて前に出る。響くほどじゃないけど、みんなは私を見た。私は大きく息を吸った。
「確かに!」
さあ、一気に言う。
「私も、そのクラス委員の片割れ君には言いたいことがあるけど、何をいつどこでどう言うかは、私の好きにさせてくれない? 私抜きの話なら、教育的指導だろうが袋たたきだろうがお好きにどうぞ。もちろんその場合は、クラス委員としての仕事をさせてもらうけど、どう?」
このクラスでこんな真似は、金輪際これっぽっちだって許すつもりはない、というつもりで、お腹で声を支えて言った。
視界の端に、目をそらして震えている女の子たちが写る。多分、彼女たちとはきちんと話をしないといけないけれど、今は放っておく。
囲んでいた一人ひとりの顔を見るまでもなかった。
一人離れ二人離れて、人垣がなくなると、その向こうに涼しい顔をして本から顔も上げない片割れ君がいた。これじゃ怒りに油を注ぐのも無理ない。
私だって、今まで吊るし上げられたこの子に同情心のひとつも沸かないでいる。
それでも、クラスのみんなは私を見ていた。この事態をどう処理するかを見ているのだ。今日ここで決着はつけないといけない。誰かに振るわけにもいかない。
私はそのまま近づいていって、指で机をトントンと叩き、あの子の顔を上げさせた。
「君と話がしたい。邪魔が入らなくて誤解の生じようのない場所がいいね。……生活指導の先生に言って指導面談室を借りよう。読書の時間を潰して悪いけど、ついてきて」
クラス中に聞こえるように言って、私は教室の出口に歩き出した。
事態をクラスの取り囲み有志一同から取り上げるために、「生活指導」「指導面談室」という言葉を出して、話を大事(おおごと)かつ公事(おおやけごと)にした。
次は、私に取り扱えるまで小さくする。
誰かに立ち会ってもらった方がいいのだけど、邪魔はされたくない。
生活指導部へは行かず、職員室で担任を呼び出した。
他の先生には聞こえないように低い声で「とうとうこんなことになりました」と、最初の指名に問題があった的なニュアンスを匂わせつつ、今あった事の顛末を簡単に伝えて、かぶせるように「どこか話ができる場所を借りれませんか」と言い添えた。多分、これでいけるはず。
担任は白衣のポケットの中に手でつっこみ、鍵を鳴らした。
「社会科準備室でいいか? あと30……25分か。職員会議があるから、それまでなら」
3人で会議室へ。部屋に入るなり、
「それで、まず二人で話したいんです。先生はそこにいてくれますか」
と言って、廊下側の席を指差した。
担任が腰を下ろしたのを見て、私たちは窓際の席を選んで座った。
さて、どこから始めようか。
「まず、何があったか聞いていい?」
「……ぼくの証言だけだと、一方的にならないか?」
少し呆れた顔であの子は言った。変なことを気にするなと思ったけど、こっちはあまり気に留めなかった。
「どのみち事は一方的だったように見えたけど。それに私が話をしたいのは君なの」
顔を覗き込むと、あの子は目をそらして窓の方を見た。視線はどこにも止まらず、記憶を巻き戻している感じだった。
「……最初は『ちょっと話がある』だったかな。誰が言ったかまで分からない。それが合図だったみたいで、あちこちからさっきの5人が机のまわりに集まってきて」
事前にそういう打ち合わせをしてたってことかな。×いつかこの手のことが起こるかもと思ってたけど、関心薄かったとはいえ、そういう動きに気づけなかった私もまだまだ甘い。
「うん、それで」
「最初は、委員長が……って、君のことだけど、クラス委員の仕事を委員以外の人間にやらすは何故だか分かるか、と聞いてきた。黙ってると、お前がそんなだから、って。それが口火になって、何考えてるんだ、とか、やめろとか、お前にやらすくらいなら、という子もいた。このあたりで君が戻ってきた」
「そう。委員の本業以外の雑用を振ってるつもりだったんだけど、そんな区別までしないか、普通」
「いや、あれは口実とか言い訳の類だと思う。ああなったのは、ぼくの態度が、あの子たちの神経を逆撫でしたせい。自分でも委員長らしくやれてるとは思わないし」
うなずくかわりに私は別のことを言った。
「委員らしくないのは仕方なくない? 一年生の一学期なんだし、正式に決められるようになるまでの暫定みたいなものでしょ?」
「……ところが、暫定で決められたうちの、僕じゃない方の委員は、もう何年もやってるみたいに辣腕を振るう、定冠詞をつけたくなるような委員長だった」
教科書を朗読するみたいな口調で、あの子は続けた。
「普通なら、影の薄いまま、次の委員が決まれば最初は誰だったかなんて、みんな忘れてくれたと思う。けど光が強すぎて、影も濃くなってしまった」
まったく。悪い予感は最初からあった。
不慣れで身の丈越えた役目を押し付けられて、フリーズしてすべてに逃げ腰になっているというなら、手の出しようがある。でも、これは違う。
「やっぱり、消えてるのは、わざとなんだ。で、理由も教えてもらえるの?」
「時間が惜しい」
即答だった。
「それだけ?」
「いけないか?」
「うん。そうやって総スカンくらって君が被る悪評と、犠牲になる学校生活すべての時間に比べれば、全然割にあわない。……だったら、最初から降りようとは思わなかったの?」
あの子は首を振った。
「学校が決めたことに逆らうのは労ばかりで益がない。抵抗したこともあるけど、成果は数日就任が遅れるのとクラスメイトの白眼視が強くなるくらいだった。批判はどっちにしろ甘受しなきゃならないなら、これが僕にとっては最短の手なんだ。……君には迷惑かけて悪いけど」
「そう、なんだ」
ゆっくりそう言って、私はあの子がこっちを見るのを待って続けた。
「正直……迷惑うんぬんはどうでもいい。今まで委員の仕事が負担だったことはないし、負担になっても切り抜ける手くらい、いくらだってある。そう、迷惑とか、できるできないの話だったら、ここまで腹立たない」
予感が的中して、私は大いに不機嫌だった。
「最初からいろいろ諦めてるみたいだけど、身を低くして何ヶ月か耐えさえしたら、後は周りがよろしく計らってくれるだろうって、あんた何様? 自分の評判って対価払ってるから、何やってもいいって思ってる? 事情とか理由があるなら、まずそれを説明するのが筋でしょう。それでどうなるかはその次の話。満足いかない結果なら、また次の手を打てばいい。どれだけ先が見通せるつもりなのか知らないけど、周囲の期待や理解が間違ってるからって、折り合いつけるためにあんたがしたことと言えば、どうせこんなもんだろうと周囲を見下して、決めつけて、どうしようもない選択肢しか残らないことに甘んじてるだけ」
「誰もが君みたいに、主張できたり意思を通したりできるわけじゃない!」
あんたに何が分かると言いそうになった。でも言わない。言うとしても今じゃない。
「もし……君が言うようなことが私にできるって思うなら、どうしてその力を自分のために使おうと思わないの?」
「何言ってる?これは僕の問題だ」
「自分ひとりで考えて自分ひとりで打てる最善の手のつもりだろうけど、それが悪手だって言ってるの!」
「大きなお世話だ! どっちが見下して決めつけてるんだ」
「別に君に何かしてあげたいわけじゃない。思考停止して石みたいにずっと変わらないルートに入ってるのに気づきもしない馬鹿にむかつくだけ。それに二束三文でたたき売られそうな君の学校生活が可哀想。もっと他の子に与えられてたら、どれだけ貴重な3年間になったかもしれないのに」
「何も、知らないくせに!」
「そうよ、知らないわ。だって君は誰にも何も教えてないじゃない」
「そこまで言うなら……教えてやる。来い」
私たちは立ち上がった。望むところだ。
言い合いが始まって、どのタイミングで割って入ろうか決めかねていた担任に、先制して声をかける。
「ちょっと、行ってきます。後で報告に上がりますから職員室に戻っていてください」
「い、行くってどこへ?」
私はあの子を振り返る。
「どこ?」
「図書館」
短く答えて、あの子は先に会議室を出ていった。
「だそうです。大声出さなくて済みそう」
と、にっこり担任に笑ってから、私も社会科準備室を出た。
早足で向かうあの子に追いつき、横に並んだ。
「そう言えば、教室からよく消えてるのは、いつも図書館へ行ってるの?」
「そう」
「一度行ったことあるわ。図書室じゃなくて図書館っていうから期待したけど」
「あれでもこのあたりの中高じゃ一番ましな蔵書なんだ。小さくてびっくりした?」
「そこまでじゃないけど、公立図書館に比べるとね。読みたいと思った本、探してなかったから。……何か一言ありそうね」
「そんなものはないけど。でも、小さいからできることもある」
「ん?どういうこと?」
「多分見せた方が早いと思う」
図書館は本校舎から中庭に出て奥に進んだ途中にある。
その前まで来て立ち止まり、あの子は私を振り返った。
「ここに何冊の本があるから知ってる?」
「知らない」
軽くてもため息をついて、あの子は続けた。
「ざっと6万冊。うち開架されてるのが4万、残りは書庫にある。市町村立の公立図書館だと蔵書数何十万冊というところも珍しくない」
「蔵書数だと及ぶべくもないのは、よくわかったわ」
「もっとも上下の差は大きくて市町村立の公立図書館の3割は5万冊未満の蔵書しか持たない。それともう一つ。新規に購入できる書籍の数はここの図書館で年間で1500冊、公立図書館でも平均で年間8500冊。一方、日本で一年間出版される書籍は8万点ある。新刊書が読みたいなら素直に書店に行くべき」
これは、さっきの私の「読みたいと思った本がなかった」を受けての発言だろう。むかつく。
「こっちだ」
私たちは入り口横のカウンターのまえをとおって、その奥にある検索ブースについた。
「座ってて。ちょっと取ってくる」
そう言ってさらに奥にある低い書棚から分厚い本を取ってきた。
「その本は?」
「『出版年鑑』目録・索引巻の去年の分。去年日本で出版された本が全て載ってる。どのページからでもいい、無作為に選んで」
「ん? 本のタイトルを言えってこと? ...じゃあ、『高校生のためのアドラー心理学入門』」
「ない」
「なに言ってるの?」
「コンピューターで検索できるから確認してくれていい」
私はキーボードを叩いてリターンキーを押した。検索。確かにない。でもさっきの話が本当なら、去年出版された書籍がこの図書館にあるのは1500÷80000なら2%を切る確率になる。ふん、割のいいギャンブルじゃないの。
「じゃあ、『南太平洋の剛腕投手』は?」
「それもない」
私は検索で確かめるふりをして、短いキーワードを入力し出てきたタイトルの一つを記憶した。
「だったら『南太平洋のサンゴ島を掘る』」
「ある。274.3。Dの島の2つ目の棚、一番下の段」
私はあの子を見た。あの子は私に背を向けて立っていた。手元は見てない、ということだろう。いいや、次だ。
「『世界を変えた100冊の本』」
「それは019.9。Aの島の2つ目の棚、一番上の段」
「『世界を変えた100の本の歴史図鑑』」
「そっちはない」
「……じゃあ、『倒立する塔の殺人』」
私がここで探して見つからなかった本だ。
「それはない」
「『第七官界彷徨』は?」
「そっちはある。913.6-オサ、Lの島の右から2つめ棚の上から二段目」
それは私が借りた本だった。
「『書記バートルビー/漂流船』」
これも見つからなかった本。
「それはないけど、叢書バベルの図書館に『代書人バートルビー 』って別訳がある。Lの島の右から1つめ棚、一番上の棚。908.3-バベ-9だ」
「ちょ、ちょっと待って。手品とかゴールドリーディングの類じゃないっていうのなら、君は……この図書館の本をぜんぶ覚えてることになるんだけど」
「まさか。開架書棚にある本のタイトルと著者名と図書分類コードを書き写しただけだ」
「......だけって、うそでしょ。どれだけかかるとおもってるの?」
「一冊あたり50文字だとすると600冊分写すと5万字、1分250字入力できるなら2時間かかる。4万冊あるから平日2時間、足りない分は土日に5時間つかって、結局2ヶ月かかった」
あの子はポケットの中から折りたたみ式のキーボードのようなもの(ポメラっていうらしい)をとり出し見せてくれた。
「参考図書の棚から始まってる。こっちは1000冊ぐらいだから目次も写した」
あの子はポメラと交換するように『出版年鑑』を受け取り、低い書棚の方ヘ歩き出した。私は追いかける。
「これが小さい図書館だから、できること? ……聞いていいんだよね。いったい何のため?」
「うーん……紙の辞書は使ったことある?」
「もちろん」
あの子は書棚の前で立ち止まり、私の方を向いた。
「ここが参考図書の棚。調べもののための本が揃ってる。辞書とか書誌つまりブックリストみたいなものだね。棚の背が低いのは、重い本が多いから机まで持っていかなくても、こんな風に棚の上で本を広げて使えるようするため」
あの子は『出版年鑑』を棚に戻すと、棚に沿って少し移動して、同じくらいの大きさの辞典を棚から取り出してきた。
「例えばこの『新社会学辞典』は1726ページある。真ん中のページは862ページと863ページだけど、ここに載ってる見出し〈せいちよ〉から〈せいとあ〉までで、項目だいうと《成長の限界》から《制度アプローチ》になる。どのあたりにどの項目が載っているのか、こういうのが体で分かっているのといないのとでは辞書を引く速さが変わってくる」
「それはなんとなく分かるけど」
「何冊かに分冊されてる大型の辞書ならなおさらだ。それに50音順やアルファベット順ならまだ検討もつけやすいけど、漢字だったら? 例えば、ここにある『大漢和辞書』は索引巻を除いても12分冊もある」
「えーと、だから索引があるんじゃないの?」
「そのとおり。一字に時間を掛けられるならそれでいいし、何の準備もなしに調べる必要が出てきた場合はそれで仕方がない。でも、たくさんの字を繰り返し調べるとしたら? そのための準備ができるとしたら? 例えば漢文で書かれた資料をたくさん読まなくてはならない人たちの間では、字を見て『大漢和辞書』のどの巻に載ってるか瞬時に判断できて自然にその巻に手が伸びるようでないと、漢文を読めるようにならないと言われてる」
そう話ながら、あの子は次々に『大漢和辞書』の4つの巻を取り出し、次々に棚の上で開いていった。それは、まるで自分の部屋のドアを開けるみたいに無造作に見えた。
思えば、人が辞書を引いているのを、じっと見ているなんて初めてだった。
あの子は不本意そうにちょっと顔をしかめて、ページを何枚かめくってから、私を手招きした。4冊の辞書には、並べると私の名前になる漢字のページが開いていた。
私は呆れていた。
「この辞典も写したのね」
「親字だけだけど。約5万字だから、1日2500字ずつ写して、こっちは20日間かかった」
「つまりこれと同じことを、この図書館相手にやったってこと? この場所を使い古した自分の辞書みたいにするために」
「これから毎日使うものだから、真っ先にやっておきたかった」
「一度書き写しただけで、覚えられるものなの?」
あの子は残念そうに首を振った。
「そんな記憶力があるなら別のやり方してる。ただ一度自分の体を通っているから、聞けばあるかないかくらいは分かる。どのあたりにあるかも、何となく思い出せて、足が自然に向かう程度でしかない」
時間が惜しい、といったのはこのことだったのか。
同じことが私にできるだろうか。
この子より時間がかかるだろうけど、本のタイトルを写すことならできるかもしれない。覚えきれるとは思えないけど、少しは記憶に残ったりするのかもしれない。
けれど、私にはできるとは思えなかった。やろうと思えないし、たとえ始めてもやり通せそうにない。他にできそうな人だって思いつかない。
あの子の話を聞きながら、私はもう一度、結局答えをもらえてない質問を考えた。
「いったい何のために?」
そう、そこだ。
何より私には無理だと思うのは、そのことに意味が見い出せないからだ。
この先この学校で(ひょっとするとその先のどこででも)、誰とも交わらず一人ぼっちで過ごすことに引き合う何が、図書館の本棚を書き写すことにあるんだろう?
不意に、昔読んだミステリーを思い出した。特に不自由のない軟禁生活から外の世界に出る自由を得るために、密かに生んだ自分の娘の命も、十何年かけて育てた時間も、平気で犠牲にしてしまえる女性の物語。トリックはたわいもないものだったけど、それを可能にする犠牲の大きさと、その大きさに頓着しない犯人の収支計算のひっくり返り加減に、クラクラしたのだ。
莫大な時間や円満な学校生活を犠牲にする代わりに、この子が手に入れるのは、たかだか図書館のどこにどんな本があるとか、どの項目が辞書のどこに載っているかがすぐに分かる、ということだけだ。
私が持つことのできる感想は、「私には理解できないけど、君にとっては何より大事なことなんだね」というくらいだった。
私はその言葉を飲み込んだ。
私にも、他人に理解されそうにない大切なことがある。
今思いついたのは、そんな私が一番聞きたくない言葉だと思った。
この子もきっと、時間をつぎ込み自分が打ち込んでいることが、そう言われる類のことだと知っている。
だから本当は、自分が何を何のためにやっているか説明するつもりなどなかったのだ。
「あとひとつだけいい?」
「なに?」
「指、見せて」
「え? ああ、まあ、いいけど」
あの子は両手を広げて、前に突き出した。
私はその十本を手にとってジロジロ見た。辞書引きタコがあるわけでもなくて、指紋が擦り切れて消えているわけでもない。
「普通だね」
「変なのは君だろ」
あの子はひったくるみたいに自分の手を取り返した。
「同じ人が書いた短編集ちょうど持ってるよ。持ってく?」
「委員長、ごめん。こういうの好きじゃないの分かってるんだけど、どうしても渡してくれって頼まれて」
「部活の先輩? それは断りにくいね。うん、大丈夫、ちゃんと返事するから」
「委員長、また試食してくれる?今度こそ失敗してないと思うんだけど」
「うん、これなら。ラッピング? この前行った製菓材料店の近くにいいお店あるよ」
「委員長、昨日の委員会で会長にマジ切れしたって本当?」
「うそうそ。確かにちょっとやり合ったけど」
「委員長、助けて、今日のリーダー、超長いとこ当たりそうなの」
「そういう時は夕べのうちに電話しなって。ノート見る?」
始業のベルが鳴って、みんなが席に戻っていくと、いつものやり取りを見ていた隣のワタナベさんがため息をついて呟いた。
「委員長、あたし、あんたみたいな子、ほんとは苦手なんだけどさ」
「そこは『嫌い』でよくない?」
「そう、そういうとこ。毒混ぜたじゃれ合いできるの、あんただけなんだよね。この学校、いい子ばっかりでさ」
そう言っていつもの皮肉っぽい笑みを浮かべる。それが同じ歳と思えないくらいに似合っていて、お陰で私もあまり遠慮せず毒が吐ける。
「それは見る目がないね。案外曲者揃いだよ、ここ」
「あたしが興味あるのは、そういうあんたが、何でクラス委員なんて雑用係かってでているかってこと。何たくらんでんの?」
一枚かませろ、とでも言いたげに愉快そうに言う。もちろん返事は期待してないんだろう。
「精神修養?」
「死ねや」
ドアが開く音がして、ワタナベさんは視線を外して前に向き直った。私も座り直して背筋を伸ばす。
リーダーの先生が教室に入ってきた。
さあ、今日最初のお仕事だ。
「起立、礼、着席」
中学に入って最初のホームルームでクラス委員に指名された。
女子は私、男子は入学式で代表挨拶をしたあの子。
噂では入学試験主席の子が選ばれるというんだけど、担任に指名されたあの子は、見るからに影が薄くて、何も言わなかったけれど、どこか迷惑そうだった。
何というか、悪い予感は最初からあった。
基本的に人と話さない。人の輪に入ってこない。というより、気付くと教室にいない。居るときは、机に突っ伏して寝ているか、何か読んでいて、話しかけても気付かない。
学校はいろんな人が来るところだから、人付き合いが苦手だとか面倒だというのもありだとは思う。けれど、クラス委員の仕事となると、やっぱり問題あって、実際のところホームルームの議事進行、クラス行事の企画運営、担任とのやり取りなんかは私が全部やることになった。委員二人で、ホームルームだと議事進行と書記役、運営だとリーダーと補佐を交代していくのが普通のやり方だったけど、あの子は必ず口を開かなくてよい方や前に出ないでよい方に回った。やる気の無さは誰の目にも明らかだった。
「なんだ、こいつ」と思ったけど、本人に詰め寄るのも面倒なので先延ばしにしていた。正直にいうと、積極的に関わる意欲が沸かなかった。悪い言い方をすれば「いてもいなくてもどうでもいい奴」というカテゴリーに入れていた。
それに、クラス委員だからと先生たちから非正規に振られる雑用は、その都度、目についたクラスメイトにどんどん頼んで、手伝ってもらった。普段からよく見ていると、どの子にどんなことならやってもらえそうか、自然と分かってくる。引き受けてもらえば、普段交流のない子とも話をする機会ができる。委員二人の内一人が「消えて」いるのは、すぐにクラスの共通見解みたいになったので、大抵のクラスメイトは苦笑いしながらも頼みごとに応じてくれた。
あの子のことを思い出したのは、ある日のお昼休みだった。
その頃になると、週に何日かは教室ではなく、ワタナベさんと食堂で食べることにしていた。
「あたしといると人払いになるからね」
ワタナベさんは笑って自分のランチボックスを開いてこっちに向ける。
「また、そういうこと言う」
私は怒ってみせながら、一番おいしそうな卵焼きをつまむ。楽しみにしてる、おかず交換の儀。
「あー、気にしないで。わざとだから」
ワタナベさんは、私のお弁当箱からハンバーグを選んだ。口に入れてもぐもぐした後、顔をしかめる。
「だめ?」と思わず聞いてしまう。
「そうじゃない。……ひき肉から自作かよ。あんたはもう努力すんな。遺伝子にあぐらかいて左うちわで暮らせ。おかわり」
そう言ってワタナベさんはもう一切れさらっていく。
「ワタナベさんこそ、この卵焼き、新作だよね。ちょっとカレー粉入ってる」
「食べさすと表情くるくるの変わるが面白くてね。いろいろ冒険してんの」
「失敗に当たったことないけど」
「そういうのは親父と弟行き」
二人でひとしきり笑って、食事を続けていると、男子が一人近づいてきた。上履きの色からすると2年生。顔を覚えるのは少し自信があったけれど思い出せない。頭のスイッチを切り替え、仮説を3つ立て、2つを消去した。
「えーと、ひょっとして丸山先輩ですか? ごめんなさい。今、友人と食事中なんです。必ずお返事しますから、今はいいですか?」
「けんもほろろにやっちゃって。良かったの?」
とワタナベさんは少しも気にしてない風に言った。
「気分を害したのは認める。ちょっと大人気なかった」
私の方はまったく気にしてない訳じゃない。
「食事の時間は神聖って、あんた軍人さんか?」
「違うけど、こうしてる時間の方が大事なのは本当」
ワタナベさんは大げさにため息をついてみせた。
「あれ、今朝、押し付けられてた手紙の主?」
「そうみたい」
「あの先輩、泣きそうだったよ」
「まさか」
「前言撤回する。人払いはあんただった」
ワタナベさんは多分わざとさっきの話を蒸し返した。私はちょっとむっとする。おかげで少しの間自己嫌悪から解放される。私の表情が変わったのだろう、ワタナベさんはにやりと笑って、それを教えてくれた。こういうとこ、かなわないな。
「あんたがそういう話、嫌いなのはみんな知ってるからね。おかげであたしも無事でいられる」
「どういうこと?」話が飛んでない?
「あたしみたいなアウトカーストがハブられもせず、クラスで生きてられるのは、お弁当いっしょするくらいには、あんたのお気に入りだから」
「……」
「世界滅ぼしそうな顔すんな、消化に悪い。あー、あたしが悪かったから、そうだ、お詫びにひとつ愚痴でも聞いてあげよう」
「愚痴?」
「そこで不思議そうな顔されるとむかつく。なんかあるでしょ? そう、相方の幽霊クラス委員のこととか」
「ああ。結果的になんとかなってるから、半分忘れてた」
「やっぱり素でひどいね、あんた」
「男子の情報が入ってこないのは気になってるけどね。ホームルームみたいな表の場には出てこない流れをつかんでないと判断を誤る場合があるから」
「まあ、普段あれだけ女子に囲まれてたら、男子から情報取る暇ないか」
「それもあるけど、男子に話しかけると変に緊張されるんだよね。頼みごとは引き受けてもらえるんだけど」
「変に、って、あんたね」
「小学校の時は男子とももう少しうまくやれた気がするけど」
「ガキだったからよ」
「中学生だってガキでしょ?」
「色気づいたガキとそうじゃないガキ。天と地ほど違うわ。前から言おうと思ってたんだけどさ」
ワタナベさんはお箸を置いて腕を組み、こっちを見た。
「なあに?」
「あんた、小さい時、男の子とばっかり遊んでたでしょ?」
「……うん」
「それも結構大きくなるまで」
「小4まで、一人称『俺』でした。……実質、ガキ大将というか」
「昭和か!? あんたの近所は土管付き空き地完備の藤子空間か?」
「いろいろ限界感じて、小4でやめたんだけどね」
「ふーん。で、ジャイアンから出来杉君にジョブチェンジしたわけか」
「どんだけ藤子不二雄好きなの?」
私は苦笑した。混ぜっ返したつもりだったけど、ワタナベさんは乗ってこなかった。かわりに視線を外して、窓の方を見たまま言った。
「気をつけな。ままごと遊びをスルーしたあんたには、その辺の経験値欠けてるから」
ようやく何かが頭の中でつながった。いつものようで、どこか違う物言い。言葉の奥にあるもの。手を膝において、背筋を伸ばす。
「……ワタナベさん。何かあった?」
「何かって、何が?」
「いくら女の子に揉まれた経験がないからって、友達がひどい目にあったかどうかくらい分かる」
私の言葉に頭を振って、ワタナベさんは肩をすくめて、こちらを見た。
「迷わず直球かよ。……ああもう、分かったよ。個室から出てきたとこトイレで囲まれて『勘違いするな』とか、やられただけ」
「ちょっと、それ!」
「待った、最後まで聞け。『何のことか分からないけど、知り合いにこういうの大嫌いな子がいるから、今度聞いてみるわ』って言ったら、モーゼが海を分けるみたいにさっと引いたよ。勝手に名前使ったみたいで悪かったね」
「……誰が、とか、詳しく聞いても答えないんだね?」
「答えない」
「なんでワタナベさんがそんな目に遭わなきゃなんないの?」ー「何で、そんなこと」
「……それが分からないのは美徳だけどね。あんた、人に嫉妬したことないでしょ?」
「あるよ、もちろん」
「いま、こうして、あんたと差しでお昼してることを、羨ましく思ったり、『それもなんであんな奴が』と歯ぎしりしてる奴がいるなんて、想像の外でしょ? あ、そうそう。うちのクラスにもう一人、アウトカーストのくせにあんたとペアになってる奴がいるよね?」
事件は数日後の放課後に起こった。
その日は家の用事で学校を休んでいたのだけど、予定外に早く用事が済んだのと、次の日の委員会で使う作りかけの資料を教室に忘れていたので、着く頃には授業も終わってるだろうと思いながら、私は学校に向かったのだ。
最初から見ていたわけじゃないので事の経緯はわからなかったけど、私が教室に入ってきた時には、クラス委員の片割れであるあの子が、クラスメイトの4、5人に取り囲まれて激しく罵られていた。
遠巻きにそれを見ていたクラスの他の子たちが先に、その日休んでいたはずの私が入ってきたのに気づいた。
ちょっとまずいよといった囁き声が聞こえたけど、あの子を取り囲んでる人垣まで伝わるには少し時間がかかったようだった。
仕方なく私は声をかけた。
「ちょっと、なにやってるの!?」
輪を作っていた中の何人かが振り返り「やばい」という顔をした。
でも、気まずさとかバツの悪さを隠そうとしてか、その子たちから出たのは別の言葉だった。この、何もやらないクラス委員に意見してやってるんだ、とか、挙句の果てには、私のためにかわりに言ってやってるんだ、みたいなことを言い出した。遠巻きにしていた中にも、うなずいてる子が出てきた。
私は怒っていたと思う。
実際、お腹の中で何かが煮えたぎって喉から飛び出そうな気がしてた。
ワタナベさんのことがなければ(そして彼女の忠告がなければ)、人垣に飛び込んで2,3人窓から放り出したくなっていただろう。
ワタナベさんはジョブチェンジと言ってくれた。私は努めて頭を冷たくする。ガキ大将時代、負けん気とケンカ早さだけが売りだったけれど、あれから言葉と状況判断は磨いてきたはず。
「そう、わかった」
落ち着いて、そう言えた。届くところにあった机を軽く叩いて前に出る。響くほどじゃないけど、みんなは私を見た。私は大きく息を吸った。
「確かに!」
さあ、一気に言う。
「私も、そのクラス委員の片割れ君には言いたいことがあるけど、何をいつどこでどう言うかは、私の好きにさせてくれない? 私抜きの話なら、教育的指導だろうが袋たたきだろうがお好きにどうぞ。もちろんその場合は、クラス委員としての仕事をさせてもらうけど、どう?」
このクラスでこんな真似は、金輪際これっぽっちだって許すつもりはない、というつもりで、お腹で声を支えて言った。
視界の端に、目をそらして震えている女の子たちが写る。多分、彼女たちとはきちんと話をしないといけないけれど、今は放っておく。
囲んでいた一人ひとりの顔を見るまでもなかった。
一人離れ二人離れて、人垣がなくなると、その向こうに涼しい顔をして本から顔も上げない片割れ君がいた。これじゃ怒りに油を注ぐのも無理ない。
私だって、今まで吊るし上げられたこの子に同情心のひとつも沸かないでいる。
それでも、クラスのみんなは私を見ていた。この事態をどう処理するかを見ているのだ。今日ここで決着はつけないといけない。誰かに振るわけにもいかない。
私はそのまま近づいていって、指で机をトントンと叩き、あの子の顔を上げさせた。
「君と話がしたい。邪魔が入らなくて誤解の生じようのない場所がいいね。……生活指導の先生に言って指導面談室を借りよう。読書の時間を潰して悪いけど、ついてきて」
クラス中に聞こえるように言って、私は教室の出口に歩き出した。
事態をクラスの取り囲み有志一同から取り上げるために、「生活指導」「指導面談室」という言葉を出して、話を大事(おおごと)かつ公事(おおやけごと)にした。
次は、私に取り扱えるまで小さくする。
誰かに立ち会ってもらった方がいいのだけど、邪魔はされたくない。
生活指導部へは行かず、職員室で担任を呼び出した。
他の先生には聞こえないように低い声で「とうとうこんなことになりました」と、最初の指名に問題があった的なニュアンスを匂わせつつ、今あった事の顛末を簡単に伝えて、かぶせるように「どこか話ができる場所を借りれませんか」と言い添えた。多分、これでいけるはず。
担任は白衣のポケットの中に手でつっこみ、鍵を鳴らした。
「社会科準備室でいいか? あと30……25分か。職員会議があるから、それまでなら」
3人で会議室へ。部屋に入るなり、
「それで、まず二人で話したいんです。先生はそこにいてくれますか」
と言って、廊下側の席を指差した。
担任が腰を下ろしたのを見て、私たちは窓際の席を選んで座った。
さて、どこから始めようか。
「まず、何があったか聞いていい?」
「……ぼくの証言だけだと、一方的にならないか?」
少し呆れた顔であの子は言った。変なことを気にするなと思ったけど、こっちはあまり気に留めなかった。
「どのみち事は一方的だったように見えたけど。それに私が話をしたいのは君なの」
顔を覗き込むと、あの子は目をそらして窓の方を見た。視線はどこにも止まらず、記憶を巻き戻している感じだった。
「……最初は『ちょっと話がある』だったかな。誰が言ったかまで分からない。それが合図だったみたいで、あちこちからさっきの5人が机のまわりに集まってきて」
事前にそういう打ち合わせをしてたってことかな。×いつかこの手のことが起こるかもと思ってたけど、関心薄かったとはいえ、そういう動きに気づけなかった私もまだまだ甘い。
「うん、それで」
「最初は、委員長が……って、君のことだけど、クラス委員の仕事を委員以外の人間にやらすは何故だか分かるか、と聞いてきた。黙ってると、お前がそんなだから、って。それが口火になって、何考えてるんだ、とか、やめろとか、お前にやらすくらいなら、という子もいた。このあたりで君が戻ってきた」
「そう。委員の本業以外の雑用を振ってるつもりだったんだけど、そんな区別までしないか、普通」
「いや、あれは口実とか言い訳の類だと思う。ああなったのは、ぼくの態度が、あの子たちの神経を逆撫でしたせい。自分でも委員長らしくやれてるとは思わないし」
うなずくかわりに私は別のことを言った。
「委員らしくないのは仕方なくない? 一年生の一学期なんだし、正式に決められるようになるまでの暫定みたいなものでしょ?」
「……ところが、暫定で決められたうちの、僕じゃない方の委員は、もう何年もやってるみたいに辣腕を振るう、定冠詞をつけたくなるような委員長だった」
教科書を朗読するみたいな口調で、あの子は続けた。
「普通なら、影の薄いまま、次の委員が決まれば最初は誰だったかなんて、みんな忘れてくれたと思う。けど光が強すぎて、影も濃くなってしまった」
まったく。悪い予感は最初からあった。
不慣れで身の丈越えた役目を押し付けられて、フリーズしてすべてに逃げ腰になっているというなら、手の出しようがある。でも、これは違う。
「やっぱり、消えてるのは、わざとなんだ。で、理由も教えてもらえるの?」
「時間が惜しい」
即答だった。
「それだけ?」
「いけないか?」
「うん。そうやって総スカンくらって君が被る悪評と、犠牲になる学校生活すべての時間に比べれば、全然割にあわない。……だったら、最初から降りようとは思わなかったの?」
あの子は首を振った。
「学校が決めたことに逆らうのは労ばかりで益がない。抵抗したこともあるけど、成果は数日就任が遅れるのとクラスメイトの白眼視が強くなるくらいだった。批判はどっちにしろ甘受しなきゃならないなら、これが僕にとっては最短の手なんだ。……君には迷惑かけて悪いけど」
「そう、なんだ」
ゆっくりそう言って、私はあの子がこっちを見るのを待って続けた。
「正直……迷惑うんぬんはどうでもいい。今まで委員の仕事が負担だったことはないし、負担になっても切り抜ける手くらい、いくらだってある。そう、迷惑とか、できるできないの話だったら、ここまで腹立たない」
予感が的中して、私は大いに不機嫌だった。
「最初からいろいろ諦めてるみたいだけど、身を低くして何ヶ月か耐えさえしたら、後は周りがよろしく計らってくれるだろうって、あんた何様? 自分の評判って対価払ってるから、何やってもいいって思ってる? 事情とか理由があるなら、まずそれを説明するのが筋でしょう。それでどうなるかはその次の話。満足いかない結果なら、また次の手を打てばいい。どれだけ先が見通せるつもりなのか知らないけど、周囲の期待や理解が間違ってるからって、折り合いつけるためにあんたがしたことと言えば、どうせこんなもんだろうと周囲を見下して、決めつけて、どうしようもない選択肢しか残らないことに甘んじてるだけ」
「誰もが君みたいに、主張できたり意思を通したりできるわけじゃない!」
あんたに何が分かると言いそうになった。でも言わない。言うとしても今じゃない。
「もし……君が言うようなことが私にできるって思うなら、どうしてその力を自分のために使おうと思わないの?」
「何言ってる?これは僕の問題だ」
「自分ひとりで考えて自分ひとりで打てる最善の手のつもりだろうけど、それが悪手だって言ってるの!」
「大きなお世話だ! どっちが見下して決めつけてるんだ」
「別に君に何かしてあげたいわけじゃない。思考停止して石みたいにずっと変わらないルートに入ってるのに気づきもしない馬鹿にむかつくだけ。それに二束三文でたたき売られそうな君の学校生活が可哀想。もっと他の子に与えられてたら、どれだけ貴重な3年間になったかもしれないのに」
「何も、知らないくせに!」
「そうよ、知らないわ。だって君は誰にも何も教えてないじゃない」
「そこまで言うなら……教えてやる。来い」
私たちは立ち上がった。望むところだ。
言い合いが始まって、どのタイミングで割って入ろうか決めかねていた担任に、先制して声をかける。
「ちょっと、行ってきます。後で報告に上がりますから職員室に戻っていてください」
「い、行くってどこへ?」
私はあの子を振り返る。
「どこ?」
「図書館」
短く答えて、あの子は先に会議室を出ていった。
「だそうです。大声出さなくて済みそう」
と、にっこり担任に笑ってから、私も社会科準備室を出た。
早足で向かうあの子に追いつき、横に並んだ。
「そう言えば、教室からよく消えてるのは、いつも図書館へ行ってるの?」
「そう」
「一度行ったことあるわ。図書室じゃなくて図書館っていうから期待したけど」
「あれでもこのあたりの中高じゃ一番ましな蔵書なんだ。小さくてびっくりした?」
「そこまでじゃないけど、公立図書館に比べるとね。読みたいと思った本、探してなかったから。……何か一言ありそうね」
「そんなものはないけど。でも、小さいからできることもある」
「ん?どういうこと?」
「多分見せた方が早いと思う」
図書館は本校舎から中庭に出て奥に進んだ途中にある。
その前まで来て立ち止まり、あの子は私を振り返った。
「ここに何冊の本があるから知ってる?」
「知らない」
軽くてもため息をついて、あの子は続けた。
「ざっと6万冊。うち開架されてるのが4万、残りは書庫にある。市町村立の公立図書館だと蔵書数何十万冊というところも珍しくない」
「蔵書数だと及ぶべくもないのは、よくわかったわ」
「もっとも上下の差は大きくて市町村立の公立図書館の3割は5万冊未満の蔵書しか持たない。それともう一つ。新規に購入できる書籍の数はここの図書館で年間で1500冊、公立図書館でも平均で年間8500冊。一方、日本で一年間出版される書籍は8万点ある。新刊書が読みたいなら素直に書店に行くべき」
これは、さっきの私の「読みたいと思った本がなかった」を受けての発言だろう。むかつく。
「こっちだ」
私たちは入り口横のカウンターのまえをとおって、その奥にある検索ブースについた。
「座ってて。ちょっと取ってくる」
そう言ってさらに奥にある低い書棚から分厚い本を取ってきた。
「その本は?」
「『出版年鑑』目録・索引巻の去年の分。去年日本で出版された本が全て載ってる。どのページからでもいい、無作為に選んで」
「ん? 本のタイトルを言えってこと? ...じゃあ、『高校生のためのアドラー心理学入門』」
「ない」
「なに言ってるの?」
「コンピューターで検索できるから確認してくれていい」
私はキーボードを叩いてリターンキーを押した。検索。確かにない。でもさっきの話が本当なら、去年出版された書籍がこの図書館にあるのは1500÷80000なら2%を切る確率になる。ふん、割のいいギャンブルじゃないの。
「じゃあ、『南太平洋の剛腕投手』は?」
「それもない」
私は検索で確かめるふりをして、短いキーワードを入力し出てきたタイトルの一つを記憶した。
「だったら『南太平洋のサンゴ島を掘る』」
「ある。274.3。Dの島の2つ目の棚、一番下の段」
私はあの子を見た。あの子は私に背を向けて立っていた。手元は見てない、ということだろう。いいや、次だ。
「『世界を変えた100冊の本』」
「それは019.9。Aの島の2つ目の棚、一番上の段」
「『世界を変えた100の本の歴史図鑑』」
「そっちはない」
「……じゃあ、『倒立する塔の殺人』」
私がここで探して見つからなかった本だ。
「それはない」
「『第七官界彷徨』は?」
「そっちはある。913.6-オサ、Lの島の右から2つめ棚の上から二段目」
それは私が借りた本だった。
「『書記バートルビー/漂流船』」
これも見つからなかった本。
「それはないけど、叢書バベルの図書館に『代書人バートルビー 』って別訳がある。Lの島の右から1つめ棚、一番上の棚。908.3-バベ-9だ」
「ちょ、ちょっと待って。手品とかゴールドリーディングの類じゃないっていうのなら、君は……この図書館の本をぜんぶ覚えてることになるんだけど」
「まさか。開架書棚にある本のタイトルと著者名と図書分類コードを書き写しただけだ」
「......だけって、うそでしょ。どれだけかかるとおもってるの?」
「一冊あたり50文字だとすると600冊分写すと5万字、1分250字入力できるなら2時間かかる。4万冊あるから平日2時間、足りない分は土日に5時間つかって、結局2ヶ月かかった」
あの子はポケットの中から折りたたみ式のキーボードのようなもの(ポメラっていうらしい)をとり出し見せてくれた。
「参考図書の棚から始まってる。こっちは1000冊ぐらいだから目次も写した」
あの子はポメラと交換するように『出版年鑑』を受け取り、低い書棚の方ヘ歩き出した。私は追いかける。
「これが小さい図書館だから、できること? ……聞いていいんだよね。いったい何のため?」
「うーん……紙の辞書は使ったことある?」
「もちろん」
あの子は書棚の前で立ち止まり、私の方を向いた。
「ここが参考図書の棚。調べもののための本が揃ってる。辞書とか書誌つまりブックリストみたいなものだね。棚の背が低いのは、重い本が多いから机まで持っていかなくても、こんな風に棚の上で本を広げて使えるようするため」
あの子は『出版年鑑』を棚に戻すと、棚に沿って少し移動して、同じくらいの大きさの辞典を棚から取り出してきた。
「例えばこの『新社会学辞典』は1726ページある。真ん中のページは862ページと863ページだけど、ここに載ってる見出し〈せいちよ〉から〈せいとあ〉までで、項目だいうと《成長の限界》から《制度アプローチ》になる。どのあたりにどの項目が載っているのか、こういうのが体で分かっているのといないのとでは辞書を引く速さが変わってくる」
「それはなんとなく分かるけど」
「何冊かに分冊されてる大型の辞書ならなおさらだ。それに50音順やアルファベット順ならまだ検討もつけやすいけど、漢字だったら? 例えば、ここにある『大漢和辞書』は索引巻を除いても12分冊もある」
「えーと、だから索引があるんじゃないの?」
「そのとおり。一字に時間を掛けられるならそれでいいし、何の準備もなしに調べる必要が出てきた場合はそれで仕方がない。でも、たくさんの字を繰り返し調べるとしたら? そのための準備ができるとしたら? 例えば漢文で書かれた資料をたくさん読まなくてはならない人たちの間では、字を見て『大漢和辞書』のどの巻に載ってるか瞬時に判断できて自然にその巻に手が伸びるようでないと、漢文を読めるようにならないと言われてる」
そう話ながら、あの子は次々に『大漢和辞書』の4つの巻を取り出し、次々に棚の上で開いていった。それは、まるで自分の部屋のドアを開けるみたいに無造作に見えた。
思えば、人が辞書を引いているのを、じっと見ているなんて初めてだった。
あの子は不本意そうにちょっと顔をしかめて、ページを何枚かめくってから、私を手招きした。4冊の辞書には、並べると私の名前になる漢字のページが開いていた。
私は呆れていた。
「この辞典も写したのね」
「親字だけだけど。約5万字だから、1日2500字ずつ写して、こっちは20日間かかった」
「つまりこれと同じことを、この図書館相手にやったってこと? この場所を使い古した自分の辞書みたいにするために」
「これから毎日使うものだから、真っ先にやっておきたかった」
「一度書き写しただけで、覚えられるものなの?」
あの子は残念そうに首を振った。
「そんな記憶力があるなら別のやり方してる。ただ一度自分の体を通っているから、聞けばあるかないかくらいは分かる。どのあたりにあるかも、何となく思い出せて、足が自然に向かう程度でしかない」
時間が惜しい、といったのはこのことだったのか。
同じことが私にできるだろうか。
この子より時間がかかるだろうけど、本のタイトルを写すことならできるかもしれない。覚えきれるとは思えないけど、少しは記憶に残ったりするのかもしれない。
けれど、私にはできるとは思えなかった。やろうと思えないし、たとえ始めてもやり通せそうにない。他にできそうな人だって思いつかない。
あの子の話を聞きながら、私はもう一度、結局答えをもらえてない質問を考えた。
「いったい何のために?」
そう、そこだ。
何より私には無理だと思うのは、そのことに意味が見い出せないからだ。
この先この学校で(ひょっとするとその先のどこででも)、誰とも交わらず一人ぼっちで過ごすことに引き合う何が、図書館の本棚を書き写すことにあるんだろう?
不意に、昔読んだミステリーを思い出した。特に不自由のない軟禁生活から外の世界に出る自由を得るために、密かに生んだ自分の娘の命も、十何年かけて育てた時間も、平気で犠牲にしてしまえる女性の物語。トリックはたわいもないものだったけど、それを可能にする犠牲の大きさと、その大きさに頓着しない犯人の収支計算のひっくり返り加減に、クラクラしたのだ。
莫大な時間や円満な学校生活を犠牲にする代わりに、この子が手に入れるのは、たかだか図書館のどこにどんな本があるとか、どの項目が辞書のどこに載っているかがすぐに分かる、ということだけだ。
私が持つことのできる感想は、「私には理解できないけど、君にとっては何より大事なことなんだね」というくらいだった。
私はその言葉を飲み込んだ。
私にも、他人に理解されそうにない大切なことがある。
今思いついたのは、そんな私が一番聞きたくない言葉だと思った。
この子もきっと、時間をつぎ込み自分が打ち込んでいることが、そう言われる類のことだと知っている。
だから本当は、自分が何を何のためにやっているか説明するつもりなどなかったのだ。
「あとひとつだけいい?」
「なに?」
「指、見せて」
「え? ああ、まあ、いいけど」
あの子は両手を広げて、前に突き出した。
私はその十本を手にとってジロジロ見た。辞書引きタコがあるわけでもなくて、指紋が擦り切れて消えているわけでもない。
「普通だね」
「変なのは君だろ」
あの子はひったくるみたいに自分の手を取り返した。
2016.01.02
一人で読めて大抵のことは載っている「講座」もの全リスト(増補あり)
「講座」もの、と呼ばれるシリーズ物の出版物がある。
シリーズ名に「○○講座」とか「講座××」と付いているのがそれだ。そう名乗らないものもある。
出版社によって、いくらか違いはあるが、ある時点での当該分野の研究成果を整理して示すことを目指した企画ものと考えてよい。
読み手の立場に立てば次のようになる。
「講座」ものとは、その分野で何が問題であり、何が分かっていて、どんな未解決の課題があるのか、その学問のコンテンツとコンテキストを、第一人者たちがざっくりと、しかし紙面の制限をあまり受けずに、紹介してくれている出版物だ。
はじめての分野に挑むなら、その分野について「講座」ものがないか、チェックすることをお勧めする。
以下の記事で紹介したself-containedな(必要なものはその中に全部書いてある)教科書は日本ではあまり出版されないが、その欠けているところを実質的にカバーしているのが「講座」ものだとすら言える。
一人で読めて大抵のことは載っている教科書(追記あり)
はてなブックマーク - 一人で読めて大抵のことは載っている教科書(追記あり) 読書猿Classic: between / beyond readers
一人で読めて大抵のことは載っている教科書(洋書編):数学からラテン語まで
はてなブックマーク - 一人で読めて大抵のことは載っている教科書(洋書編):数学からラテン語まで 読書猿Classic: between / beyond readers
辞典/事典が第1のレファレンス、書誌/文献目録が第2のレファレンスなら、self-containedな教科書と「講座」ものは第3のレファレンスだと言える。
一冊物の入門書や概説書よりも、情報豊かで詳しく説明している。
次に何を読めばよいかを示す文献案内や参考文献リストも充実している。
しかも大抵の図書館にあり、かなりの程度揃っている。
さらに言えば、参考図書の棚ではなく、「一般」の棚に置いてある。借りて帰ることができるのだ。
以下に、検索の便となるよう、「講座」ものを日本十進分類コードの順にリストにしてみた。
あまり古いものを挙げてもしょうがないので、原則的に1990年以降に出版されたものを、リストアップしたが、ものによってはそれ以前のものも拾った。
それぞれのシリーズについて、各巻のタイトルを表示するwebcat CiNii Booksのページへのリンクをつけた。
いわゆる「講座」ものでないものも、いくつか入っているが「はじめての分野に挑む」という目的には、同様に利用できると思う。
[0 総記]
[1 哲学] [2 歴史] [3 社会科学]
[4 自然科学] [5 工学] [6 産業]
[7 芸術] [8 言語] [9 文学]
0 総記
1 哲学
2 歴史
3 社会科学
4 自然科学
5 工学
6 産業
7 芸術
8 言語
9 文学
シリーズ名に「○○講座」とか「講座××」と付いているのがそれだ。そう名乗らないものもある。
出版社によって、いくらか違いはあるが、ある時点での当該分野の研究成果を整理して示すことを目指した企画ものと考えてよい。
読み手の立場に立てば次のようになる。
「講座」ものとは、その分野で何が問題であり、何が分かっていて、どんな未解決の課題があるのか、その学問のコンテンツとコンテキストを、第一人者たちがざっくりと、しかし紙面の制限をあまり受けずに、紹介してくれている出版物だ。
はじめての分野に挑むなら、その分野について「講座」ものがないか、チェックすることをお勧めする。
以下の記事で紹介したself-containedな(必要なものはその中に全部書いてある)教科書は日本ではあまり出版されないが、その欠けているところを実質的にカバーしているのが「講座」ものだとすら言える。
一人で読めて大抵のことは載っている教科書(追記あり)
はてなブックマーク - 一人で読めて大抵のことは載っている教科書(追記あり) 読書猿Classic: between / beyond readers
一人で読めて大抵のことは載っている教科書(洋書編):数学からラテン語まで
はてなブックマーク - 一人で読めて大抵のことは載っている教科書(洋書編):数学からラテン語まで 読書猿Classic: between / beyond readers
辞典/事典が第1のレファレンス、書誌/文献目録が第2のレファレンスなら、self-containedな教科書と「講座」ものは第3のレファレンスだと言える。
一冊物の入門書や概説書よりも、情報豊かで詳しく説明している。
次に何を読めばよいかを示す文献案内や参考文献リストも充実している。
しかも大抵の図書館にあり、かなりの程度揃っている。
さらに言えば、参考図書の棚ではなく、「一般」の棚に置いてある。借りて帰ることができるのだ。
以下に、検索の便となるよう、「講座」ものを日本十進分類コードの順にリストにしてみた。
あまり古いものを挙げてもしょうがないので、原則的に1990年以降に出版されたものを、リストアップしたが、ものによってはそれ以前のものも拾った。
それぞれのシリーズについて、各巻のタイトルを表示する
いわゆる「講座」ものでないものも、いくつか入っているが「はじめての分野に挑む」という目的には、同様に利用できると思う。
[0 総記]
[1 哲学] [2 歴史] [3 社会科学]
[4 自然科学] [5 工学] [6 産業]
[7 芸術] [8 言語] [9 文学]
0 総記
- 007.1 岩波講座情報科学 岩波書店, 1981
- 007.6 岩波講座ソフトウェア科学 岩波書店, 1988
- 007.08 岩波講座マルチメディア情報学 岩波書店, 1999
- 007.64 アルゴリズム・サイエンスシリーズ 共立出版 ,2006
- 010.8 講座図書館の理論と実際 雄山閣出版, 1990
- 010.8 新現代図書館学講座 東京書籍, 1998
- 010.8 ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望 学文社 2011-
- 010.8 講座・図書館情報学 ミネルヴァ書房 2013-
- 018 岩波講座転換期における人間 岩波書店, 1989-1990
- 041 シリーズ物語り論 東京大学出版会, 2007
- 070 講座現代ジャーナリズム 時事通信社 1973-1974
1 哲学
- 108 岩波講座現代思想 岩波書店, 1993
- 108 岩波講座哲学 岩波書店, 2008
- 120 岩波講座東洋思想 岩波書店, 1988-1990
- 121.08 岩波講座日本の思想 岩波書店 2013-2014
- 130.2 哲学の歴史 中央公論新社, 2007-2008
- 134 講座近・現代ドイツ哲学 理想社, 2004
- 140 シリーズ人間の発達 東京大学出版会, 1990
- 140.18 人間行動学講座 朝倉書店, 1996
- 140.7 質的心理学講座 東京大学出版会, 2008
- 140.8 朝倉実践心理学講座 朝倉書店, 2009-2010
- 140.8 朝倉心理学講座 朝倉書店, 2005-2008
- 140.8 応用心理学講座 福村出版, 1988-1994
- 141.5 岩波講座認知科学 岩波書店, 1994
- 143 講座生涯発達心理学 金子書房, 1995
- 146.08 講座臨床心理学 東京大学出版会, 2001-2002
- 146.8 講座心理療法 岩波書店, 2000-2001
- 160.8 岩波講座宗教と科学 岩波書店, 1992
- 160.8 岩波講座宗教 岩波書店, 2003
- 166.08 講座道教 雄山閣出版, 1999-2001
- 170.8 講座神道 桜楓社, 1991
- 180.2 講座仏教の受容と変容 佼成出版社, 1991
- 181.6 構造倫理講座 春秋社, 2005
- 191.7 「講座」現代キリスト教倫理 日本基督教団出版局, 1999
2 歴史
- 201 講座比較文明 朝倉書店, 1999
- 208 講座文明と環境 朝倉書店, 1995
- 208 シリーズ世界史への問い 岩波書店, 1989
- 209 世界歴史大系 山川出版社, 1990-2007
- 209 講座世界史 東京大学出版会, 1995
- 209 岩波講座世界歴史 岩波書店, 1997
- 209.4 中世史講座 学生社, 1982-1996
- 209.7 講座戦争と現代 大月書店, 2003
- 210.02 講座日本の考古学 青木書店, 2010-
- 210.08 岩波講座日本歴史 岩波書店, 2013-
- 210.08 日本村落史講座 雄山閣出版, 1990
- 210.1 日本歴史大系 山川出版社, 1984-1990
- 210.1 岩波講座日本通史 岩波書店, 1993
- 210.1 日本史講座 東京大学出版会, 2004
- 210.4 講座日本荘園史 吉川弘文館, 1989
- 210.5 講座日本近世史 有斐閣, 1980-1985
- 210.6 岩波講座近代日本の文化史 岩波書店, 2001
- 210.6 「帝国」日本の学知: 岩波講座 岩波書店, 2006
- 210.6 シリーズ日本近現代史 : 構造と変動 岩波書店, 1993
- 210.61 講座明治維新 有志舎 2010-
- 210.75 岩波講座アジア・太平洋戦争 岩波書店, 2005-
- 212 講座東北の歴史 清文堂出版 2012-2014
- 220 講座東アジア近現代史 青木書店, 2001
- 220.07 シリーズ20世紀中国史 東京大学出版会, 2009
- 220.6 岩波講座東アジア近現代通史 岩波書店 2010-2011
- 222.04 アジア理解講座 山川出版社, 2002
- 223.08 岩波講座東南アジア史 岩波書店, 2001
- 290.1 地理学講座 古今書院, 1987
- 290.1 総観地理学講座 朝倉書店, 1984-1997
- 290.8 朝倉世界地理講座 : 大地と人間の物語 朝倉書店, 2006-
- 290.8 地球人の地理講座 大月書店, 1999-2000
- 290.8 講座生存基盤論 京都大学学術出版会 2012-
3 社会科学
- 302.22 岩波講座現代中国 岩波書店, 1989
- 302.23 講座東南アジア学 弘文堂, 1990-1992
- 302.28 講座イスラーム世界 栄光教育文化研究所, 1994
- 302.38 講座スラブの世界 弘文堂, 1994
- 309.02 講座東アジアの知識人 有志舎 2013-
- 308 岩波講座社会科学の方法 岩波書店, 1993-1994
- 308 岩波講座開発と文化 岩波書店, 1997
- 311 講座政治学 三嶺書房, 1986-2002
- 311 現代政治学叢書 東京大学出版会, 1988-2012
- 311.08 岩波講座政治哲学 岩波書店, 2014
- 312.1 シリーズ[日本の政治] 岩波書店, 1989
- 312.1 シリーズ日本の政治 法律文化社, 2006
- 313.61 岩波講座天皇と王権を考える 岩波書店, 2002
- 316.8 講座世界の先住民族 : ファースト・ピープルズの現在 明石書店, 2005
- 317.1 講座行政学 有斐閣, 1994
- 317.7 講座日本の警察 立花書房, 1992-1993
- 317.81 岩波講座近代日本と植民地 岩波書店, 1992
- 318.08 岩波講座自治体の構想 岩波書店, 2002
- 318.1 最新地方自治法講座 ぎょうせい, 2003
- 318.7 岩波講座都市の再生を考える 岩波書店, 2004
- 319 講座世紀間の世界政治 日本評論社, 1993
- 319.04 アジア地域統合講座 勁草書房, 2011-
- 319.08 国際政治講座 東京大学出版会, 2004
- 320.8 岩波講座現代の法 岩波書店, 1997-1998
- 321.08 岩波講座現代法の動態 岩波書店, 2014-2015
- 323.01 岩波講座憲法 岩波書店, 2007
- 323.01 講座人権論の再定位 法律文化社 2010-2011
- 324.6 講座現代家族法 日本評論社, 1991
- 327.36 講座倒産の法システム 日本評論社, 2006
- 330.8 シリーズ現代の経済 岩波書店, 1992-2001
- 331 シリーズ・現代経済の課題 岩波書店, 2003
- 333.09 経済法講座 三省堂, 2002
- 333.2 現代経済法講座 三省堂, 1990-1993
- 334.41 講座グローバル化する日本と移民問題 明石書店, 2002
- 334.41 講座外国人定住問題 明石書店, 1995
- 343.2 財政法講座 勁草書房, 2005
- 335.21 講座・日本経営史 ミネルヴァ書房 2009-2011
- 336.08 サプライチェーンマネジメント講座 朝倉書店 2011
- 361 岩波講座現代社会学 岩波書店, 1995
- 361.08 講座社会学 東京大学出版会, 1998
- 361.45 岩波講座コミュニケーションの認知科学 岩波書店 2014
- 361.5 講座・社会変動 ミネルヴァ書房, 2001
- 361.7 講座現代の地域研究 弘文堂, 1993
- 361.7 講座環境社会学 有斐閣, 2001
- 361.78 コレクション・モダン都市文化 ゆまに書房, 2004-
- 364 社会保障研究シリーズ 東京大学出版会, 2000-2003
- 364 社会保障研究シリーズ 国立社会保障・人口問題研究所, 2002-2005
- 364.04 講座・福祉社会 ミネルヴァ書房, 2004
- 364.08 講座・福祉国家のゆくえ ミネルヴァ書房, 2002
- 365.3 講座現代居住 東京大学出版会, 1996
- 366.14 講座21世紀の労働法 有斐閣, 2000
- 367.3 シリーズ変貌する家族 岩波書店, 1991
- 369.08 講座戦後社会福祉の総括と二一世紀への展望 ドメス出版, 1999
- 369.26 講座高齢社会の技術 日本評論社, 1995
- 369.27 講座障害をもつ人の人権 有斐閣, 2000-2002
- 369.3 防災学講座 山海堂, 2003
- 370.8 岩波講座現代の教育: 危機と改革 岩波書店, 1998
- 370.8 講座学校 柏書房, 1995
- 370.8 講座現代学校教育の高度化 学文社, 2010-
- 371.45 子ども学講座 一藝社 2009-2010
- 375 シリーズ教育の挑戦 岩波書店, 1999-2001
- 375.8 朝倉国語教育講座 朝倉書店, 2004
- 376.1 新・保育講座 ミネルヴァ書房, 2001-2008
- 376.1 講座幼児の生活と教育 岩波書店, 1994
- 380.8 講座日本の民俗学 雄山閣出版, 1996
- 383.8 講座食の文化 味の素食の文化センター, 1998
- 388.04 語りの講座 三弥井書店 2009-
- 389 岩波講座文化人類学 岩波書店, 1996
- 389.08 講座・生態人類学 京都大学学術出版会, 2001
4 自然科学
- 408 岩波講座科学/技術と人間 岩波書店, 1999
- 408 岩波ジュニア科学講座 岩波書店, 1994
- 410.8 講座数学の考え方 朝倉書店, 2001-
- 410.8 新数学講座 朝倉書店, 1983-2002
- 410.8 岩波講座基礎数学 岩波書店, 1976-
- 410.8 岩波講座現代数学の基礎 岩波書店, 1996
- 410.8 岩波講座現代数学の展開 岩波書店, 1998
- 411 共立講座21世紀の数学 共立出版, 1997
- 413.6 工系数学講座 共立出版, 1998-2002
- 417 応用数学基礎講座 朝倉書店, 2001
- 417 情報数学講座 共立出版, 1993
- 417.08 講座情報をよむ統計学 朝倉書店, 2002
- 420.8 岩波講座物理の世界 岩波書店, 2001-
- 420.8 岩波講座現代の物理学 岩波書店, 1992
- 420.8 岩波基礎物理シリーズ 岩波書店, 1994
- 430.8 岩波講座現代化学への入門 岩波書店, 2000
- 431 現代化学講座 朝倉書店, 1989-1991
- 432.08 実験化学講座 丸善, 2003-2007
- 440 シリーズ現代の天文学 日本評論社, 2007
- 450.7 新版地学教育講座 東海大学出版会, 1994
- 450.8 岩波講座地球惑星科学 岩波書店, 1996
- 450.8 自然地理学講座 大明堂, 1978-1990
- 460.8 岩波講座分子生物科学 岩波書店, 1989
- 460.8 図解生物科学講座 朝倉書店, 1994
- 464 新生化学実験講座 東京化学同人, 1989
- 464.25 試料分析講座 丸善出版 2011-
- 467 講座進化 東京大学出版会, 1991
- 467.5 シリーズ進化学 岩波書店, 2004
- 468.04 エコロジー講座 文一総合出版,2008-
- 469.04 シリーズヒトの科学 岩波書店, 2007
- 471.3 朝倉植物生理学講座 朝倉書店, 2001
- 490.4 シリーズ転換期の医学 岩波書店, 2004
- 490.8 講座21世紀へ向けての医学と医療 日本評論社, 1987-1990
- 490.8 岩波講座現代医学の基礎 岩波書店, 1998
- 490.8 講座人間と医療を考える 弘文堂, 1991
- 491 臨床検査学講座 医歯薬出版, 2000-
- 493.7 臨床精神医学講座 中山書店, 1997-2001
- 498.13 講座医療経済・政策学 勁草書房, 2005-2007
5 工学
- 501.24 音響工学講座 コロナ社, 1977-2001
- 501.32 機械工学入門講座 森北出版, 1994-2007
- 508 岩波講座現代工学の基礎 岩波書店, 2000
- 518.8 都市工学講座 鹿島出版会, 2003-2004
- 519 岩波講座地球環境学 岩波書店, 1998-1999
- 519.08 岩波講座環境経済・政策学 岩波書店, 2002
- 520.91 初学者の建築講座 市ケ谷出版社, 2003-
- 520.8 シリーズ都市・建築・歴史 東京大学出版会, 2005
- 531.18 機械工学基礎講座 理工学社, 1977-2002
- 547.483岩波講座インターネット 岩波書店, 2001
- 548.3 岩波講座ロボット学 岩波書店, 2004
- 563.08 講座・現代の金属学 日本金属学会, 1976-1996
- 589.2 文化ファッション大系 文化服装学院学院教科書部, 1998
- 596 調理科学講座 朝倉書店, 1993
6 産業
- 611.4 講座今日の食料・農業市場 筑波書房, 2000
- 612.1 講座日本の社会と農業 日本経済評論社,1985-1986
- 674 企業広報講座 日本経済新聞社, 1993
- 675 マーケティング講座 有斐閣 1966-1967
7 芸術
- 701.1 講座美学 東京大学出版会,1984-1985
- 702.1 講座日本美術史 東京大学出版会, 2005
- 772.1 講座日本の演劇 勉誠社, 1992-1998
- 773 岩波講座能・狂言 岩波書店, 1987
- 774.08 岩波講座歌舞伎・文楽 岩波書店, 1997
- 780.08 現代スポーツコーチ実践講座 ぎょうせい,1981-1987
8 言語
- 801 講座認知言語学のフロンティア 研究社, 2007-2009
- 801.03 講座社会言語科学 ひつじ書房, 2005
- 801.2 ひつじ意味論講座 ひつじ書房 2010-2015
- 808 岩波講座言語の科学 岩波書店, 1997
- 808 シリーズ言語科学 東京大学出版会, 2002
- 808 シリーズ言語態 東京大学出版会, 2001
- 810.2 シリーズ日本語史 岩波書店, 2008
- 810.7 講座ITと日本語研究 明治書院 2011-2012
- 810.8 朝倉日本語講座 朝倉書店, 2002
- 810.8 日本語学講座 清文堂出版 2010-2015
- 810.8 講座日本語コーパス 朝倉書店 2013-
- 811.2 朝倉漢字講座 朝倉書店, 2003
- 818.08 シリーズ方言学 岩波書店, 2006
- 830 スタンダード英語講座 大修館書店, 1983-1985
- 840 講座ドイツ言語学 ひつじ書房 2013-
- 850 スタンダードフランス語講座 大修館書店, 1971-1972
9 文学
| Home |