第1回3年おきの離婚と再婚 渋谷でのケンカから10年、別姓かなわぬ国で

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田渕紫織
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 東京都八王子市のある夫婦は、3年おきに離婚届と婚姻届を出すと決めている。

 同じ相手と同じことを繰り返す。手間がかかりそうなのに、なぜ?

 尋ねると、お互いの名前をめぐる切実な困りごとと話し合いの歴史があった。

 夫は公務員(32)、妻は会社員(32)。2人は、付き合い始めた頃の大げんかを鮮明に覚えている。

 渋谷駅近くの喫茶店。

 女性が「結婚したら名字はどうする? 私は名字、変えたくないんだよね」と口火を切った。驚いた男性は「自分んち(実家)もそうだったし、普通は夫の名字でしょ」と応じた。

 「なんで私があなたに合わせるって決まってるの?」

 「だって普通は……」

 当時は大学生だったが、ゆくゆくは結婚するつもりで付き合っていた。東急東横線の改札に着いてからも言い合いは続き、そのまま駅で別れた。

 男性はぼうぜんとしながら、女性は泣きながら帰った。

 男性は、茨城県の地方都市で、会社員の父と専業主婦の母のもとで育った。女性が結婚して名字を変えないという例を聞いたことがなかった。「そんな発想、あるんだ」と、固まってしまった。

 一方、女性は、横浜市の共働きの両親のもとで育った。小学生の時から、結婚して名字を変えるのは嫌だった。ある同級生が、好きな人の名字に自分の名前を書いて「ドキドキしちゃう」と話していた。「かわいいけど、自分はわからないな」と思っていた。

 ケンカの翌日。気まずくなるのが嫌で、お互い、つい名字の話題を避けてしまった。たまに話題にのぼっても、平行線だった。

 卒業し、就職して1年目。そろそろ結婚という雰囲気になった。女性は、結婚後も自分のままの名前でいたいという気持ちを再び打ち明けた。それに対する彼の答えに、女性はとても驚いた。

「普通は夫の名字でしょ」 。そう言っていた男性が変わっていったのはなぜ? 夫婦の10年をたどりました。

 「お互い、自分の名字は変え…

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この記事を書いた人
田渕紫織
東京社会部|災害担当
専門・関心分野
災害復興、子ども

連載ペーパー離婚しました 自分の名前で生きたい(全2回)

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