半身まひになった元アイドル アミちゃんの第2ステージ

有料記事

鈴木彩子
[PR]

 死にたい、と思った。

 飛び降りる場所を探しに行こうと、ふらりと家を出た。

 痛みも何も感じない左半身をひきずるようにして、タクシーを見つけるために、大通りまで歩こうとした。でも、ほんの50メートルほど進んだところで身動きがとれなくなった。うずくまっていると、母親が見つけてくれた。

 「もう、生きている意味がよくわからないし。死にたい。でも一人で死ぬこともできないから、手伝ってよ」と、母親に頼んだ。

 母親は、泣いていた。

ビアガーデンの専属アイドルに

 5年前の5月、名古屋市の山田阿実(あみ)さん(27)は、ビアガーデン「マイアミ」の専属アイドル「マイちゃんアミちゃん」の一員として、ステージで踊っていた。

 高校を卒業して芸能事務所に所属し、芝居の稽古を積みながら俳優を目指していた。初めはそれほど思い入れはなかったが、お芝居の魅力にだんだんのめり込んだ。同じ台本でも、演出次第でがらりと雰囲気が変わる、そのギャップがおもしろかった。

 役をもらって舞台に立ち、ほんの少しだけ、出演料をもらえるようになってきていた。アイドルとして「アミちゃん」の仕事も始め、お客さんたちとの交流も楽しめるようになっていた。

 「あと1小節で最後の曲が終わる」というときだった。キーンという耳鳴りのあと「ブチッ」という音がして、左半身に力が入らなくなった。

 「あと少しだから、やりきらないと」。頭ではそう思うのに、ふんばりがきかず、体がふらつく。異変に気づいたお客さんが「(音楽を)止めてあげて!」と言ってくれた。

 ステージを降りると体が崩れ落ちた。「救急車呼ぶよ、いい?」という誰かの声が聞こえた。救急隊が来て、意識を失った。

 気付いた時は、病院のベッドにいた。

 駆け出しのアイドルだった山田阿実さんを突然、病魔が襲います。病院で手術を受けたものの、左半身まひが残り、医師の診断は「動く見込みなし」。一人で死ぬこともできない、と追いつめられた彼女を救ったのは、ある女性との出会いでした。

 頭には包帯がまかれ、何か大…

この記事は有料記事です。残り3185文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
鈴木彩子
くらし報道部
専門・関心分野
医療・健康、脳とこころ、アレルギー