米、ガザめぐりイスラエルに「怒り」 元外交官が懸念する二つの事態
イスラム組織ハマスの壊滅をめざすイスラエル軍が、パレスチナ自治区ガザ地区の全土に侵攻を拡大しています。民間人を含む1万8千人以上がガザで犠牲になり、国際社会で批判が高まるなか、米国はイスラエルを支持し続けています。バイデン米政権は、どのような対応をとるのでしょうか。ガザの今後は――。イスラエルの元外交官で、米イスラエル関係に詳しいアロン・ピンカス氏に聞きました。
――ハマスとの戦闘が始まった当初から、米国はイスラエルへの強い支持を示してきました。
米国はイスラエルの安全保障にとって最大の後ろ盾で、バイデン政権がこれまでイスラエルに行ってきた支援には、疑問はありません。
ですが、戦闘の初期段階から米国とイスラエルの溝は開き始め、溝はますます大きくなっています。どこかの時点で、イスラエルと米国の間で対立が露呈すると思います。
――どういうことでしょうか。
バイデン政権はイスラエルのネタニヤフ首相に対して非常に怒り、米国が軽視されていると感じています。
米政府は当初からイスラエルに、戦闘の目的はなにかと問うてきました。その後、イスラエルに戦闘の人道的休止を求め、人口密集地であるガザ地区の民間人の保護を強めるように求めました。
さらに、「ガザの今後」の問題があります。
米側はネタニヤフ氏に戦闘後の見通しを尋ねてきましたが、彼は答えていません。ブリンケン米国務長官は、(ヨルダン川西岸地区を統治する)パレスチナ自治政府が戦後のガザも統治するという案を提案しましたが、イスラエルは「パレスチナ自治政府によるガザ統治は許さない」と言うのみなのです。
イスラエル政府の外交顧問も務めたアロン・ピンカス氏は、今後「二つの事態」が起きることを懸念しているといいます。記事後半では米国とイスラエルの関係や、バイデン米大統領の思いも読み解いています。
戦争の長期化を狙うネタニヤフ氏
――米国が戦闘休止の延長を求めるなかでも、イスラエルは12月1日、ガザでの戦闘を再開しました。
今後、二つの事態が起きるこ…
イスラエル・パレスチナ問題
イスラム組織ハマスが2023年10月7日、イスラエルに大規模攻撃を行いました。イスラエルは報復としてハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区に攻撃を始めました。最新のニュースや解説をお届けします。[もっと見る]