第4回「仕事できないやん」上司の指示聞き取れず退職 32歳で受けた診断
枝松佑樹
大学から帰宅して携帯を見ると、友人からメールが来ていた。
「明日、みんなでユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)行く件やけど」
また聞こえていなかったのか。休み時間の会話は、そういう内容だったのか。
「行けるよ。集合は何時やったっけ?」
何事もなかったかのように返信した。
兵庫県の女性(32)は幼い頃から、音は聞こえているのに、言葉を聞き取れなかったり聞き間違えたりすることに悩んできた。
小学生のとき、唐突に席替えが始まり戸惑っていると、担任教師から「先生、今日席替えするって言ったよね」とたしなめられた。通信簿には「友だちの話を聞かずにしゃべる」とも書かれた。
特に複数の話し声が聞こえたり音楽が流れたりしている場所では、目の前の会話でさえ、ほとんど聞き取れなかった。
それでも「話を聞かないやつ」とは思われたくなかった。中学に入ると、いつもニコニコ「聞こえている風」を装った。
友人たちに会話の内容を理解していないことがばれると、「ぼーっとしていたのかな」と笑ってごまかした。
バイトの注文が聞き取れない
高校ではクラスの人数が40…