少年院で知った絶望、父の背中で語った夢 非行少年は医者になった
永田豊隆
夏の夜。18歳だった。
先輩たちに誘われ、住宅や工場が並ぶ一角へ。自動販売機に細工して小銭を盗みとった。
大音量のサイレン。
気がつくと、5台のパトカーに取り囲まれていた。一瞬で警察官に体を抑えつけられた。
38度の発熱でもうろうとして、逃げ遅れたらしい。
先輩たちは、すでに姿を消していた。
◇
水野宅郎さん(45)=大阪府河内長野市=は、いわゆる「非行少年」だった。
始まりは、中学時代のシンナー遊びから。
高校は数カ月で退学した。ビル清掃や運送業など職を転々としながら、先輩に勧められて覚醒剤を覚えた。
自販機荒らしでの現行犯逮捕の後、覚醒剤取締法違反(使用)容疑でも逮捕された。
少年院に送られた。
「またクスリをやりたい」。再起を期す気持ちもあったけど、それ以上に、衝動をもてあましていた。
そんな頃、少年院での講話が心に刺さった。
「君たちは絶望を知らない」
退官する法務教官の言葉だった。
非行少年から医師へ。記事の後半では、アルファベットも満足に書けなかった水野さん独自の勉強法、「断らない」医師として知られようになるまでを紹介しています。
戦争や災害で本当に絶望して…