「おばけ」に乗っ取られた 摂食障害に苦しむ娘を両親は抱きしめた
「誰の脚が一番細いか、友だちといま競争してるんだ」
2018年春、小学6年生になったばかりの娘(16)が何げなく言った。娘の身長は133センチで、学年でも前の方だった。
女性は「背が伸びなくなるよ」と娘に伝えたが、子どもたちの遊びだろう、と深く気にとめなかった。
しばらく娘に変わった様子はなかった。夫と家族3人で朝食を食べている時、食べる量は減っていなかった。夕食でも気になることはなかった。
7月、定期的に受診している東京都内の大学病院で医師から言われた。
「神経性やせ症(拒食症)の可能性があります」
神経性やせ症は、摂食障害の一つ。やせたいという願望から食事量を過度に制限したり、大量に食べた後に下剤や嘔吐(おうと)で体重が増えないようにしたりする。低体重や低栄養、低血圧などになり、命に関わることもある。
聞いたこともない病名で、女性には「青天のへきれき」だった。
気づかなかったが、確かに、春に27キロあった娘の体重は、このとき24キロに減っていた。家ではきちんと食事をとれていた。学校の給食で食べる量を減らしていたのかもしれない。
食事がしっかりできるよう、家族3人で本などを読んだ。娘は、図書館で10冊ほどレシピ本を借りてきて、「これが食べたい」と女性にレシピのコピーを渡した。
鶏のささみやヨーグルトスムージー……。どれも1食300キロカロリー以下のものばかりだったが、娘なりに食べられるものを選び、努力していると感じた。女性もそれに応えようと、渡されたレシピ通りに料理をつくった。
修学旅行、戻った娘は…
だが9月末、3泊4日の修学旅行から帰ってきた娘の姿は大きく変わっていた。
顔は青白く、体重は旅行前か…