やせた牛ばかり飼育…でも価格は高級和牛並み 牛の幸せを考える牧場

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鈴木優香
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 昇ったばかりの朝日が、稜線(りょうせん)をほんのりとピンク色に染める。

 「おはよう、マッキン。はよこんね」

 標高650メートルの山あいで山地竜馬さん(44)がそう声をかけると、広大な牧場の山や草むらの中から、「ンモ~~」と牛たちが集まってくる。

 コンテナいっぱいに詰められたおからやビールの搾りかすを出すと、勢いよくはんでいく。

 ただ、牛たちはみんなやせっぽっちだ。背骨や腰骨が浮き出ている。

 マッキンというニックネームで呼ばれていた牛も、あばらやおしりが骨張っている。

 国内の市場は、霜降りの量と1頭からとれる肉の量でランクが決まる。A5ランクが最上級とされるが、この牧場にいるのは、C1という最も低い評価の牛ばかりだという。

 山地さんはこの大分県別府市の牧場を含め、4カ所で東京ドーム計11個分の牧場を抱え、母牛約20頭、子牛約50頭の計約70頭の肉牛を育てている。

 いずれも、ミルクが出ない雄牛や、子が産めなくなった母牛など、「価値がない」とされがちな牛たちだ。

 そんな牛たちがここでは、自由に、のびのびと過ごす。

 黒い毛の和牛や、茶色い毛のジャージー牛、白っぽい毛のブラウンスイスもいるが、牛舎はなく、それぞれが牧場の好きなところで草を食べ、寝そべっている。

 やせっぽっちで、ランクも低い。それなのに通販サイトでは、ヒレサイコロステーキ200グラムを税込み5千円で販売している。高級な霜降り和牛とほとんど変わらない価格帯だ。

牛飼いを始めて知った「捨てられる命」

 牧場を経営する山地さんが考えているのは、「牛の幸せ」だという。

 いったい、どういうことなのか。

 山地さんが牛を飼い始めたの…

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この記事を書いた人
鈴木優香
北海道報道センター|事件・事故担当
専門・関心分野
農業、食、動物、移住、多文化共生など