いじめの暴力より辛かった傍観 弁護士になって見つけた苦しさの正体
中村真理
いじめ、パワハラ、セクハラ、DV――。身近にはハラスメントがあふれている。傷ついた人への無理解は根深い。数々のハラスメント事件を積極的に担当してきた弁護士の岡村晴美さん(50)は小学校時代、クラス中からいじめられた経験がある。被害を防ごうと法整備は進む。だが岡村さんは「ハラスメントは単なる嫌がらせではない。共通する本質的な構造が理解されないと解決できない」。
「死にたいと思ったのは、暴力振るわれたからじゃない」
「今も耐えがたい落ち込みがある」。愛知県弁護士会に所属する岡村さんには忘れられない場面がある。
「ガシャーン」
大きな音にクラス中の視線が自分に向けられた。
名古屋市内の公立小学校。5年の2学期末の休み時間、岡村さんの席に同じクラスの男子児童が近寄ってきて、机を蹴り飛ばした。教科書や筆記用具などが飛び散った。
心臓が高鳴る。こわごわ視線を上げた。
普段とは変わらない教室の光景だった。岡村さんに声をかける人も気にかける人もいない。
「もう、死のう」。その瞬間…