第1回虐待、貧困、いじめ…重ねたオーバードーズ 生きづらさ描き伝える

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川野由起
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 「こんな思いをするぐらいなら 生まれてこなかったらよかったな~」

 モノトーンで描かれたイラストの中で、女性が涙をこぼしている。

 別のイラストの中の女性は、手のひらにたくさんの錠剤を載せ、思う。

 「苦しいとか悲しいとか そういう感情が全部無くなってしまえば もう少し生きやすくなるのにな」

 大学生の儚(はかない)さん(22、仮名)はイラストを描き、1日に何度かSNSに投稿している。中高生のころ、市販薬のオーバードーズ(OD)を経験した。

 幼いころ、母は父から暴力を振るわれていた。母は殴られるとき、紙とペンを儚さんに渡し、別室にいるように言った。苦しい、かなしい――。絵を描き、やり過ごした。絵の中では家族は仲良く暮らしていた。

 3歳のとき、両親が離婚し、その後は母子家庭で育った。母は幻聴などに悩まされ、儚さんを殴った。児童相談所に保護されたこともある。絵を描くのは得意で、何度も賞をとった。でも母に見せたら、破られた。

 経済的にも苦しかった。生活保護を受け、家に冷蔵庫はなかった。電気やガスもしょっちゅう止まった。学校ではいじめられた。

 小学生のころ、リストカット(リスカ)をするようになった。「心の痛さと体の痛さを平等にすれば、何とかなるのでは」。そう思った。

救急搬送4回 それよりつらかった日々

 中学生になると、母の体調は悪化した。母は泣き叫び、包丁を投げ、自殺を図ったこともあった。

 学校にも行きたくない、家にもいたくない。

 母が精神科から処方され、余っていた薬を儚さんは大量に飲んだ。最初は10錠ほど。錠剤を一粒ずつ出して、水で飲んだ。

 ドラッグストアなどで買える…

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この記事を書いた人
川野由起
くらし報道部
専門・関心分野
こどもの虐待、社会的養育、アディクション