「しゃべりのプロ」DJ秀島史香が教える 誰とでも打ち解ける方法

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聞き手・岩本美帆 写真・小山幸佑
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 ラジオDJの秀島史香さん(46)は大学時代にデビューして以来、ラジオの世界で第一線を走り続けています。放送文化の向上に寄与した人や番組を表彰する「ギャラクシー賞」を始め、様々な賞を受賞しているほか、希代の歌姫・安室奈美恵さんのインタビュアーに指名されたことも。そんな秀島さんが、自身のノウハウを詰め込んだ2冊目の本「なぜか聴きたくなる人の話し方」を出版しました。「聴くこと・話すこと」のプロフェッショナルに、仕事の流儀を聴きました。

「嫌気性発酵」のコーヒーでほっとひと息

 日曜朝の番組で5年ほど、コーヒーを紹介するコーナーをやっています。鎌倉の人気カフェ「ヴィヴモン・ディモンシュ」のマスターが毎回、お薦めのコーヒーをその場で豆からひいて淹(い)れてくれる。番組で様々な種類を味わって、高校生の頃から眠気覚ましに飲んでいたコーヒーを、より楽しめるようになりました。

 私の好みは酸味が強くない、甘めのもの。お気に入りはコスタリカの「アナエロビックコーヒー」です。嫌気性発酵という、コーヒーの実を密閉して発酵させる製法で作ったもので、フワッとしたふくよかな香り、奥行きのある味わいが素晴らしい。コーヒーは農作物なので、木が病気になったり、気候変動で不作になったりもする。それぞれの土地の事情や環境に思いを巡らすことも大事だと思っています。

 大学在学中からこの仕事をしていますが、今でも本番は緊張します。どうしたら自分をほぐせるかと、試行錯誤した末にたどりついたのがコーヒーなんです。ピリピリとした空気の中、自分の体に温かい飲み物を取り込むとホッとする。親しい人に後ろから手を肩に置いてもらって、「まあまあまあ」と言ってもらっているみたいな、そんな感じ。

 日曜朝の生放送は約3時間。収録番組は数本まとめて録音するので、一日中スタジオにいます。ずっと張り詰めたままだと負荷がかかりすぎ、途中で集中力がポキッと折れてしまう。曲をかけている間にマイボトルで持参したコーヒーを飲んで、心をゆるめています。長時間放送するラジオは、リスナーと心の距離が近いメディアだと思います。コロナ禍で在宅時間が増え、ラジオを聴くようになったという声もよく聞きます。ままならないことが多い日々ですが、ラジオのいつもの声を聴いて、コーヒーを飲むようにホッとしてくれたらうれしいです。

 今回出した本は「いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則」に続く2冊目です。なぜ今また出したか。コロナ禍で人と会うのが難しくなって、私も在宅時間が長くなり、いちリスナーとしての気持ちを思いだしたことが大きいですね。アメリカに引っ越した12歳のときに初めてラジオを聴いて、誰かの声に励まされ、勇気をもらった。その気持ちがよみがえった。人の声ってなんだろう。ずっと聴き続けていたいと思うような声の秘密はなんだろうと、あらためて分析したくなり、まっさらな気持ちでラジオを聴き始めたんです。

 ゲストの皆さんのお話の仕方はあまりにもさりげなく、こちらも何げなく聞いているけれど、「もしかして、こういうことを意識して話しているんじゃないか」と思う部分があるんです。それを自分でも試してみて、これはこういうことかな、これは違ったな、など、まねしてやってみました。そのトライアンドエラーが誰かの役に立てばいいな、こういう風に考えてみたらいいんじゃない?と。一行でも読んで役立ててもらえたらと書いてみたんです。

本では壇蜜さんやジェーン・スーさん、福山雅治さんなど、具体的に著名人の話し方を紹介して、学ぶべき点を分析。2017年に引退を表明した歌手、安室奈美恵さんから聞き手として指名を受けたときのエピソードも明かしています。

■「間」を焦るな…

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