不適切会計が上半期で36件、過去最多ペース 投資家保護の仕組みを

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記者解説 経済部・松浦新

 企業の会計や経理をめぐり不適切な事例が相次いでいる。調査会社の東京商工リサーチが全上場企業の決算に影響がありそうなものをまとめたところ、今年上半期(1~6月)に開示された不適切な会計・経理は35社、36件あった。過去最多だった2019年の上半期を上回るペースだ。コロナ禍もあって21年は減ったが22年から増加傾向で、決算の信頼性が問われている。

 キャラクターグッズ販売のサンリオは、ライセンス料の売り上げ計上時期が操作された疑いがあると2月に公表した。外部の弁護士や公認会計士による調査委員会は、15年度から22年12月末までの売り上げが数百万円から数千万円の間で操作され、売上高と営業利益が累計で約1億円過少に計上されていたことを認定した。担当者が代わっても不適切な操作は引き継がれており、報告書は「ライセンス営業本部の風土としてコンプライアンス意識に欠けるところがあった」などとした。

 関係者からの指摘を受け日糧製パン(札幌市)は、一部の工場で在庫を過大に計上していたと5月に公表した。特定の部門長が原材料のロスを小さく見せようと指示していた。社内関係者とみられる人から電子メールで通報があったという。

 新型コロナウイルス対策の政府の事業を悪用する事例もあった。KNT―CTホールディングス傘下の近畿日本ツーリスト(東京)は、ワクチン接種などの委託料を自治体に過大請求していた。コールセンターの人員が実際より多かったように装い経費を水増しするなどの手口で、過大請求額は最大約16億円に上るという。近畿日本ツーリストの関西法人の支店長ら3人が、詐欺容疑で大阪府警に逮捕された。

ポイント

 上場企業の利益水増しといった不適切会計の件数が、過去最悪のペースになっている。背景にはコロナ禍からの景気回復や、監査法人のチェックが強まっていることがある。投資家保護のためITを活用した監視体制や、再発防止を徹底させる仕組みが必要だ。

 クリーニングチェーンのきょ…

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