約半数が年収200万円未満 非正規シングルの苦境は自己責任なのか

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聞き手・伊藤恵里奈
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 非正規雇用で働く女性は、全国で1432万人。45~54歳の層が373万人と最も多い。非正規雇用の女性は、既婚や独身、パートや派遣など多様で、特に低収入に苦しむ独身の中高年女性の問題は見えにくいとされてきた。どのような課題があるのか、大阪経済大学の森詩恵教授(社会政策)に聞いた。

 ――非正規雇用で働く30~50代の女性を対象に、森さんが大阪市男女共同参画センターと実施した調査では、特にシングルの女性について、どのような傾向が見えましたか。

 約半数が個人の年収200万円未満でした。しかし約8割の人が自身の収入で生計を立て、約半数が「自身が家賃を全額負担した賃貸住宅」に住んでいます。

 ――厳しい状況ですね。同じく非正規で働く既婚女性の状況はどうでしょうか。

 既婚の場合、主な生計は「配偶者の勤労収入」の人が8割強で、世帯年収500万円以上の人が半数以上いました。

非正規雇用を選ぶわけ

 ――同じ非正規でも経済状況がまったく異なりますね。非正規シングル女性は「正規職に就きたい」というイメージがありましたが、調査では6割以上が「自ら望んで非正規を選択した」と答えました。

 その理由をみると、「正社員としての募集がみつからなかった」(14.8%)、「自分に都合の良い時間(日)に働きたいから」(13.2%)、「正社員として採用されなかった」(11.3%)でした。

 「正社員のような責任や人事異動を課されて働くことが困難・負担」(6.1%)、「組織に縛られたくない」(同)を選んだ人も。厳しい労働環境より、非正規の方が「都合が良い」と肯定的に考える傾向も見えました。

 ――私が取材した非正規シングル女性は、「正社員になって過酷な働き方を強いられたくない」と話していました。当事者の多くから「正社員になることをあきらめている」という声も聞きます。

 「自分で今の状況を選んだと思わないと、やっていられない」と考える女性も多いのでは。年齢の壁などで非正規しか選べない不本意な状況を見ないようにしているのかなと感じました。

 「正社員は時間が自由にならない」や「辞めたいときに辞められない」というイメージがとても強い。ただ、労働環境の悪い職場では非正規雇用でも同じような状況があります。体調の不安や正社員で働く自信のなさから「非正規の方が気楽だ」と思っている人もいるでしょう。

 しかし、労働条件やワーク・ライフ・バランスの観点からみると、実は正規の方が安定した働き方ができると思います。たとえば正規ならできる休職でも、非正規だと非常に難しい。

家族の都合が「自分の都合」に?

 非正規雇用で働き続けることで、どのような課題が出てくるのでしょうか。解決のために考えるべきことについても聞きました。

 ――低収入で不安定な雇用では、将来の十分な備えができないまま老後を迎えることになります。

 既婚女性がパートタイムを選…

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この記事を書いた人
伊藤恵里奈
盛岡総局
専門・関心分野
ジェンダー史、自然環境、映画、異文化