第26回「情景目に浮かぶ醍醐味を」外交文書公開、担当者は語る
毎年この時期に公開される外務省の外交文書。作成から30年以降の記録という「30年ルール」で、いよいよ今年は対象が平成(1989年1月~)や冷戦後(89年12月~)に入った。外務省はどんな姿勢で臨んでいるのか。責任者の外務政務官で、元経産官僚の鈴木隼人氏(43)に聞いた。
――外務省の外交文書公開では、責任者に官僚ではなく政治家の政務官が就き、外部有識者も入れて対象を審査するようになって10年になります。
そうですね。戦後外交記録の公開は1976年からで、2010年に「30年ルール」を含め外務省の規則を明文化しました。それでお話のような態勢ができましたが、30年よりさらに前で残っている記録もあり、順次公開してきました。
――ただ、今回の2020年末の公開対象は珍しく約30年前のものばかりで、当時の天安門事件や大喪の礼・即位の礼などに関する文書をとじたファイルがずらっと並びました。
国民の関心が高いものは公開する姿勢でこの10年やってきて在庫一掃になり、今年は30年経ったばかりの文書でそろいました。ただ、より古くても非公開のままの文書もまだあり、不断に見直していきます。
――今回の公開文書には、1989年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)創設に向け、外務省と経産省が激しい主導権争いをした「内幕もの」もあります。鈴木さんは通産省の後身の経産省出身ですが、読後感はどうですか。
ああ、わかるわかると(笑)。いい社会を作るために自分たちがリードしなければという(城山三郎氏の小説)「官僚たちの夏」みたいな世界は、自分が経産省にいた最近もあって、それが30年前から変わってないんだなと思いました。
それぞれがベストと思う案をぶつけ合って何かが選択される。この積み重ねですよね。公文書というと無味乾燥なイメージですが、(APEC関連は)描写が生き生きして情景が目に浮かぶようでした。醍醐(だいご)味をぜひ国民の皆さんにも味わっていただきたい。
――ただ、今回も北方領土問…