性別変更に手術不要 医師「大きな前進」と評価も、なお残る課題は
性別を変更するために、「生殖能力を失わせる手術は不要」という判断を最高裁が示した。今回の判断について、GID(性同一性障害)学会理事長を務める中塚幹也・岡山大教授(産婦人科医)は「大きな前進。体を傷つけなくても性別変更できることが理想だ」と評価する。
閉経によって生殖機能が失われたと判断され、性別変更が認められたケースは報告されているものの、極めて例外的で、現状では性別変更には卵巣や精巣を切除する手術が前提とされてきた。卵巣や子宮、精巣を摘出するかどうかは、元には戻せない重い決断になる。学会もこれまで手術要件の撤廃を求めてきた。
最高裁の判断を受けて、今後は、手術を経ずに性別変更ができる道が広がる。
ただ、手術を望む人もいる。国内で適正な費用で、住んでいる地域に関わらず安全に手術を受けられる体制整備は引き続き課題だ。
日本で手術に公的医療保険が適用されたのは2018年。国内では長い間、安全に手術できる医療機関は増えず、費用が安く手術例の多いタイなど海外に渡って手術する人が多かった。12年には、東京都内のクリニックで乳房切除後に死亡する事例も明らかになった。
しかし、学会の認定医が少ないことや、難易度が高い手術でもあることなどから、現時点でも保険を使って手術ができる医療機関は全国で8カ所にとどまる。
また、ホルモン剤の投与には…