がんを経て32歳で医学部へ キャンサーギフトは好きじゃない、でも

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松本千聖
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 松浦美郷さん(39)は今、北海道大学病院で働く研修医だ。24歳で悪性リンパ腫と診断され、治療を経て30代で医師の道に進もうと決めた。そこには、「AYA世代」(15~39歳)という若年のがん患者として感じた悩みや苦しみがあった。

 「なんだか、最近疲れやすい」

 松浦さんが体の異変に気づいたのは、24歳の時。東京都内の美術大学で空間デザインを学ぶ学生だった。講義に部活に友達付き合いに忙しく、「飲み過ぎ、遊び過ぎかな」くらいに思っていた。

 ただ、疲労感のほか、ひどい肩こりや止まらない寝汗にも悩まされた。「念のため」と大学病院で受けた血液検査で、異常が見つかった。

 精密検査の結果、悪性リンパ腫と告知された。すぐに治療が必要で、大学を休学することになった。

 抗がん剤治療が始まると、その苦しさもさることながら、襲ってきたのは孤独感だった。

 友達の近況報告を聞いては、「自分は何をしているんだろう」という気持ちになった。病棟は高齢の人が多く、悩みを話せる人はいなかった。

 1カ月後、実家のある香川県に戻り、地元の小児病院で抗がん剤治療を続けることになった。今度は子どもたちの中で、孤独感が募った。

 吐き気や味覚障害と闘いながら、メンタルもむしばまれていった。

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この記事を書いた人
松本千聖
くらし報道部
専門・関心分野
医療、子どもや女性の健康、子育て