高齢者施設従事者の集中検査、なぜ進まない
新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が多発している高齢者施設を対象に、国はワクチン接種と並行して、PCRなどの集中検査の実施を全国の自治体に呼びかけているが、思うように進んでいない。人手不足に悩む高齢者施設は、仮に職員から陽性者が出れば仕事が回らなくなると心配して、検査に及び腰になっているという。
厚生労働省のまとめでは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの高齢者施設で発生したクラスターは今年6月21日までに1711件。飲食店や医療機関を上回って最も多い。5月上旬には、大阪府門真市の有料老人ホームや神戸市の介護老人保健施設で計38人の入所者が亡くなっていたことも明らかになった。
施設の従事者を検査する集中検査は、無症状の人を早く見つけ出し、クラスターを防ぐ策だ。厚労省は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置がとられている地域の高齢者施設については2週間に1度、できれば週1回、集中検査を実施するよう指針を示しているが、実際の頻度は検査を担う自治体によって異なる。
今年2~3月、厚労省は緊急事態宣言を出していた10都府県を対象に集中検査を実施する方針を打ち出したが、自治体の検査を受けた施設は対象の半分程度、約1万5千施設にとどまった。そこで厚労省は3月下旬、検査を受けない施設が相当程度あったとして、4~6月に積極的に検査を受けるように要請を出した。
集中検査の対象は7万6656施設(障害者施設なども含む)に広げた。6月2日現在で検査の申し込みがあったのは4万7400施設と、全体の62%にとどまる。
自治体の多くは民間の検査会社との契約などに時間がかかり、感染が拡大した4月に検査が始められなかったとされる。
さらに、施設側の事情も加わる。厚労省によると、施設側からは「人手不足の不安から、検査を受けない」といった声が寄せられているという。
実際、職員数の多い特別養護老人ホームや介護老人保健施設の多くが検査を受けている一方で、小規模なグループホームや有料老人ホームは検査で陽性者が出ることを懸念する傾向があるという。
「症状がなくても陽性がでるかもしれないので、検査をうけるときはドキドキする。陽性者が出たら施設の運営ができるのか不安。ストレスに思う職員もいる。いつまで続くのか」。都内にあるグループホームの施設長はこう話す。要請に従って検査は受けているが、負担感は増している。
この施設では昨年、クラスタ…