イカゲームが風刺する韓国社会 「愚かな競争」に突き進む人間のさが

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聞き手・笠原真
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 9月に配信が始まってから、90カ国以上で視聴ランキング1位になるなど世界中でヒットしているネットフリックスのドラマ「イカゲーム」。韓国で制作された作品が描き出すのは、強い者が生き残り、弱い者は徹底的に排除されていく格差と競争の世界です。現実の社会を描写していることもヒットの理由のようですが、韓国とは実際、それほど過酷な競争社会、格差社会なのでしょうか。韓国のエンタメと社会問題に詳しい、帝塚山学院大学の古田富建教授に聞きました。

「スペック積む競争」強いられる人々

 ――イカゲームが世界中でヒットしていますね。どうご覧になりましたか。

 特徴的なのは、韓国の新自由主義的な考え方を痛烈に批判していることです。主人公の男性は借金まみれで、いわゆるダメ人間。一緒にゲームに参加するのは労働者として韓国に来た外国人や、脱北者の女性、力が弱く病気を持った高齢男性など、どれも社会的弱者です。実際の競争社会を映し出すように、ゲームが進むにつれて力の強い者が生き残りますが、弱い者は徹底的になじられ、ゲームから脱落して命を奪われていきます。

社会的弱者である登場人物たちが、次々と命を奪われていく「イカゲーム」。この作品の中には、韓国の競争社会を風刺する上で古田教授が「リアリティーがある」と言う描写があります。それは何でしょうか。記事後段で説明しています。

 ――まさに韓国の競争社会を描いていると言われますが、現実の韓国ではどのような競争が人々を待ち受けるのですか。

 よく言われるのが、大企業への就職をめぐる競争ですね。韓国経済はサムスンやLGといった大企業グループが中心で、こうした企業で働く人はエリートと見なされる一方、それ以外の人には厳しい社会であることは事実です。日本以上に、韓国では大企業で働いて高い給料をもらうことが一つのステータスになっていますが、就職するには良い大学に入る必要があり、そのために人々は小さい頃から「スペック(性能)を積む競争」を強いられます。

 ――「スペック」ですか。

 社員を採用する際、韓国企業…

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この記事を書いた人
笠原真
ヤンゴン支局長兼アジア総局
専門・関心分野
紛争、難民、格差